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西園寺由利の長唄って何だ!

長唄を知識として楽しんでもらいたい。
軽いエッセイを綴ります。

「喜撰」-2

2012-08-24 | 笑えます、長唄(c)y.saionji
「喜撰」は本名題を『六歌仙容彩』(ろっかせんすがたのいろどり)といい、
六歌仙に趣向を借りた、六変化舞踊だ。

冒頭に喜撰法師の唯一の歌、
「わが庵は 都の辰巳 しかぞすむ 世を宇治山と 人はいふなり」
を芝居版にアレンジして茶化す。

「わが庵は
 芝居の辰巳 常磐町
 しかも浮き世を 
 離れ里」


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tea break
photo by 和尚

「喜撰」-1

2012-08-23 | 笑えます、長唄(c)y.saionji
 六歌仙


喜撰とは平安時代の歌人で、
六歌仙の一人、喜撰法師のことをいう。
京の宇治山に隠棲し、ひょうひょうと生きたようだ。

紀貫之が六歌仙の一人に選んだのだが、
喜撰法師の歌は『古今集』『百人一首』
に残された、題しらずの一首のみ。

あとの五人は、
僧正遍昭・在原業平・分屋康秀・小野小町・大伴黒主。

貫之は官位の高い人をあえて選ばず、伝説の歌人を選んだという。

喜撰法師は仙人になるための“仙薬”を飲み、
雲に乗って飛び去ったという
ミステリアスな人物だ。


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tea break
photo by 和尚

「二人袴」-3

2012-08-13 | 笑えます、長唄(c)y.saionji

「一つ袴を二人ではいて
 前は見すれど 後を見せず
 後見せぬが武士の意地

 意気も気合いも つい打ち解けて
 解けて逢う夜の 二人が仲は
 世間晴れての 夫婦じゃものを

 羨ましいかえ 古池の蛙 
 夜は夜すがら がらがらがら

 猫がかけだす 犬めが吠える

 狂いくるくる お目出たや
 狂いくるくる お目出たや」

平家の猛者、悪七兵衛景清を出しておいて、
前は見せても後を見せぬが武士の意地、と
間抜けな姿を笑ってみせるのが、この曲のみそ。


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tea break
photo by 和尚


 

「二人袴」-2

2012-08-12 | 笑えます、長唄(c)y.saionji

新しい袴を着けた父は、
心おきなく得意の「八島」を舞う。

「源氏の方より かけ出す強者
 三保の谷の十郎国俊は
 一際目立って見えければ
 
 天晴武者振り我こそは
 悪七兵衛景清と 薙刀振って渡り合い
 太刀をはっしと打ち折れば…」

悪七兵衛景清は、平家一番の猛者だ。
この場合の”悪”とは、悪人の意ではなく、
強いという意味。
本名平景清、通称上総七郎といい、
役職は兵衛尉(ひょうえのじょう・兵衛府の判官)。
ゆえに、悪七兵衛景清という。

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tea break・海中百景
photo by 和尚

「二人袴」-1

2012-08-11 | 笑えます、長唄(c)y.saionji

狂言の「二人袴」を歌舞伎舞踊に移したもので、
常磐津と長唄の掛合いで作られている。
話しの筋はこうだ。

右馬之助の婿入りの日、相手の家まで同行した父は挨拶してすぐ帰るつもりだった
(中世では結婚後、夫が初めて妻の実家を訪ねる儀式を婿入りといった)。

もとより礼装用の袴は一つしかない。
まず父が挨拶し、急いで袴を脱いで息子に渡す。

右馬之助が袴をはいて家に上がると、
舅が「二人一緒にどうぞ」という。

困りはてた父は「エイ!」と袴を引き裂き、
前半分を右馬之助に渡し、
自分は後半分を着けて式に参列。

酒宴が始まり、舅は父に舞を所望する。
父は右馬之助と背中会わせに連れ舞いをするが、
つい興に乗ってしまい袴が半分ずつであることを見破られてしまう。

舅は新しい袴を父に与え、もう一差し所望する。
父は得意の「八島」を舞い、酔いが回って寝てしまう。

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tea break・海中百景
photo by 和尚