11月4日(火)、県民会議が県に対して「質問と要請」を行った。1週間以内に文書回答の上、話し合いを求めている。要請書を下記に転載する。
沖縄県知事 仲 井 眞 弘 多 2014年11月4日
基地の県内移設に反対する県民会議
この間の辺野古新基地建設事業に関する問題点についての質問と要請
沖縄防衛局は本年8月以降、多くの県民の反対にも関わらず、海上保安庁の暴力的な警備に守られながら辺野古新基地建設のための海底ボーリング調査を強行してきました。しかし、この間の防衛局の辺野古新基地建設の事業内容には、県民として看過できない多くの問題点があります。
これらの問題について、以下のとおり、質問と要請をさせていただきますので、1週間以内に文書でご回答の上、私たちと話し合いの場を持たれるよう要請します。
1.海底ボーリング調査と本体工事の入札公告について
2.事実上の埋立工事である「工事用桟橋」について
3.設計概要の変更申請について
4.シュワブ基地内の既設建物解体工事におけるアスベスト問題について
5.防衛局が設置したフロートのアンカー等によるサンゴ礁の破損について
第1 海底ボーリング調査と本体工事の入札公告について
県民の抗議や台風の影響等もあって海底ボーリング調査(「シュワブ(H25)地質調査(その2)」)は大幅に遅れ、防衛局はまだ、大浦湾での大型スパッド台船による9ケ所の調査に着手できていません。このままでは11月末までという履行期限内に調査を終えることは難しく、工期の延長が不可避になっています。また、防衛局は10月10日、さらに3地点で海底ボーリング調査を行う委託業務(「シュワブ(H26)地質調査」)の入札公告を行いましたが、この委託業務は履行期限が来年3月31日とされています。
このような現状にも関わらず、防衛局は、10月24日、ケーソン新設工事や二重締切護岸新設工事等6本の埋立本体工事の入札公告を行いました。本来ならボーリングによる土質調査のデーターに基づいて実施設計が組まれるものです。しかし今回は、ボーリング調査がまだ終わっておらず、11月末が履行期限である実施設計もまだできていないのに、もう工事仕様書、工事図面等を作成して埋立本体工事の入札公告を行っているのです。
これでは、いったい何のために海底ボーリング調査を行っているのか、全く理解できません。
<質問と要請事項>
1-1.知事は昨年12月27日、埋立承認申請の承認にあたり、「留意事項」として「①工事の施工について---工事の実施設計について事前に県と協議を行うこと。②工事中の環境保全対策等について---実施設計に基づき環境保全対策、環境監視調査及び事後調査などについて詳細検討し県と協議を行うこと。」などと防衛局に指示している。
今回の6件の本体工事の入札公告に添付されている工事仕様書や工事図面等は当然、実施設計に基づき作成されるものであるが、防衛局は、これらの6件の本体工事の実施設計に関して、事前に県と協議を行ったか。また、環境保全対策等について県と協議を行ったか。
1-2.沖縄防衛局は海底ボーリング調査について、本年7月11日、県に岩礁破砕等に関する協議書を提出した。そして本年8月11日には、調査内容を変更する変更協議書を提出している。
現在行われている海底ボーリング調査(「シュワブ(H25)地質調査(その2)」)は本年11月30日が工期であるが、その延期の手続きがされているか。
また、10月10日に入札公告が行われた3本の海底ボーリング調査(「シュワブ(H26)地質調査」)について、通常なら「シュワブ(H25)地質調査(その2)」の追加変更で実施されるはずだが、新しく入札公告を行い別件委託業務とされているのは何故か。
さらに従来の海底ボーリング調査では、不発弾等の有無を調査する磁気探査の鉛直探査は深さ-10mまでだったが、今回の「シュワブ(H26)地質調査」では深さ-30mまで磁気探査が行われる。その理由は何故か。
第2 事実上の埋立工事である「工事用桟橋」について
この数日の地元紙は、防衛局が知事選後にも、大浦湾側のキャンプ・シュワブ沿岸に長さ100m以上の「工事用桟橋」の敷設を始めると報道しています。この「工事用桟橋」は、「陸から海への石材などの搬入のため」(2014.10.31 沖縄タイムス)、「海底ボーリング調査にも使用する」(2014.11.1 琉球新報)と言われていますが、仮設のものではなく、砕石等で埋め立てて大型車両の通行可能な幅に整備するという本格的なものです。大浦湾に大量の砕石等が投入されることから、これは「事実上の埋め立て工事」(沖縄タイムス 2014.10.31)の着工です。
ところが、この「工事用桟橋」については、防衛局の環境影響評価書や県への埋め立て承認申請書にも全く記載されていません。報道によると防衛局が本年6月に大成建設と契約を結んだ「シュワブ(H26)仮設工事」に含まれているとのことです。県は岩礁破砕の許可を既に出しているといいますが、公文書公開請求で開示された「シュワブ(H26)仮設工事」の設計図書や県に出された岩礁破砕の協議書では、これらの「工事用桟橋」については全て黒塗りされ、その構造、位置、工法等は全く明らかにされていません。
このまま大浦湾への大量の砕石の投入が始まれば、環境に深刻な影響を与えることは明らかです。県として、防衛局に設計概要の変更申請書の提出を求め、その内容を十分に審査する必要があります。
<質問と要請事項>
2-1. この「工事用桟橋」の設置目的、構造、位置、工法、そして環境保護対策等を明らかにすること。
2-2.この「工事用桟橋」の設置で使用される砕石の量を明らかにすること。どこから搬入される砕石か。
2-2. 防衛局に対して、この「工事用桟橋」敷設について、設計概要の変更申請の手続きを行うよう求め、その内容について十分に審査すること。また、それまでは工事に着手しないよう防衛局を指導すること。
第3 設計概要の変更申請について
また、防衛局が9月に提出した設計概要の変更申請についても、多くの問題が指摘されているにもかかわらず、県民にはその詳細が全く明らかにされていません。この変更申請については、美謝川の暗渠化や国道329号線を通過する大量のダンプトラックの問題等、環境に与える影響は著しく、公有水面埋立法の承認基準からみても、県はただちに不承認すべきものです。
私たちは、本年9月17日にも、この設計概要の変更申請を承認しないよう県に要請しましたが、すでに知事選の告示がされた今、知事が拙速な結論を出すことは許されません。
また、一部には、もし現知事が再選されなかった場合、現知事の任期中の12月9日までに駆け込みで承認してしまうのではないかという噂もありますが、そのような行為は許せるものではありません。
<質問と要請事項>
3-1. この設計概要の変更申請を承認するかどうかも知事選の争点の一つである。県民の判断を求めるためにも、防衛局が提出した設計概要の変更申請の詳細、県の照会に対する防衛局の回答文書、環境生活部や農林生活部の意見等、全ての文書を公開すること。
3-2. この設計概要の変更申請を不承認とすること。
第4 シュワブ基地内の既設建物解体工事におけるアスベスト問題について
防衛局は現在、辺野古新基地建設工事の一環としてキャンプ・シュワブ内の既設建物解体工事をすすめています。今後、年内に15棟の建物が解体される予定ですが、これらの建物にはいずれもアスベストが使用されており、その除去方法と、周辺住民への周知方法が大きな問題となっています。
私たちは、本年10月22日、知事に対してアスベスト問題についての要望書を提出しました。その際、環境保全課長は私たちの要請に答え、「県が、アスベストが適切に撤去できているかどうかを確認するまでは建物の解体に入らないよう防衛局を指導していく。」と約束しました。しかし、その後、10月31日から建物の解体作業が、県の完了検査もないまま始められています。
また、ゲート前で抗議行動を続けている多くの県民だけではなく、名護市もアスベスト問題についての住民説明会や基地の外に掲示板を設置するよう求めています。しかし、防衛局は「説明会は開催しない。」、「掲示板は基地の中の建物の前にある。ゲート外には設置しない。」という頑なな姿勢を続けています。
しかし、アスベスト除去作業についての周知は、何よりも「周辺住民の不安の解消」を目的としたものですから(平成17年8月2日、厚生労働省労働基準局安全衛生部長通知)、大気汚染防止法施行令、同施行規則に基づく工事内容を示す掲示板は、基地の外のゲートに出さなければ意味がありません。この点については、環境省大気環境課も、「最終的には沖縄県の指導となるが、掲示は周辺住民への周知を図るためのもの。適切な場所に設置してほしい。」、「基地内外と特定していないが、各自治体にはそのように掲示するよう通知している。」としています(2014.10.29 琉球新報)。
アスベスト問題は、現場で働く労働者のみならず、周辺住民にも影響する深刻な問題です。県として、最大限の取り組みをされるよう要請します。
<質問と要請事項>
4-1. 10月22日、環境保全課長は「県が、アスベストが適切に撤去できているかどうかを確認するまでは建物の解体に入らないよう防衛局を指導していく。」と言明したが、その点について防衛局を指導したか。防衛局に対して、今後、県の完了検査が済むまでは建物の解体を行わないよう強く指導すること。
4-2. 防衛局に対して、アスベスト問題についての住民説明会を開催し、基地のゲート外に掲示板を出すよう指導すること。
4-3. 今後予定されている15棟の既設建物解体工事で発生する廃棄物の量、その処理先を明らかにすること。
4-4. 防衛局は、解体したコンクリート殻を「再生砕石」として再利用するとしている。この「再生砕石」はどこで使用されるものか。前述の「工事用桟橋」設置のためには大量の砕石が必要だが、このコンクリート殻が海に投入されることはないか。
第5 防衛局が設置したフロートのアンカー等によるサンゴ礁の破損について
防衛局は、海底ボーリング調査を実施した際、大浦湾から辺野古のイノーにかけての広範な海域にフロートを設置しました。ところが、台風19号の大波により、海上のフロートが散乱してほとんど岸に打ち上げられ、また、フロートを固定していたワイヤーやアンカーが切り離されて引きずられ、海底のサンゴ礁が破壊されました。
このサンゴ礁の損傷は、防衛局が適切な台風対策を怠ったために生じた事故です。知事は、防衛局の埋立承認申請に対して、「現段階で取り得ると考えられる環境保全措置等が講じられている。」として埋立を承認しました。しかし、本体工事着工前の関連作業の段階で、このような杜撰な措置のためにサンゴ礁が破壊された事実は、適切な環境保善措置が講じられておらず、県のこの判断が誤りであったことを示しています。知事の承認の前提が崩れたと言わざるを得ません。
そもそもこのフロート設置については、埋立承認申請書にも記載されていません。また、岩礁破砕等許可申請書にも、「浮標」、「汚濁防止膜」とそのアンカーの構造図等はありますが、このフロートやそのアンカーの構造、設置箇所等は全く記載されていません。いわば、何の手続きもなく海域に投棄された不法投棄物件のようなものです。
また、今後予定されている大浦湾での大型スパッド台船による海底ボーリング調査では、より広範囲にフロートが再設置されることが想定されます。大浦湾は水深も深く、フロートの設置のためのアンカーも、より大型のものが設置されます。
沖縄県として、今回のようなサンゴ礁破損事故が絶対に再発しないよう、防衛局に対して毅然とした対応をとられるよう要請します。
<質問と要請事項>
5-1. 防衛局に、今回のサンゴ礁破損事故の状況等について防衛局に資料の提出を求め、県として破損の状況を確認すること。今回の事故の全容が明らかになり、十分な再発防止策が講じられるまではフロートの再設置を認めないこと。
5-2. 今後、フロートとアンカーを再設置する場合は、その構造図、設置箇所等について防衛局に資料の提出を求め、今回のような事故が再発する恐れはないか審査すること。また、それらの資料を県民に公開すること。
(以上)