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弦楽四重奏曲集(ベートーベン/モーツアルト/シューベルト/ドビュッシー他)
カペー弦楽四重奏団
CD:東芝EMI TOCE6169~74
カペー弦楽四重奏団は1893年に、フランス人のルイ=リュシアン・カペー(1873年1月-1928年12月)により結成された20世紀を代表する名カルテットである。このCDにはカペー四重奏団が残した録音である12曲がすべて収録されている。録音時期が1927-1928年のSPの復刻盤にもかかわらず、ノイズカットしたあと東芝EMIのスタジオで再編集したため、その多くが現在の鑑賞に十分に耐えるレベルの音質になっているのが嬉しい。
演奏を聴くとそのレベルの高さに驚かされる。と同時に聴き飽きないというか、時のたつのも忘れるほど、次ぎ次ぎに繰り広げられる演奏への期待感が高まっていく。何か演奏会場にいるような錯覚といおうか、なまなましさが他の四重奏団と根本的に違う。密度の濃い内容に加え、一本芯がぴちっと通り、しかもすべてが躍動感に溢れている。さらにすごいのが、ベートーベン、シューベルト、ドビュッシーと曲によって、弾き分けていることだ。バリリ弦楽四重奏団のベートーベンはイメージできるが、バリリ弦楽四重奏団のドビュッシーといわれるとなかなかイメージが沸いてこない。カペーはフランス人なのでドビュッシーやラベルはお手のものだ。一方、フランス人がドイツものを演奏すると名演になることが往々にして起きるが、カペー弦楽四重奏団も名演を聴かせており、“ラズモフスキー第1番”の出だしを聴いただけで、その魅力の虜になってしまう。
このカペー弦楽四重奏団のCDを聴いてからコンサートに行くには、少々勇気が必要となる。多分、質の高いコンサートでないと満足感が得られないであろうから。このCDは、人類が到達した芸術の頂点に立つ一つとして、今後も聴き続けられるに違いない。(蔵 志津久)