チョイさんの沖縄日記

辺野古や高江の問題等に関する日々の備忘録
 

辺野古新基地建設事業の地盤改良工事のために、沖縄での現在の年間採取量の3~5倍もの海砂が採取される。西日本各地は「海砂採取全面禁止」か「総量規制」を実施。沖縄でも海砂採取の「総量規制」が喫緊の課題

2024年03月06日 | 沖縄日記・辺野古

 今日、沖縄平和市民連絡会は、現在開会中の県議会に2件の陳情書を提出した。一つは、「最高裁の辺野古・代執行訴訟の上告不受理を受け、埋立承認の再撤回を求める陳情」、そしてもう一つは、「沖縄県内での海砂採取の規制強化を求める陳情」である。

 陳情書を提出した後、与党県議団の各会派をまわり、陳情の趣旨を説明した。

 ここでは、「海砂採取の規制強化を求める陳情」の全文を掲載する。「最高裁の辺野古・代執行訴訟の上告不受理を受け、埋立承認の再撤回を求める陳情」は明日、説明しよう。

 沖縄平和市民連絡会は、2019年~2020年にかけて、海砂採取の総量規制を求めて県との交渉や県議会への陳情等の取組を続けてきた。今回、辺野古新基地建設事業の設計変更申請を国が代執行で承認したことにより、地盤改良工事等のために大量の海砂が採取される事態となったため、再度、取組を強化したいと考えている。

 今回の県議会では、玉城武光議員(日本共産党)が、2月29日の一般質問でこの問題に触れている。同議員の質問に対して、前川土木建築部長は、「辺野古新基地建設事業では海砂の年間使用量は最大で125万㎥であり、現状の海砂利採取の量からすると、その量は確保できる」と答弁した。しかし、現在の県内での海砂採取量は年間81~146万㎥程度(2018年~2022年、「沖縄県土木建築部要覧」)であり、その上にさらに総量394万㎥、年間最大量125万㎥の海砂が採取されるのだ。土建部長の答弁は、通常の2倍以上の海砂採取を行っても問題がないとしたものであり、納得できない。

 他にも、土建部長は、「建築骨材としての供給も勘案する必要がある」等と繰り返すだけで、環境面や水産資源保護という観点からの言及がほとんどなかったのは残念である。今回の陳情は、19日、21日の土木環境委員会で審議されると思われるが、十分な審議を期待したい。

 

 

  (陳情書を提出する沖縄平和市民連絡会役員)

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沖縄県議会議長 赤嶺昇様                  2024年3月6日                                                    

       沖縄県内での海砂採取の規制強化を求める陳情書

                         沖縄平和市民連絡会

 

 現在、沖縄県が直面している深刻な環境問題の一つが、沿岸海域での海砂採取問題です。

 海砂採取は、海底の泥を根こそぎポンプで吸い上げ、砂だけをふるい分けた後に、礫・泥等を高濃度の濁水とともに海に戻すという荒っぽい方法で行われるため、自然環境や水産資源、さらに護岸等の海岸部の公共施設の管理にも深刻な影響を与えます。

 そのため、広島県、徳島県、香川県、熊本県、大分県、岡山県等、海砂採取を全面禁止する県が順次増えています。また、山口県、高知県、福岡県、佐賀県、長崎県、鹿児島県等では全面禁止ではありませんが、年間採取量の総量規制(採取量の上限)を設けています。

 こうした各地の海砂採取規制の現状と比較すれば、沖縄県は大きく遅れています。

 私たちは2019年から沖縄県に対して、海砂採取の規制を強化し、環境破壊を抑えるための要請を続けてきました。その結果、県も2020年7月から、採取中の船の位置情報や採取量測定時の写真を提出させる等、監視強化の改善策を講じるようになりました。

 しかし県は、海砂採取の総量規制については、「我々はこれまであまり採取量について考慮してこなかった。環境に対してどのような影響があるのか。九州各県でさえも総量規制をしていたという事実も明らかになっていますので、この辺も研究しながら、今後、砂の採取に対してどういう対応をするのか、関係部局とも連携を図りながら検討していきたい」(上原土建部長、 2019.3.18 県議会土木環境委員会)、「総量規制の必要性については、関係者の意見を聞いたうえで方向性を考えていきたい」(照屋統括監、2019.11.20 平和市民連絡会との意見交換会)、「総量規制については、他府県でもほとんど実施しているという現状を踏まえ、沖縄県としても早い目に作業を進めていきたい」(同)、「有識者の意見を聴取し、必要かどうか検討したい」(2020.6.28 沖縄タイムス)と回答をしてきましたが、今も具体化していません。

 今回、辺野古新基地建設事業の設計変更申請を国が代執行で承認したことにより、大量の海砂が採取される事態になりました。現在の県内での海砂採取量は年間81~146万㎥程度ですが(2018年~2022年、「沖縄県土木建築部要覧」)、今後、辺野古新基地建設事業では地盤改良工事の敷砂(厚さ:1.5m)や砂杭、また中詰材として394万㎥もの海砂が必要とされています(防衛局「第3回技術検討会資料」 P53)。現在の年間採取量の約3~5倍もの海砂が採取されるのですから、沖縄沿岸海域の環境に深刻な影響を与えることが危惧されます。 

 以上の理由から、海砂採取問題について下記のとおり陳情します。 

 

             記

 

1.「沖縄県海砂利採取要綱」(以下、「要綱」)では、海砂採取場所について、「海岸線から1km以上離れていること」、「水深が15m以上の区域であること」、「一認可の採取面積は30万㎡(漁業権区域内では10万㎡)以内であること」等の許可の基準・条件を定めている。

 しかし以前は、実際の採取場所や採取量を示す証拠の提出を求めていなかったため、上記の基準・条件が遵守されているかどうか、確認されていなかった。我々の要請もあり、2020年7月1日から、採取中の船の位置情報が示された船内モニター画面、砂利採取月報等に係る荷姿全景写真、採取量計算書等を「試行的」に提出させることになった(2020.6.29 土海第328号)

 これらは今も「試行」のままであるが、早急に「要綱」に明文化すること。

 

2.特に環境に深刻な影響を与えるのは海砂の「深堀り」である。「要綱」では、「部分的な深堀りをしてはならない」としているが、その具体的な内容は要綱に定めがなく、「海砂利採取に関する取扱いについて」で、「掘削深度は概ね2m程度とし、採取区域において平均2mとなるようにする」、「部分的な深堀りとは、2mから50%程度を超えた場合とする」とされているだけである。

 海砂採取の許可申請には、等深線1mごとの深浅測量図を提出させているのであるから、深堀り防止のために、海砂採取後についても深浅測量図を提出させること。

 

3.海砂採取は環境に深刻な影響を与えるだけではなく、海砂そのものが限られた資源である。しかし現在の「要綱」では、個々の申請が許可条件さえ満たせば全て許可されることから、申請数が増えれば全体では大量の採取量となってしまう。

 現在、西日本の各府県では、環境面や水産資源への影響等を考慮し、海砂採取の全面禁止や総量規制に踏み切っている。沖縄県でも、少なくとも海砂採取の総量規制を実施することが必要である。

 県議会でも、「(海砂採取の総量規制を求める)陳情の趣旨に沿って、対応が求められている。是非、ご判断いただきたい」(2019.3.18 県議会土木環境委員会 仲村未央議員)、「年間総量規制というのは設けるべきではないか」(同 赤嶺昇議員)等と指摘されてきた。そのため、県も当時、漁業関係者や事業関係者等から総量規制についての意見聴取を始めたが、途中で作業が止まってしまったという。

 来年度からは膨大な量の海砂採取が予定されていることから、早急に海砂の年間総量規制を実施すること。

 

4.沖縄の主要な海砂生産地であるやんばるの東西海域はジュゴンの餌となる海草藻場の繁茂地である。最近も、古宇利島周辺で多数のジュゴンの食み跡が見つかり、名護市久志沿岸部ではジュゴンの糞が確認された。しかし辺野古新基地建設事業では、ジュゴンの回遊ルートや餌場に近い沖縄島北部の4ケ所で海砂を採取するとされており(埋立承認申請書「埋立に用いる土砂等の採取場所及び採取量を記載した図書」 P6)、ジュゴンや海草藻場への影響が危惧される。

 辺野古新基地建設事業の設計変更申請書に添付された環境保全図書では、「(資材海上運搬の)作業船の航行にあたっては、ジュゴンが頻繁に確認されている区域内をできる限り回避し、沖縄島沿岸を航行する場合は、岸から10km以上離れて航行します」とされている(1-207)。運搬船の航行を規制している区域で海砂採取を認めることは矛盾している。やんばるの東西海域では、海岸線から10km以内での海砂採取を禁止すること。 

 

5.やんばるの東西海域は、生物多様性条約第9回締約国会議(2008年)を受けて抽出された環境省の「生物多様性の観点から重要度の高い海域」に指定されている(「沖縄島中北部沿岸 海域番号14802」)。さらに昨年、「生物多様性国家戦略2023-2030」で、「陸域、海域の30%以上を保護区として守る」など25の行動目標が閣議決定された(2023.3.31)。

 また環境省が設定した「海洋保護区」[1]に該当する区域には、自然公園法や自然環境保全地域の区域等だけではなく、共同漁業権区域等も含まれている(2011.5 環境省「我が国における海洋保護区の設定のあり方について」)。

 海砂採取の「要綱」では、自然公園区域、自然環境保全区域等での海砂採取を禁止しているだけだが、「生物多様性国家戦略2023-2030」の閣議決定等を受けて、環境省が指定した「生物多様性の観点から重要度の高い海域」や、「海洋保護区」である共同漁業権区域での海砂採取も禁止すること。

以上

 

[1] 「海洋保護区」とは、「海洋生態系の健全な構造と機能を支える生物多様性の保全及び生態系サービスの持続可能な利用を目的として、利用形態を考慮し、法律又はその他の効果的な手法により管理される明確に特定された区域」(環境省)

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