辺野古新基地建設を阻止する闘いは、今、大きな山場に差し掛かっている。
知事は昨秋、国の辺野古・設計変更申請を不承認としたが、国は、「不承認取消し裁決」だけではなく、「承認せよ」という是正の指示を出してきた。国地方係争処理委員会が県の申し出を退けたため、県は、国のこれらの２つの処分の取消しを求める訴訟を福岡高裁那覇支部に提訴した（辺野古・大浦湾周辺の住民２０名も、８月２３日、国の「不承認取消し裁決」の取消しを求める抗告訴訟を提訴している）。
これらの争いでは、知事の設計変更申請不承認、国の不承認取消し裁決等に問題がなかったかどうかが、大きな争点となっている。そこでは、「最も重要なB27地点で何故、ボーリング調査をしなかったのか？」、「地盤の安定計算の係数に問題はないか？」、「ジュゴンに及ぼす影響、盛上り土部分の環境調査が十分だったか？」等が問題となっている。
そこで重要なのは、防衛局の設計変更申請書に対して、県が４回に渡って４５２件の質問をした内容と防衛局の回答文書である。これらは、知事の設計変更申請不承認、国の不承認取消し裁決等に問題がなかったかどうかを検証するための重要な文書である。
私は昨年から、所管の県土建部海岸防災課に対して、何回も、県の質問と防衛局の回答文書の公文書公開請求をしてきた。
昨年３月、６月は、「審査中」を理由に「全面不開示」とされてしまった。しかし、その際、「不開示理由がなくなる時期」として、「知事が設計変更申請書について処分を行った日」とされていたので、知事が設計変更を不承認とした翌日（昨年１１月２６日）、再度、同文書を公開請求した。
不開示理由は無くなったはずだが、海岸防災課は本年１月２４日、防衛局の回答文書を「全面不開示」としただけではなく、県の質問書についても、防衛局の回答文を少しでも引用した部分は黒塗りとしてしまった（たとえば下図参照）。不開示や黒塗りの理由は、「審査請求に関して防衛局の地位を不当に害するおそれがある」等というものだった。
ところがその後、７月になって県の担当者から、「状況が変わったので違う判断となるかもしれない」と、再度の申請を促す連絡があった。そこで７月１１日、再度、公文書公開請求をしたのだが、８月２４日、やはり前回と同じく、防衛局の回答文は全面不開示、県の質問書は、防衛局の回答の引用部分はやはり黒塗りとされてしまった。不開示や黒塗りの理由は、「現在行われている訴訟に関して防衛局の地位を不当に害するおそれがある」等とされていた。
県は、８月１２日に裁決取消し訴訟、８月２４日に是正指示取消訴訟を提訴している。これらの訴訟は高裁から始まるので比較的短期間だが、県はいずれ那覇地裁に抗告訴訟も提訴するだろう。抗告訴訟は決着までに数年はかかる。県の言い分では、全ての裁判が終わるまで県の質問書や防衛局の回答文書は開示されないことになってしまう。
一方、県はホームページで、審理や裁判の際に県が出した文書を全面公開している。当然、それらの文書には、防衛局の主張を引用した部分がある。しかし、これらの部分を黒塗りとはしていない。海岸防災課の今回の主張は全く矛盾している。
そもそも、軟弱地盤問題等について防衛局が県に提出した文書を公開することが、何故、「防衛局の地位を不当に害するおそれ」があるのだろうか？
２０１４年９月、防衛局は県に最初の辺野古・設計変更申請書を提出した。その際、県は数次にわたって防衛局に質問書を提出している。それらの文書の公文書公開請求を行ったところ、県の質問、防衛局の回答共に「部分開示」であった（４次質問への防衛局回答は「全面開示」されている）。今回の県の対応は、その時の対応からいっても大きく後退している。
今後の県の訴訟では、法廷の中での争いだけではなく、広範な県民・国民の支援が必要なことはいうまでもない。県は変更申請書の技術的な問題について、数人のアドバイザーを委嘱してコメントを求めているが、他にもまだまだ多くの専門家がいる。私が連絡が取れたゼネコンやコンサル技術者等もいる。防衛局の回答文を広く公開すれば、そうした専門家の意見を求めることもできるだろう。
本部塩川港のベルトコンベア設置許可問題も同様だが、「辺野古新基地建設阻止が県政の柱」といいながら、各担当部署ではそれと矛盾する業務が行われていることは残念である。
まずはデニー知事の再選を勝ち取ること。そして２期目は、知事の強い指導力を発揮してこうした各担当部署の姿勢を改めてほしいものだ。
（防衛局に対する県の質問書（2021.3.22 2次質問）。防衛局回答の引用部分を全て黒塗りとしたため、内容はまるで分からない）
トータル
