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西園寺由利の長唄って何だ!

長唄を知識として楽しんでもらいたい。
軽いエッセイを綴ります。

舌出三番叟

2010-06-28 | 長唄の歌詞を遊ぶ (c) y.saionji
108-「舌出三番叟」その2


元曲、「寿世嗣三番叟」に因んで、七五三の晴れ着の“模様づくし”。
目出たい言葉が並ぶ。

『天の岩戸のナ
 神楽月とて
 祝うほんその年も
 五つや七 三つ見しょうと
 縫いの模様のいと様々に
 竹に八千代の寿込めて
 松の齢の幾万代も
 変わらぬ例し 鶴と亀
 ぴんと跳ねたる 目出鯛に
 海老も曲がりし腰の志め
 宝尽くしや 宝船』

神楽月とは、11月(霜月)の異称で、この月の満月にあたる15日に、
氏神様に詣で、七五三の子供の成長を祈った。

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tea breaku・海中百景
photo by 和尚

舌出し三番叟

2010-06-26 | 長唄の歌詞を遊ぶ (c) y.saionji
107-「舌出し三番叟」(1812・文化9年・中村座)


この曲は、志賀山流に伝わる「寿世嗣三番叟」をアレンジしたもので、
中村歌右衛門(3代目)が踊った。
歌右衛門は子供の時、大阪に来た中村仲蔵に直接これを伝授された。
それ以来、歌右衛門は仲蔵に私淑しており、26年振りの再演となった。
照れ隠しにぺろりと舌を出すところがあり、題名の由来はここからきている。

『その昔 秀鶴の名にし負う   
 都上りの折りを得て
 教え請地の親方に
 舞の稽古を志賀山の
 振りもまだなる 稚気に
 忘れてのけし三番叟
 揉み出し繰り出し一奏で
 目出度う栄えや仲蔵を』

その昔秀鶴(ひいでるつる・仲蔵の号)に教えてもらった三番叟、
まだ幼かったので、手におえず忘れてしまったけれど、
ちょいと一番やってみましょう、という意味。 

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tea breaku・海中百景
photo by 和尚

美面より

2010-06-25 | 長唄の歌詞を遊ぶ (c) y.saionji
106-「美面より」(1809・文化6年・市村座)


これは芝居の所作の地なのだが、
浅草馬道の菓子屋が売り出した、きんつば ”美面より”の宣伝も兼ねているという、
珍しい曲。

踊ったのが沢村田之助で、田之助贔屓の菓子屋が、狂言作者福森久助に金を払って
この曲を作らせたというわけ。

『とても恋路にな
 遊ばば吉原
 猪牙で押さそか 四つ手で飛ぼか
 木幡の里じゃなけれども
 風味馬道
 召せやれ召せやれ
 いへづとによい 世の中の
 人は美面より』

●とにもかくにも、色恋で遊ぶなら吉原でっせ。
 船で行くか、駕篭で飛ばすか、
 木幡の里ではないけれど、浅草馬道にあるうまい菓子屋、
 どうぞ召し上がれ、土産にはもってこいの、きんつば”美面より”を。

木幡の里、山は万葉集の昔から馬のある所とされている。
ゆえに町名の馬道を引き出すために、木幡の里を出した。

当然この芝居では、お茶ときんつばが飛ぶように売れただろう。
こういうアナログな宣伝は、ちょっと前まではポピュラーだったのだよ。

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tea breaku・海中百景
photo by 和尚

鬼次拍子舞

2010-06-24 | 長唄の歌詞を遊ぶ (c) y.saionji
105-「鬼次拍子舞」(1739・寛政5年・河原崎座)


皆様ご存知の、歌麿は蔦屋重三郎という版元が発掘した浮世絵師だ。
蔦重は蔦唐丸(つたのからまる)という、狂歌名を持つ文筆家でもあり、
商才も閃きもある、なかなかのやり手。

極彩色の彩色刷りで、挿し絵を出したり、大首絵(上半身アップ)の美人画を出したりして、
世間の評判を取った。
しかもモデルにしたのが、水茶屋のスター、難波屋おきた・高島屋おひさ、
吉原菊本の芸者、富本豊雛など、いまをときめく美人たちとあって、
大首絵は飛ぶように売れた。


『さんげさんげ
 ぞっこん其様に 
 惚れて惚れて惚れぬいた
 それ 様の御器量を 
 今で例えて言おうなら
 浪華 高島 菊本も
 はだし詣りの代詣り
 弁財天と打ち込んだ
 君の色香の蘇民書札(そみかくだ)
 お茶の数さえ
 三千三百三十三杯
 うっかれ浮か浮か
 恋は曲者なびかんせ』 

●いやはや、お前にぞっこん惚れぬいたぞ。
 お前の器量ときたら、おきた、おひさ、豊雛が束でかかっても
 ごめんなさいと、逃げ出すほど、弁天様もびっくりだ。
 いかな修験者もお前の色香に目が迷い、お茶を飲むのも夢うつつ。
 恋は曲者、惚れなはれ。  

これは願人坊主が水茶屋の女をからかっている、という体のチョボクレ。

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tea breaku・海中百景
photo by 和尚

八朔梅月の霜月

2010-06-23 | 長唄の歌詞を遊ぶ (c) y.saionji
103-「八朔梅月の霜月」(1789・寛政元年・中村座)


この題名は謎かけのようで、意味不明。
八朔とは8月1日のこと、梅の月は2月のこと、霜月は1月のこと。
この所作は『平家評判記』という狂言の一番目三建目に出されたもので、
7月夏狂言だ。

これを書いたのは、桜田治助。
初春狂言中に、売りの中村仲蔵が倒れ休演。
7月の復帰公演がこの狂言なので、
休演した、1月・2月を含めての夏興行だよ、という意味が込められているのか。

女すりと、盗賊の悪二人が、秋草の名づくしで、ちょいと踊る。

『招く尾花にこちゃ招かれて
 荻の浮気な男郎花(おとこえし)
 われもこうなる思い草
 それそれ それで浮き名が立つわいな
 
 露と情けにこちゃ濡れ初めて
 誰が苅萱 女郎花
 色も黄菊の曇り草
 それそれ それで浮き名が立つわいな』

●「ちょいと兄さん…」についほだされる、
 浮気男の、ここが思案のしどころよ。

 はかない情事に本気で燃えて、誰かこの身を請けてくれる?
 そいつはちっと朧だね。
 そうさ、そうさ、それで浮き名が立つんだよお。

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tea breaku・海中百景
photo by 和尚