107-「舌出し三番叟」(1812・文化9年・中村座)
この曲は、志賀山流に伝わる「寿世嗣三番叟」をアレンジしたもので、
中村歌右衛門(3代目)が踊った。
歌右衛門は子供の時、大阪に来た中村仲蔵に直接これを伝授された。
それ以来、歌右衛門は仲蔵に私淑しており、26年振りの再演となった。
照れ隠しにぺろりと舌を出すところがあり、題名の由来はここからきている。
『その昔 秀鶴の名にし負う
都上りの折りを得て
教え請地の親方に
舞の稽古を志賀山の
振りもまだなる 稚気に
忘れてのけし三番叟
揉み出し繰り出し一奏で
目出度う栄えや仲蔵を』
その昔秀鶴(ひいでるつる・仲蔵の号)に教えてもらった三番叟、
まだ幼かったので、手におえず忘れてしまったけれど、
ちょいと一番やってみましょう、という意味。
〓 〓 〓
tea breaku・海中百景
photo by 和尚
この曲は、志賀山流に伝わる「寿世嗣三番叟」をアレンジしたもので、
中村歌右衛門(3代目)が踊った。
歌右衛門は子供の時、大阪に来た中村仲蔵に直接これを伝授された。
それ以来、歌右衛門は仲蔵に私淑しており、26年振りの再演となった。
照れ隠しにぺろりと舌を出すところがあり、題名の由来はここからきている。
『その昔 秀鶴の名にし負う
都上りの折りを得て
教え請地の親方に
舞の稽古を志賀山の
振りもまだなる 稚気に
忘れてのけし三番叟
揉み出し繰り出し一奏で
目出度う栄えや仲蔵を』
その昔秀鶴(ひいでるつる・仲蔵の号)に教えてもらった三番叟、
まだ幼かったので、手におえず忘れてしまったけれど、
ちょいと一番やってみましょう、という意味。
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tea breaku・海中百景
photo by 和尚

106-「美面より」(1809・文化6年・市村座)
これは芝居の所作の地なのだが、
浅草馬道の菓子屋が売り出した、きんつば ”美面より”の宣伝も兼ねているという、
珍しい曲。
踊ったのが沢村田之助で、田之助贔屓の菓子屋が、狂言作者福森久助に金を払って
この曲を作らせたというわけ。
『とても恋路にな
遊ばば吉原
猪牙で押さそか 四つ手で飛ぼか
木幡の里じゃなけれども
風味馬道
召せやれ召せやれ
いへづとによい 世の中の
人は美面より』
●とにもかくにも、色恋で遊ぶなら吉原でっせ。
船で行くか、駕篭で飛ばすか、
木幡の里ではないけれど、浅草馬道にあるうまい菓子屋、
どうぞ召し上がれ、土産にはもってこいの、きんつば”美面より”を。
木幡の里、山は万葉集の昔から馬のある所とされている。
ゆえに町名の馬道を引き出すために、木幡の里を出した。
当然この芝居では、お茶ときんつばが飛ぶように売れただろう。
こういうアナログな宣伝は、ちょっと前まではポピュラーだったのだよ。
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tea breaku・海中百景
photo by 和尚
これは芝居の所作の地なのだが、
浅草馬道の菓子屋が売り出した、きんつば ”美面より”の宣伝も兼ねているという、
珍しい曲。
踊ったのが沢村田之助で、田之助贔屓の菓子屋が、狂言作者福森久助に金を払って
この曲を作らせたというわけ。
『とても恋路にな
遊ばば吉原
猪牙で押さそか 四つ手で飛ぼか
木幡の里じゃなけれども
風味馬道
召せやれ召せやれ
いへづとによい 世の中の
人は美面より』
●とにもかくにも、色恋で遊ぶなら吉原でっせ。
船で行くか、駕篭で飛ばすか、
木幡の里ではないけれど、浅草馬道にあるうまい菓子屋、
どうぞ召し上がれ、土産にはもってこいの、きんつば”美面より”を。
木幡の里、山は万葉集の昔から馬のある所とされている。
ゆえに町名の馬道を引き出すために、木幡の里を出した。
当然この芝居では、お茶ときんつばが飛ぶように売れただろう。
こういうアナログな宣伝は、ちょっと前まではポピュラーだったのだよ。
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tea breaku・海中百景
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105-「鬼次拍子舞」(1739・寛政5年・河原崎座)
皆様ご存知の、歌麿は蔦屋重三郎という版元が発掘した浮世絵師だ。
蔦重は蔦唐丸(つたのからまる)という、狂歌名を持つ文筆家でもあり、
商才も閃きもある、なかなかのやり手。
極彩色の彩色刷りで、挿し絵を出したり、大首絵(上半身アップ)の美人画を出したりして、
世間の評判を取った。
しかもモデルにしたのが、水茶屋のスター、難波屋おきた・高島屋おひさ、
吉原菊本の芸者、富本豊雛など、いまをときめく美人たちとあって、
大首絵は飛ぶように売れた。
『さんげさんげ
ぞっこん其様に
惚れて惚れて惚れぬいた
それ 様の御器量を
今で例えて言おうなら
浪華 高島 菊本も
はだし詣りの代詣り
弁財天と打ち込んだ
君の色香の蘇民書札(そみかくだ)
お茶の数さえ
三千三百三十三杯
うっかれ浮か浮か
恋は曲者なびかんせ』
●いやはや、お前にぞっこん惚れぬいたぞ。
お前の器量ときたら、おきた、おひさ、豊雛が束でかかっても
ごめんなさいと、逃げ出すほど、弁天様もびっくりだ。
いかな修験者もお前の色香に目が迷い、お茶を飲むのも夢うつつ。
恋は曲者、惚れなはれ。
これは願人坊主が水茶屋の女をからかっている、という体のチョボクレ。
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tea breaku・海中百景
photo by 和尚
皆様ご存知の、歌麿は蔦屋重三郎という版元が発掘した浮世絵師だ。
蔦重は蔦唐丸(つたのからまる)という、狂歌名を持つ文筆家でもあり、
商才も閃きもある、なかなかのやり手。
極彩色の彩色刷りで、挿し絵を出したり、大首絵(上半身アップ)の美人画を出したりして、
世間の評判を取った。
しかもモデルにしたのが、水茶屋のスター、難波屋おきた・高島屋おひさ、
吉原菊本の芸者、富本豊雛など、いまをときめく美人たちとあって、
大首絵は飛ぶように売れた。
『さんげさんげ
ぞっこん其様に
惚れて惚れて惚れぬいた
それ 様の御器量を
今で例えて言おうなら
浪華 高島 菊本も
はだし詣りの代詣り
弁財天と打ち込んだ
君の色香の蘇民書札(そみかくだ)
お茶の数さえ
三千三百三十三杯
うっかれ浮か浮か
恋は曲者なびかんせ』
●いやはや、お前にぞっこん惚れぬいたぞ。
お前の器量ときたら、おきた、おひさ、豊雛が束でかかっても
ごめんなさいと、逃げ出すほど、弁天様もびっくりだ。
いかな修験者もお前の色香に目が迷い、お茶を飲むのも夢うつつ。
恋は曲者、惚れなはれ。
これは願人坊主が水茶屋の女をからかっている、という体のチョボクレ。
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103-「八朔梅月の霜月」(1789・寛政元年・中村座)
この題名は謎かけのようで、意味不明。
八朔とは8月1日のこと、梅の月は2月のこと、霜月は1月のこと。
この所作は『平家評判記』という狂言の一番目三建目に出されたもので、
7月夏狂言だ。
これを書いたのは、桜田治助。
初春狂言中に、売りの中村仲蔵が倒れ休演。
7月の復帰公演がこの狂言なので、
休演した、1月・2月を含めての夏興行だよ、という意味が込められているのか。
女すりと、盗賊の悪二人が、秋草の名づくしで、ちょいと踊る。
『招く尾花にこちゃ招かれて
荻の浮気な男郎花(おとこえし)
われもこうなる思い草
それそれ それで浮き名が立つわいな
露と情けにこちゃ濡れ初めて
誰が苅萱 女郎花
色も黄菊の曇り草
それそれ それで浮き名が立つわいな』
●「ちょいと兄さん…」についほだされる、
浮気男の、ここが思案のしどころよ。
はかない情事に本気で燃えて、誰かこの身を請けてくれる?
そいつはちっと朧だね。
そうさ、そうさ、それで浮き名が立つんだよお。
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tea breaku・海中百景
photo by 和尚
この題名は謎かけのようで、意味不明。
八朔とは8月1日のこと、梅の月は2月のこと、霜月は1月のこと。
この所作は『平家評判記』という狂言の一番目三建目に出されたもので、
7月夏狂言だ。
これを書いたのは、桜田治助。
初春狂言中に、売りの中村仲蔵が倒れ休演。
7月の復帰公演がこの狂言なので、
休演した、1月・2月を含めての夏興行だよ、という意味が込められているのか。
女すりと、盗賊の悪二人が、秋草の名づくしで、ちょいと踊る。
『招く尾花にこちゃ招かれて
荻の浮気な男郎花(おとこえし)
われもこうなる思い草
それそれ それで浮き名が立つわいな
露と情けにこちゃ濡れ初めて
誰が苅萱 女郎花
色も黄菊の曇り草
それそれ それで浮き名が立つわいな』
●「ちょいと兄さん…」についほだされる、
浮気男の、ここが思案のしどころよ。
はかない情事に本気で燃えて、誰かこの身を請けてくれる?
そいつはちっと朧だね。
そうさ、そうさ、それで浮き名が立つんだよお。
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tea breaku・海中百景
photo by 和尚
