スパイラルゼロ-4
アギュ
ドラコが産れてしばらく、僕は子育てに専念していた。研究所からたくさん人が来たりして、検体としての僕も大忙しだった。ワームミルクと呼ばれるアドレナリンの一種の科学物質を電気エネルギーに変換したものを脳に注ぎ込まれたり、僕自身も精神を安定させるものやら免疫を上げるものやら、もうやめて~ってぐらいの慌ただしさ。卵が憑いた男として僕は有名人?になりつつあった。とどめになんだか嫌みな教官がやって来て、僕が特別クラスに入ることになったと告げたわけだ。
最初に横たわる僕の目に入ったのは銀の指輪だった。間接が弱いニュートロンは指を保護する為にリングを付けていることが多い。その指輪は他のリングより一回り大きく重そうで、保護と言うよりは装飾的な感じがした。流星をかたどっている紋章が取り巻いている。
遊民の有名な一族のものだ。渋い重力のある声が振ってきた。
「あのアギュレギオンと一緒に学べるなんて大変名誉なことである。感謝するがいい。」
「はあ。」僕はちょっと努力してそう答えた。なんとか、顔を上向ける。
教官は不満そうだったが、僕にとっては別にーって感じだった。
あ、でもユウリと一緒に学べるのか。そいつはクラス担任のケフェウスだと名乗った。
その教官は困ったことになかなか帰ってくれず、しまいにはワームがこの目で見たいと言いだした。年配の担任は銀髪を丁寧になで付け、グレイに金の縦縞が入った不思議な瞳をしていた。その爬虫類のような目の所為か、ニュートロン特有の仮面のような表情と相まってどうしても、酷薄な感じがしてしまう。妙に犬歯が出てるように見える、後ろに長い特徴的な頭蓋骨の形はニュートロンの中でも特にカバナ人種出身者特有のものであったのだが、その頃の僕はそんなことですらなんにも知らなかった。
そんな無表情で、どうやったら自分にもワームが見えるようになるか、僕になんとかしろ的事をしつこく言われても困るばかりだ。
終いには僕そっちのけで、後ろの方に控える数人の助手に何か工夫はないかとか言い出した。僕は首を向けるのもたるいから、横になって話を聞いているしかなかった。
そいつらの一人が僕ごと次元レーダーに、つまりとっても強力な電磁波に掛けることとか言い出した時は、あやうく癇癪を起こすところだった。
そんなことしたら僕が死ぬってーの。やりかねなかったので気が気でない。抗議しようと口を開きかける。
「所長の許可が必要ですから、それは無理でしょう。」
僕の代わりに誰かが言ってくれたので感謝する。
その声はニュートロンらしくない、原始星の訛りがあった。
やはり頼りになるのは同じ原始星同志やね。僕は命の恩人を一目見たかったが、首を動かすと眩暈がしたのでやめた。
「生まれたてのワームなら、抵抗が弱いから視覚化ができるのでは?」
「ワームも死ぬ公算が強いですね。」若い声にやんわりなだめられるしつこいオヤジ。
「ふむ。」
教官はおあずけを食ったエサを見るように僕をしばらく眺め・・そして、やっとあきらめたので、僕は心底ほっとした。
「僕のほかにもジュラからの生徒はいるんじゃないですか?」
僕は思いきって声を出した。そいつに見せてもらえばいいだろ、あーん?。
ようするに、シドラ・シデンのことを聞いてみたわけだ。
教官は露骨に顔をしかめた。それが返事だった。シドラは彼に全然、好かれてなさそう。
まあ、僕も好かれなくてもまったく構わないかもね。
教官が帰った後、僕は目を閉じて考えていた。ドラコが意識の片隅で寝ているのが確認できた。不思議な感覚。まだ完全には慣れてはいなかった。
その時、目の前がぼんやりと明るくなるのを感じた。。
「キミ・・・」かすれた声。ワームにしては変。
僕は目を開けて、仰天した。
目の前にいたのはアギュだった。
「わ!ビックリした!」
いつ、来たんだ?なぜここに?僕、混乱。
「キミさ、」アギュはむせた。
「わっ、汚ね!」思わず僕はのけぞった。
「なんだよ!せっかく、話しかけてやってんのに!このオレが!」
アギュはブリブリ怒った。怒ったら、青い火の玉の中の顔の回りだけ真っ赤になった。
瞳の輪郭だけが極端に青い。初めてマジカに見てしまった。
「声帯が薄くなってんだよ、オレは!知ってるだろ?」
知らないとは言わせないとその目が言っていた。でも知らん、そんなの。
アギュの声は少し耳障りだった。その辺、ドラコと似たり寄ったり。
(にょにょ?)まあまあ。
「ユウリから聞いたんだけど。」
それで僕にはすべてが理解できた。こいつもワーム見物なわけ?
アギュはマジマジと僕の頭の辺りを見ていた。
「お前、ワームが見えるの?」
「誰にものを言ってるんだ?」そう言いながらも熱心に覗き込もうと近づいて来た。
「アギュさま、臨界進化さまに。」僕は少し身体を引いた。
「失礼な奴だな。ケフェウスなんてオレが直接、話かけでもしたらチビらんばかりなのに」
「そりゃ、躾がなってないのさ。」僕だってあの教官は嫌いだけど。
「フーン。」アギュは初めて僕をちゃんと見た。
「それってアイツ?、それともオレ?」アギュの思考は早かった。
「ユウリが言ってた面白い奴ってこっち?。」何?ユウリが何だって?
「オマエもユウリが好きなんか」アギュはニヤニヤした。
「おい!人の考えを読むなよ!違反だぞ!」僕、激怒。慌ててできる限りの思考バリアー。
「オマエが悪いんだ。無防備で。オレからすると単純馬鹿過ぎ。」
アギュの全身を覆う光が僕に触れていた。熱くも寒くもない。ウールの毛先が触れてるように包み込まれる。光なのに触感があるなんて。しかも認めたくないが心地よい。
「どうした?臨界進化サマって呼ぶんだろ?」
「誰が呼ぶか!」
「そう呼ぶ奴が一番多いな。まあ当然?」アギュは視線を再びワームに戻した。
「嫌なら好きに呼んでいいぞ。オレが許してやる。」
「ありがたすぎて反吐が出ますこと」こいつには本音を下手に隠しても仕方がない。
「変な奴。卵でワームが授かるだけのことはある。ジュラの人間は皆こうなのか。」
シドラ・シデンに似てるってか。うーん、それはちょと。
でも。お追従や媚びへつらいがこいつにはみんなわかるってことか。そりゃ、性格も悪くなるってもんだ。
と、アギュはワームを指で突つこうとした。
「何すんだ!」僕は跳ね起きた。「やめろよ!やっと寝たのに!」
アギュがワームに触れることができたのに僕は驚いた。
「僕のワームに勝手に触るな!」
「かわいいなあ~」
僕は耳を疑った。アギュはニコニコしていた。気持ち悪う。
んにゃ? その時、ドラコが身じろぎした。
「わ!目を覚ました!小っさいなー小さいのに小さい目と口がちゃんとある!」
アギュは馬鹿みたいなことをしきりに感心しながら叫んだ。
「あのなぁ」うっぜいよ、お前!
「この黒くてはっきりしてるのが三次元の目かあ?後の8つは複眼だな。」
「まだ仕組みがよくわかってないんだよ。」僕はしぶしぶ教えた。
「ワームホールとか異次元に対応してるらしいけどさ」」
「へへーっ」お進化様は間抜けな返事をしつつ、隙をみてドラコの首の下をすばやく掻いた。
「おい!そこ!見たぞ!」ドラコは目をパチパチしていたが しゃわっ・・にゃ? と初めて声らしきものを発し、慌てて僕の中に隠れた。
「おびえたじゃないか!」でも僕は他のことを考えてた。
「良かったじゃん。初めてしゃべって。オレのおかげで。」
又、読まれてる!むむむっ、ちっくしょう!どうしてくれよう!
身もだえする僕をほっといてアギュはさらに僕のベッドに身を乗りだしてきた。
「バラキはごつくて可愛げなくて、オレに触らせてくれないんだ。
愛想がない、シドラそっくり。」
おいおい、近づき過ぎだろ。お前ってそっち系かよ?
「契約者でもないのにユウリは良くて、オレはダメなんて。ほら、出て来い!」
んにゃ~いにゃ~!「やめろって言ってんだろ!」僕は切れた。アギュの手が僕の脳の中に入るような感覚。ギョッとして思いきり突き飛ばしていた。
「嫌がってるだろが!」
「何すんだよ、キサマ!」
短い間にキミからキサマにまで。僕も出世したもんだ。
「オレにこんなことしてただで済むと思うなよ、ガンダルファ!」
あら、名前も知ってるじゃん。
「ただじゃないなら、おいくらぐらい?」僕が笑うとアギュは僕に掴みかかった!
なんと臨界進化さまが。でも、アギュは僕の敵でなかった。彼は小柄で痩せッぽっちだし、まだ両手で締め上げてぐいぐいする肉体があったからね。格闘技好きの僕に敵うもんか。
「ちくっしょう!ちっくしょう、キサマ」アギュは僕の下でジタバタした。
「キサマなんか、大ッ嫌いだ!死んじゃえ、バカ、アホ!」
小学生並みの罵倒。きゃは、おもしれえ~!十字固めでも、かけちゃうおっかな~?
その時、ドラゴンの契約により加勢しようと思ったのか、ドラコがポン!と僕の頭から飛び出した。んみゃ~っちゃっ! ドラコはプウと一瞬膨らんでから僕らに向かって、小さい炎を吐いた。「あちぃ!」僕も叫んだが、アギュも吠えた。
「被爆だ!被爆!オレ被爆した!」
アギュはベッドの下に転がり落ちるとギャーギャーわめいて、姿が消えた。どうやら部屋に帰ったらしい?アギュはその気になればこんな学校の安普請な内装なんかいくらでもすり抜けられるって噂だし。僕は心配しなかった。
「それより、すごいぜ!お前!」にゃ~にょ~! 威張るワームの姿。
ちょっと可愛いかも?と僕も認める。
(あの時、ガンちゃん初めて褒めてくれたのにょ)
なんせこれが二人の初めての共同ミッションだったんだもんな。あの時のアギュときたら、ププッ。今も笑える。あ、でも、あの後、ドラコ少しだけ大きくならなかった?。金魚が錦鯉になったぐらいだけどさ。
(成長したんにょ。ワームの成長はランダムにょ)あんなことで?
(何事も経験値なのにゃ)うん、確かに。それは言えるな。
これがまあ、臨界進化体アギュレギオンとの初の謁見ってわけなんだけど。
僕も子供だが、アギュもどっこいどっこいだよね。ちょとガッカリした?。もっとかっこよかったら良かったのかな。ごめん、ありのままで。
(親しみがもてるにゃ?)もてるかなー?
アギュ
ドラコが産れてしばらく、僕は子育てに専念していた。研究所からたくさん人が来たりして、検体としての僕も大忙しだった。ワームミルクと呼ばれるアドレナリンの一種の科学物質を電気エネルギーに変換したものを脳に注ぎ込まれたり、僕自身も精神を安定させるものやら免疫を上げるものやら、もうやめて~ってぐらいの慌ただしさ。卵が憑いた男として僕は有名人?になりつつあった。とどめになんだか嫌みな教官がやって来て、僕が特別クラスに入ることになったと告げたわけだ。
最初に横たわる僕の目に入ったのは銀の指輪だった。間接が弱いニュートロンは指を保護する為にリングを付けていることが多い。その指輪は他のリングより一回り大きく重そうで、保護と言うよりは装飾的な感じがした。流星をかたどっている紋章が取り巻いている。
遊民の有名な一族のものだ。渋い重力のある声が振ってきた。
「あのアギュレギオンと一緒に学べるなんて大変名誉なことである。感謝するがいい。」
「はあ。」僕はちょっと努力してそう答えた。なんとか、顔を上向ける。
教官は不満そうだったが、僕にとっては別にーって感じだった。
あ、でもユウリと一緒に学べるのか。そいつはクラス担任のケフェウスだと名乗った。
その教官は困ったことになかなか帰ってくれず、しまいにはワームがこの目で見たいと言いだした。年配の担任は銀髪を丁寧になで付け、グレイに金の縦縞が入った不思議な瞳をしていた。その爬虫類のような目の所為か、ニュートロン特有の仮面のような表情と相まってどうしても、酷薄な感じがしてしまう。妙に犬歯が出てるように見える、後ろに長い特徴的な頭蓋骨の形はニュートロンの中でも特にカバナ人種出身者特有のものであったのだが、その頃の僕はそんなことですらなんにも知らなかった。
そんな無表情で、どうやったら自分にもワームが見えるようになるか、僕になんとかしろ的事をしつこく言われても困るばかりだ。
終いには僕そっちのけで、後ろの方に控える数人の助手に何か工夫はないかとか言い出した。僕は首を向けるのもたるいから、横になって話を聞いているしかなかった。
そいつらの一人が僕ごと次元レーダーに、つまりとっても強力な電磁波に掛けることとか言い出した時は、あやうく癇癪を起こすところだった。
そんなことしたら僕が死ぬってーの。やりかねなかったので気が気でない。抗議しようと口を開きかける。
「所長の許可が必要ですから、それは無理でしょう。」
僕の代わりに誰かが言ってくれたので感謝する。
その声はニュートロンらしくない、原始星の訛りがあった。
やはり頼りになるのは同じ原始星同志やね。僕は命の恩人を一目見たかったが、首を動かすと眩暈がしたのでやめた。
「生まれたてのワームなら、抵抗が弱いから視覚化ができるのでは?」
「ワームも死ぬ公算が強いですね。」若い声にやんわりなだめられるしつこいオヤジ。
「ふむ。」
教官はおあずけを食ったエサを見るように僕をしばらく眺め・・そして、やっとあきらめたので、僕は心底ほっとした。
「僕のほかにもジュラからの生徒はいるんじゃないですか?」
僕は思いきって声を出した。そいつに見せてもらえばいいだろ、あーん?。
ようするに、シドラ・シデンのことを聞いてみたわけだ。
教官は露骨に顔をしかめた。それが返事だった。シドラは彼に全然、好かれてなさそう。
まあ、僕も好かれなくてもまったく構わないかもね。
教官が帰った後、僕は目を閉じて考えていた。ドラコが意識の片隅で寝ているのが確認できた。不思議な感覚。まだ完全には慣れてはいなかった。
その時、目の前がぼんやりと明るくなるのを感じた。。
「キミ・・・」かすれた声。ワームにしては変。
僕は目を開けて、仰天した。
目の前にいたのはアギュだった。
「わ!ビックリした!」
いつ、来たんだ?なぜここに?僕、混乱。
「キミさ、」アギュはむせた。
「わっ、汚ね!」思わず僕はのけぞった。
「なんだよ!せっかく、話しかけてやってんのに!このオレが!」
アギュはブリブリ怒った。怒ったら、青い火の玉の中の顔の回りだけ真っ赤になった。
瞳の輪郭だけが極端に青い。初めてマジカに見てしまった。
「声帯が薄くなってんだよ、オレは!知ってるだろ?」
知らないとは言わせないとその目が言っていた。でも知らん、そんなの。
アギュの声は少し耳障りだった。その辺、ドラコと似たり寄ったり。
(にょにょ?)まあまあ。
「ユウリから聞いたんだけど。」
それで僕にはすべてが理解できた。こいつもワーム見物なわけ?
アギュはマジマジと僕の頭の辺りを見ていた。
「お前、ワームが見えるの?」
「誰にものを言ってるんだ?」そう言いながらも熱心に覗き込もうと近づいて来た。
「アギュさま、臨界進化さまに。」僕は少し身体を引いた。
「失礼な奴だな。ケフェウスなんてオレが直接、話かけでもしたらチビらんばかりなのに」
「そりゃ、躾がなってないのさ。」僕だってあの教官は嫌いだけど。
「フーン。」アギュは初めて僕をちゃんと見た。
「それってアイツ?、それともオレ?」アギュの思考は早かった。
「ユウリが言ってた面白い奴ってこっち?。」何?ユウリが何だって?
「オマエもユウリが好きなんか」アギュはニヤニヤした。
「おい!人の考えを読むなよ!違反だぞ!」僕、激怒。慌ててできる限りの思考バリアー。
「オマエが悪いんだ。無防備で。オレからすると単純馬鹿過ぎ。」
アギュの全身を覆う光が僕に触れていた。熱くも寒くもない。ウールの毛先が触れてるように包み込まれる。光なのに触感があるなんて。しかも認めたくないが心地よい。
「どうした?臨界進化サマって呼ぶんだろ?」
「誰が呼ぶか!」
「そう呼ぶ奴が一番多いな。まあ当然?」アギュは視線を再びワームに戻した。
「嫌なら好きに呼んでいいぞ。オレが許してやる。」
「ありがたすぎて反吐が出ますこと」こいつには本音を下手に隠しても仕方がない。
「変な奴。卵でワームが授かるだけのことはある。ジュラの人間は皆こうなのか。」
シドラ・シデンに似てるってか。うーん、それはちょと。
でも。お追従や媚びへつらいがこいつにはみんなわかるってことか。そりゃ、性格も悪くなるってもんだ。
と、アギュはワームを指で突つこうとした。
「何すんだ!」僕は跳ね起きた。「やめろよ!やっと寝たのに!」
アギュがワームに触れることができたのに僕は驚いた。
「僕のワームに勝手に触るな!」
「かわいいなあ~」
僕は耳を疑った。アギュはニコニコしていた。気持ち悪う。
んにゃ? その時、ドラコが身じろぎした。
「わ!目を覚ました!小っさいなー小さいのに小さい目と口がちゃんとある!」
アギュは馬鹿みたいなことをしきりに感心しながら叫んだ。
「あのなぁ」うっぜいよ、お前!
「この黒くてはっきりしてるのが三次元の目かあ?後の8つは複眼だな。」
「まだ仕組みがよくわかってないんだよ。」僕はしぶしぶ教えた。
「ワームホールとか異次元に対応してるらしいけどさ」」
「へへーっ」お進化様は間抜けな返事をしつつ、隙をみてドラコの首の下をすばやく掻いた。
「おい!そこ!見たぞ!」ドラコは目をパチパチしていたが しゃわっ・・にゃ? と初めて声らしきものを発し、慌てて僕の中に隠れた。
「おびえたじゃないか!」でも僕は他のことを考えてた。
「良かったじゃん。初めてしゃべって。オレのおかげで。」
又、読まれてる!むむむっ、ちっくしょう!どうしてくれよう!
身もだえする僕をほっといてアギュはさらに僕のベッドに身を乗りだしてきた。
「バラキはごつくて可愛げなくて、オレに触らせてくれないんだ。
愛想がない、シドラそっくり。」
おいおい、近づき過ぎだろ。お前ってそっち系かよ?
「契約者でもないのにユウリは良くて、オレはダメなんて。ほら、出て来い!」
んにゃ~いにゃ~!「やめろって言ってんだろ!」僕は切れた。アギュの手が僕の脳の中に入るような感覚。ギョッとして思いきり突き飛ばしていた。
「嫌がってるだろが!」
「何すんだよ、キサマ!」
短い間にキミからキサマにまで。僕も出世したもんだ。
「オレにこんなことしてただで済むと思うなよ、ガンダルファ!」
あら、名前も知ってるじゃん。
「ただじゃないなら、おいくらぐらい?」僕が笑うとアギュは僕に掴みかかった!
なんと臨界進化さまが。でも、アギュは僕の敵でなかった。彼は小柄で痩せッぽっちだし、まだ両手で締め上げてぐいぐいする肉体があったからね。格闘技好きの僕に敵うもんか。
「ちくっしょう!ちっくしょう、キサマ」アギュは僕の下でジタバタした。
「キサマなんか、大ッ嫌いだ!死んじゃえ、バカ、アホ!」
小学生並みの罵倒。きゃは、おもしれえ~!十字固めでも、かけちゃうおっかな~?
その時、ドラゴンの契約により加勢しようと思ったのか、ドラコがポン!と僕の頭から飛び出した。んみゃ~っちゃっ! ドラコはプウと一瞬膨らんでから僕らに向かって、小さい炎を吐いた。「あちぃ!」僕も叫んだが、アギュも吠えた。
「被爆だ!被爆!オレ被爆した!」
アギュはベッドの下に転がり落ちるとギャーギャーわめいて、姿が消えた。どうやら部屋に帰ったらしい?アギュはその気になればこんな学校の安普請な内装なんかいくらでもすり抜けられるって噂だし。僕は心配しなかった。
「それより、すごいぜ!お前!」にゃ~にょ~! 威張るワームの姿。
ちょっと可愛いかも?と僕も認める。
(あの時、ガンちゃん初めて褒めてくれたのにょ)
なんせこれが二人の初めての共同ミッションだったんだもんな。あの時のアギュときたら、ププッ。今も笑える。あ、でも、あの後、ドラコ少しだけ大きくならなかった?。金魚が錦鯉になったぐらいだけどさ。
(成長したんにょ。ワームの成長はランダムにょ)あんなことで?
(何事も経験値なのにゃ)うん、確かに。それは言えるな。
これがまあ、臨界進化体アギュレギオンとの初の謁見ってわけなんだけど。
僕も子供だが、アギュもどっこいどっこいだよね。ちょとガッカリした?。もっとかっこよかったら良かったのかな。ごめん、ありのままで。
(親しみがもてるにゃ?)もてるかなー?