西園寺由利の長唄って何だ!

長唄を知識として楽しんでもらいたい。
軽いエッセイを綴ります。

「釣狐」

2011-01-14 | 長唄を作った人たち (c) y.saionji
「釣狐」

同じ年(1770・明和7年)の中村座初春狂言は、
桜田治助の『鑑池俤曾我』(かがみいけおもかげそが)。
曾我の対面の前の所作が「釣狐春乱菊」(通称、釣狐)。

作曲は中村座の囃子頭、杵屋六三郎(2世)で、
タテ唄は湖出市十郎。

市十郎は吉治の弟子ということもあってか、芸風が似ている。
六三郎は「娘七草」でもやったように、謡いガカリ、鼓唄を入れて
市十郎のよさを引き出してやった。

調子は「虚無僧」と同じく三下りだが、
踊るのは狐が化けた白蔵主(はくぞうす・僧)。

「虚無僧」も天蓋を被った僧の所作だし、
こうなると上方女形、瀬川菊之丞が持ち込んだ三下りも、
すっかり換骨奪胎されて、江戸の立役ものになった観がある。

これまで、三下りは上方の、二上りは江戸の、本調子は浄瑠璃のもの、
といった概念から放れられずに曲作りをしてきたが、
この頃からはある意味、
感性で調子を選ぶというような意識が芽生えてきたのかもしれない。


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tea break・海中百景
photo by 和尚