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西園寺由利の長唄って何だ!

長唄を知識として楽しんでもらいたい。
軽いエッセイを綴ります。

鳥羽絵

2010-08-11 | 長唄の歌詞を遊ぶ (c) y.saionji
128-「鳥羽絵」(1841・天保12年中村座)


鳥羽絵とは、戯れ絵のことで、
鳥羽僧正覚猷(とばそうじょうかくゆう)作と伝えられる、
「鳥獣人物戯画」(平安~鎌倉期・高山寺所有)が有名だ。

この曲はその絵を題材にしたもの。

『あゝら あやししの十六文で
 九官鳥は見たれども
 擂粉木に羽根がはえて
 鳥羽絵はほんに我ながら
 オヤ 馬鹿らしい』

●見せ物小屋で16文払って九官鳥は見たけれど、
擂粉木に羽根のはえた鳥など、絵とはいえバカバカしいねえ。

「あやしし」、は怪しいと、九九の4×4=16、の掛詞。

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tea breaku・海中百景 
photo by 和尚

供奴

2010-08-10 | 長唄の歌詞を遊ぶ (c) y.saionji
127-「供」(1828・文政11年・中村座)

江戸の男伊達はおしゃれが身上だ。
いかにダンディーな出で立ちで廓に通うか、に命を懸ける。

『己らが旦那はナ
 廓一番隠れないない丹前好み
 華奢に召したる腰巻き羽織
 きりりとしゃんと
 しゃんときりりと
 高股立ちの袴付き
 後に下郎がお草履取って
 それさ これさ
 小気味よいよい 六方振りが
 浪花師匠のその風俗に
 似たか
 似たぞ似ましたり
 さてさてな 寛濶華麗な 出立ち』

●おいらのご主人さまは、なにを隠そう、廓で一番の洒落男さ。
 羽織の裾をきりりとはしょって、袴は両端をピンとつまみあげ、
 草履取りの下男を連れ、それさ、これさ
 小気味の好い歩き方は、浪花の師匠、中村歌右衛門にそっくり。
 さてもさても派手で華麗なその出で立ち。

草履取りは主人の草履係り。外出時には替え草履を持ってお供した。
これを踊ったのは、中村芝カン(2代目)、後の歌右衛門(4代目)だ。
ゆえに「浪花師匠」となる。

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tea breaku・海中百景
photo by 和尚
 

大原女

2010-08-09 | 長唄の歌詞を遊ぶ (c) y.saionji
126ー「大原女」(1810・文化7年・中村座)

江戸に”奴言葉・六方言葉”というのがあった。
いわゆる侠客や、旗本奴、町奴などの男伊達・六方者が、
粋がって使うお仲間言葉のようなもの。

「かっちけねえ(かたじけない)・ふんばるべい(がんばるか)
してこいな(合点だ)」等の言葉を使う。

この曲は中村歌右衛門(3代目)による舞踊で、
八瀬大原の黒木売り(おかめの面を付けている)が、
後半引抜きで奴になり、毛槍を振っての槍踊りという趣向。

『だめな事ばし言わしゃるな
 明日は関東さへ罷るべいちゃな
 やれさてな
 主さ別れちゃな 伊勢路へ
 あんちゅうちくだ ぶん抜きゃるさア
 池のどん亀なら むんぐるべいとは
 やれさて 実だんべ 実だんべ』

●気休めなんか言わないで、明日はどうしても関東へ行くんでしょ、
 そうなんだよ、
 あんたは別れて伊勢路へ下るか…
 闇に紛れて、逃げちまうか、 
 池の亀なら、潜れるのにな、
 あーあ、そうだわさ、そうだわさ。
  
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tea breaku・海中百景 
photo by 和尚 

田舎神子

2010-08-07 | 長唄の歌詞を遊ぶ (c) y.saionji
125ー「田舎神子」(1806・文化3年・中村座)

神子とはもちろん巫女のこと。
その昔、邪馬台国の女王、卑弥呼が巫術・幻術・妖術を操り、
神懸かりによる託宣で倭国を治めたたように、
古来わが国では、神を祀り神に仕える者は女に限られていた。

ところが、神道が固定し、仏教が定着すると、男がその座を独占するようになった。
結果、呪術を行う巫女はお払い箱となり、放り出された。
彼女たちは村々を歩き、売色もします、占いもします、というかたちで
生活をするようになった。
これが、”歩き巫女”といわれるものだ。
始めは単独行動だった歩き巫女も、次第に土着して巫女村や、巫女町を形成し、
集団で生活をするようになった。

梓弓を鳴らしての卜占や、鈴を振っての神降ろし、亡者の口寄せなどが主な仕事。


『京で大原 下で大坂の綿屋町
 江戸で亀井戸 梓神子
 締めつゆるめつ鈴振る手の内
 鳴るかならぬか
 なりそな目許と三つ扇』

●京は大原、大坂は綿屋町、江戸は亀井戸が三都の巫女町。
 梓弓を締めたりゆるめたり、鈴を振ったりのその技。
 さあ鳴るか鳴らぬか、なんとか成りそうな、目許と見えたがいかに。

三つ扇とは、これを踊った、岩井半四郎(5代目)の紋所。

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tea breaku・海中百景
photo by 和尚

手習子

2010-08-06 | 長唄の歌詞を遊ぶ (c) y.saionji
124ー「手習子」※その2(1792・寛政4年・河原崎座)

今様の名作に、いろは仮名47文字を並べた「いろは歌」がある。

「いろは匂へど 
 散りぬるを
 我が世誰ぞ 
 常ならん
 有為の奥山
 今日こ越えて
 浅き夢見じ
 酔ひもせず」

昔から手習い歌として、活用されてきた。
この曲ではそれが、鞠つき唄にアレンジされた。

『恋のいろはに ほの字を書いて 
 それで浮き名のちりぬるを
 わかよたれそ つねならむ
 心おくやま けふ越えて
 逢うた夢見し嬉しさに
 飲めども酒に酔いもせず
 今日ぞ恋路の清書なり』

※その1は、2010年3/10にあり。

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tea breaku・海中百景
photo by 和尚