シネマ見どころ

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「ナイル殺人事件」(2020年、アメリカ)

2022年06月22日 | 映画の感想・批評


コロナ禍のあおりを受けて、2年も待たされ、もはやネット配信のみになるのかと心配していたが、無事に公開日を迎えられて、初日に勇んで出かけて行った。
コロナ禍でなくてもおそらく行くことはないだろうけれど、エジプト旅行を楽しめるかとの期待も大きく、その点は十分に満足。この記事を書くにあたってディスクの発売も間に合い、パソコンで視聴したが、まさに「映画は映画館で見るために制作されている」
ピラミッド、スフィンクス、そして圧巻はアブシンベル神殿、これらを大空からの俯瞰で観られるなんて!大スクリーンでこそ。たとえCGの活用であったにせよ。だって、世界遺産を破壊しかねないシーンは撮れんでしょ。ワニが水鳥を襲うシーンは恐ろしかったし、水中の画像もすばらしかった。あれはリアルな画像なのか?あら捜しをする気はないのだけれど。

2月26日の公開初日はロシアのウクライナ侵攻の始まった日。冒頭の第一次世界大戦の前線のシーンはモノクロで描かれ、その日のニュース報道と被り、いきなり胸が痛かった。けっして100年前の話でなく、現代に引き戻される思いがした。1か月後に公開された「ベルファスト」もモノクロ画像がいい仕事をしていた。

朝、アガサ・クリスティのファンである夫に、「オリエント急行殺人事件は結末を知ってたけど、ナイルはよう知らないのよ。ねえ、誰が犯人なん?」と尋ねたが、ニマッと笑って答えてくれない。字幕版だから、話についていけなかったら辛いしなあ、あらら、教えてくれんの?
うん、夫には感謝しとこ

謎解きメインで見るよりも、ヒューマンドラマとして十分に楽しめた。ポアロの過去、なぜ髭をトレードマークにしたのか。愛が人をどう突き動かすのか。これは様々な愛の物語でもある。
ラストのポアロの大きな変化を同行の友人はしっかり気づいていた。あらら、私、見逃してたやん(笑) 素知らぬ顔で会話に乗ったことが恥ずかしい。ここで白状しときます。

ケネス・ブラナーはシェイクスピア作品をたくさん舞台や映画で取り上げているだけに、誰もが知っているはずのストーリーであっても、ブラナーの手によって現代的解釈が盛り込まれ、「そう来たか!」と発見がある。
リメイクによって新たな解釈を吹き込んでいる。「シンデレラ」もしかり。古典を古典に留めていない。原作に忠実なことは重要だが、時代劇を当時のままに再現することだけが映像化の使命ではないのではないか。
ブラナーがアガサ・クリスティをどうシリーズ化するのか、それも楽しみである。もちろん、シェイクスピアで新作も撮ってほしいけれど。
1978年版の「ナイル殺人事件」にはオリビア・ハッセーが出ているというので、ぜひ観てみたい。
(アロママ)

原題:「DEATH ON THE NILE」
原作:アガサ・クリスティ
監督:ケネス・ブラナー
脚本:マイケル・グリーン
撮影:ハリス・ザンバーラウコス
出演:ケネス・ブラナー、ガル・ガドット、アーミー・ハマー、エマ・マッキー