西園寺由利の長唄って何だ!

長唄を知識として楽しんでもらいたい。
軽いエッセイを綴ります。

3代目瀬川菊之丞 その3

2011-01-29 | 長唄を作った人たち (c) y.saionji
3代目瀬川菊之丞 その3


2代目の百か日法要も終った、その年の暮れ、
富三郎は初めて江戸に下り、仏前で師弟の契りを交わした。

そして翌年(1774・安永3年)、市村座の初春狂言に瀬川富三郎
として初お目見え。

江戸の客は、大坂から来た無名の富三郎の見事な踊りにびっくり仰天。
3月の、2代目菊之丞一周忌追善興行では、
瀬川家のおはこ『百千鳥娘道成寺』を踊り、
5月の、8代目市村羽左衛門追善興行の「其面影二人椀久」
では、中村座の市川団十郎(5代目)、森田座の中村富十郎を向うに回して、
江戸中の評判をとった。

何しろ富三郎の父市山七十郎は、
大坂中の役者すべてを振り付けるほどの名人。

富三郎の踊りも、父親仕込みの筋金入り。
それにすらりと背が高く、美形でかわいらしい。
さすがに七蔵が執念でつかみ取った、菊之丞だけのことはある。

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tea break・海中百景
photo by 和尚