今日(1月31日・水)は、今年度、地対艦ミサイル配備が予定されている陸上自衛隊勝連分屯地の自衛隊による森林法違反の形質変更問題について、「ミサイル配備から命を守るうるま市民の会」の沖縄県交渉だった。県は農林水産部統括監、森林管理課長らが対応、市民の会は、共同代表の照屋大河県議、山内末子県議、照屋寛之さんをはじめ7名が参加した。
勝連分屯地内の保安林は、戦争当時は日本軍、戦後は米軍によって伐採されてしまった。風害防止という保安林指定の目的が無くなったわけではないので、本来なら1973年に返還された時点で政府が保安林に原状回復すべきだった。しかし陸上自衛隊は、その保安林に指定された一帯をさらに形質変更してきた。森林法34条1項は保安林内の伐採禁止、同条2項は形質変更禁止を定めており、陸上自衛隊の行為は同条2項違反であることは明らかだ。
(1月31日、うるま市民の会の県交渉)
市民の会は昨年初めから県に対して、防衛局に基地内の保安林を原状回復させるよう申し入れてきた。
森林管理課は昨年9月8日、「米軍が改変した時点から現在に至るまで森林状態ではなく、かつ、森林に復旧することが著しく困難と認められること、これまでに把握される被害報告等はないことから、当該保安林について復旧命令等の監督処分をすることは社会通念上適切ではないものであり、自衛隊に監督処分を課すことも適切ではない」(詳細は昨年9月8日のブログ参照)と回答した。市民の会が問題点を指摘し、再検討を求めていたが、今日、県は、「知事、副知事との調整を行った」として、次のような「処理方針」を示した。
この処理方針は全く納得できない。
1.現地の伐採は最初に日本軍が行っており、米軍は戦後、基地として使用するために伐採範囲を広げた。県の認識は、日本軍による最初の伐採の事実を無視したものである。
2.「米軍により改変された」ので、「森林法に基づく保安林ではなくなった」とするのは何故か。米軍が森林を伐採したとしても、その時点で当初の「風害防止」という保安林指定の目的が無くなったわけではない。政府は、返還された時点で保安林に原状回復すべきであった(昨年8月、台風6号により本件保安林の北側の米軍レーダーが強風で大破するなどの風害が生じている)。
3.この一帯は、日本に返還された後の1975年4月24日、当時の屋良知事が、再度、「風害の防止」を目的として、「保安林の指定施業要件の指定の告示」を行っている。「米軍により改変された」時点で「保安林ではなくなった」というのであれば、当時の屋良知事の保安林指定処分が誤りで、取り消さなければならなくなる。
4.「森林法に基づく適切な是正方法は『保安林の解除』以外にない」とするのは何故か。保安林の解除については、森林法第26条2項で、「指定の理由が消滅したとき」、「公益上の理由により必要が生じたとき」に解除するとされているが、県のホームページでは次のように説明している。
「特別な理由がない限り、原則として保安林指定を解除することはできません。ただし、次のような場合には解除が認められる場合があります。
ア 指定理由が消滅したとき
受益の対象が消滅したとき、自然現象等により保安林が破壊され森林に復旧することが著しく困難と認められるとき、保安林の機能に代替する機能を果たす施設が設置されたときなどが該当します。
イ 公益上の理由により必要が生じたとき」
県は、今日、「本件は『指定理由が消滅したとき』に該当する」と説明した。しかし、米軍が勝手に伐採したために森林が無くなったとしても、保安林指定の目的が解消したわけではなく、知事がその保安林を解除することなどあり得ない。返還後、政府は森林に原状復帰し、保安林を回復すべきであった。森林に復旧することは「著しく困難」ともいえず、保安林解除の要件には該当しない。県の処理方針は、政府、自衛隊に過剰に忖度したものと言わざるを得ない。
5.問題は勝連分屯地だけではない。今日、県は、「自衛隊及び米軍基地内の保安林の取扱い方針」を示した。そこでは、「米軍により改変され、改変された当時から現在に至るまで森林ではない場合は、知事の認定により解除」するというのだ。おそらく、他にも同様の事例があるのであろう。
(1月31日、県が示した文書)