SENTIMENTAL JAZZ DIARY

感傷的ジャズ日記 ~私のアルバムコレクションから~

Gene Ammons 「Boss Tenor」

2007年02月05日 | Tenor Saxophone

闇の彼方から響いてくるようなサックス。普段は豪快な男がふっと見せる優しさに心惹かれる。男はこうでなくては、と思わせる。ボス・テナーとは言い得て妙だ。
お薦めは「HITTIN' THE JUG」「MY ROMANCE」。こんな優しさは他の誰にもまねできない表現だ。
ただそんな風に書くと、全体を通してやたらとマイナーな雰囲気なのかと思われるかもしれないが、実際はずいぶんリラックスした演奏に聞こえる。おそらく随所にパーカッション(コンガ)が入っているせいだろう。

控え目なバックがまたいい。トミー・フラナガンのピアノは常に的を得ているし、アート・テイラーのドラムも正確だ。ベースはまたまたダグ・ワトキンス。安心して聴いていられる。
ワン・ホーンをじっくり味わえるスウィート&ビター?なアルバムだ。




ALAN PASQUA 「Body and Soul」

2007年02月03日 | Piano/keyboard

これはもう私の中のマスターピース! 一頃は毎日のように聴いていた。
こんなに静かで美しく感動的なピアノトリオも少ない。他に対抗馬を挙げるとしたらトルド・グスタフセンくらいか。
特に後半の、青い影~ボディ・アンド・ソウル~ウィチタ・ラインマン~スマイル、までの4曲は絶品だ。この中でも1曲を選べといわれれば、ウィチタ・ラインマンにとどめを刺す。

ウィチタ・ラインマンとは、1969年にジミー・ウェッブが作詞作曲をしてグレン・キャンベルが歌い大ヒットした曲である。最近ではカサンドラ・ウィルソンも歌っているようなのでこちらも聴いてみたい。
青い影もプロコル・ハルムが歌って大ヒットした60年代ロックの代表曲だ(原曲はバッハ)。タイトルだけじゃどんな曲かわからないかもしれないが、聴いてみれば「ああ、この曲ね~」とほとんどの方がわかるはずだ。
というようにこのアルバム、選曲だってなかなかのものだ。

ドラムのピーター・アースキンもすばらしいサポートをしているのでますます聴く価値有り。
このアルバムのお陰で、それ以前のアラン・パスクァのアルバムもほとんど集めてしまった。でもやっぱりこのアルバムが最高!

DOUG WATKINS 「AT LARGE」

2007年02月03日 | Bass

ダグ・ワトキンス。
あのソニー・ロリンズのサキソフォン・コロッサスでベースを弾いていた人といえば、誰でも頷いてくれると思う。
ただ残念ながら彼もまた27歳という若さで亡くなってしまった。どうやら交通事故のようだ。
当時のことだから交通ルールも徹底していなければ、シートベルトもしていなかったに違いない。きっと今なら助かっていたかもしれないなどと考えてしまう。ただせめてポール・チェンバースくらいの年まで生きていてくれたら、彼もまた偉大なベーシストになったはずである。

さてこのアルバム、一時は「幻の名盤」の最たるものだったらしい。それもそのはず、わずか15枚というアルバムしか出さなかったトランジション・レーベルがつくったものだったからだ。こういう状況だとコレクターの目の色が変わる。何としても手に入れたいという思いが、このアルバムの価値を一層高めたのである。
もちろん演奏内容もいい。ベーシストのアルバムはとかくバランスが悪かったりもするが、ドナルド・バード、ハンク・モブレー、ケニー・バレル、デューク・ジョーダン、アート・テイラーといった当時の売れっ子たちが彼の下に集まり、熱気あるセッションを繰り広げている。

そこで改めてサキソフォン・コロッサスの最後を飾る「ブルー・セブン」を大音量で聴いてみよう。ダグ・ワトキンスのウォーキング・ベースが、いかにこのアルバム(サキソフォン・コロッサス)の価値を上げているかがわかるだろう。

BETTY BENNETT 「Nobody else but me」

2007年02月03日 | Vocal

ヴォーカルのアルバムも取り上げよう。
今日ご紹介するのはベティ・ベネットである。確かアンドレ・プレピンの奥様だった。ジャケットを見ておわかりの通り実にいい女で(美しい人などと書くよりこの方が相応しい)、アンドレ・プレピンも男前だったから、さぞかし周りが羨むカップルだっただろう。
このアルバムもショーティ・ロジャースとアンドレ・プレピンのアレンジとジャケットにも記されている。まぁウエストコーストジャズの歌姫といったところ。但し彼女の吹き込みは少なく、私が知っているのは本作と長いブランクのあとに発表された「The Song Is You」の2枚だけだ。

さらりとした歌い方は当時の白人女性歌手ならではのもので、重くて粘りけのある黒人歌手の「こってり力うどん」的な歌い方ではなく、「薄味な讃岐うどん」的味わいだ。でもこういう歌い方の方がどちらかというと好きだ。声が楽器になってしまうとヴォーカルアルバムではなくなってしまう。うまかろうがヘタであろうが、歌うその人の思いを共有したいというのが私の聴き方だ。

BUDDY DeFRANCO 「PRETTY MOODS」

2007年02月03日 | Clarinet/Oboe/Flute

クラリネットといえば真っ先に誰を思い出すだろう? ベニー・グッドマン? 北村英治? 私はバディ・デフランコだ。
特にこのアルバムは、デヴィッド・ストーン・マーチンのジャケットデザインと共に名作と断言できる。
一曲目のテンダリーもこのアルバムで好きになった曲だ。
昼下がりのまどろみの中にいるような雰囲気から一転して、イエスタディズでは疾走感溢れるテクニックを披露してくれる。
そのメリハリと安定感が彼の持ち味だ。

日本では彼の評価がイマイチ低いように思う。クラリネットというある種特異な楽器のせいかもしれない。トランペットやサックスのように往年の大スターが大勢使用した楽器ではないので、それもある意味うなずける。
ただ彼も間違いなくジャズ・ジャイアントの一人である。
風格がものをいう一枚。

COR BAKKER 「Warm Feelings」

2007年02月03日 | Piano/keyboard

コル・ベッカー?、知らない名だ。どうやらオランダのピアニストのようだ。
とあるショップでこのCDを見つけ、表裏をひっくり返しながら多少迷いつつ購入を決めた。
このジャケットが決め手だった(....というかそれしか判断材料がなかった)。何となく品のいい良質なジャズを聴かせてくれそうな気がしたからだ。こういう買い方をよくするが、これまであまり失敗したことがない。
家に帰ってきて一通り聴き、思っていた通りの内容だったことに満足した。何のサプライズもない分多少の物足りなさもあったが、世紀の大名盤ならショップの片隅でこんなにひっそりしている筈もないので、当然といえば当然のことである。

内容はというと、ずいぶんクラシックを意識した静かなピアノトリオである。ウォルター・ラングやエリオット・スティーガーなどを好んで聴く人ならすんなり受け入れてくれると思う。
ジャケットに写っているように彼の優しさがにじみ出たようなアルバムだ。
人を顔で判断してはいけないというが、人の性格は間違いなく顔に出てくるものだ。あなたも鏡を見ればわかる。

BILL RISBY 「STORIES」

2007年02月02日 | Piano/keyboard

何といっても最初の曲「When Photogen Met Nycteris」に惹かれる。
恥ずかしながらどうもこういった愁いを帯びたウェットなラテンの曲(タンゴ?)に弱い。
ただ作品の善し悪しは理屈ではない。どれだけ感情移入できるかどうかが、自分にとっての名盤になるかどうかの試金石になる。
そういう意味ではこのアルバムも私の中ではたいそうな名盤だ。

ビル・リスビーのこのアルバムはレア盤で紹介されることが多いが、最近ではずいぶん手に入れやすくなった。
彼のピアノは曲によってヘルゲ・リエン的であったり、ジャッキー・テラソン的であったりする。ただ個人的にはヘルゲ・リエン的な深くて静かなイメージの方が強いし、そちらの方が私の好みに近い。

このアルバムも時々取り出して聴いているが、ビル・リスビーという人、はっきりいって正体がわからない人だ。だからわかるまでこの人のアルバムは買い続けるかもしれない。それはそれで面白い。

JIM HALL 「CONCIERTO」

2007年02月01日 | Guiter

私の大好きなジャズ・ミュージシャンたちが一同に集まった長年の愛聴盤。
とにかくみんなの波長がピタリと合ったアルバムだといっていい。
遠くで歌を歌っているかのようなトランペットを吹くチェット・ベイカー、アルトで悲しくも美しいフレーズを随所で奏でるポール・デスモンド、硬く締まった小気味よいピアノを弾くローランド・ハナ、目立たないが堅実なベースはロン・カーター、力強く全体を支えるタイトなドラムを叩くスティーヴ・ガット、そして主役は地味ながらいつも暖かく正確無比なギターを弾くジム・ホール。
彼らが哀愁を帯びた「いにしえの都、アランフェス」に連れて行ってくれる。

このアルバムの成功は、何といってもプロデューサーのクリード・テイラーの手腕によるところが大きい。「商業的」といわれつつも時代の感性に合った作品づくりをモットーとしてきた彼は、常に良質の音楽を作り出してきた。

まだ聴いたことのない方がいたら、騙されたと思って買うべし。あまのじゃく以外は感動するはずだ。

HERBIE MANN 「Love and the weather」

2007年02月01日 | Clarinet/Oboe/Flute

これはもう何が何でも欲しかったアルバム。しかもLP版で。
ちょっと大袈裟に言えば「中にレコードが入ってなくてもいい」くらいの気持ちで買った。それくらいこのバート・ゴールドブラットによるジャケットアルバムは魅力的だし価値があると思う。

実際に中身の音はというと、ストリングスをバックにした古い映画音楽のようなムードが全編に漂っている。正直言って、これをジャズアルバムだと思って買った人はかなりがっかりくるはずだ。
それでもいい、このあま~い音楽を聴きながらこのジャケットを見ているだけで幸せだ。

IGNASI TERRAZA TRIO 「IN A SENTIMENTAL GROOVE」

2007年02月01日 | Piano/keyboard

このところは北欧ジャズばかり聴いていたが、このアルバムを手に入れて「どうしてどうして南欧ジャズもなかなかのものだ」と感じるようになった。このアルバムには全編スペインの爽やかな風が吹いている。とにかくリズムが明るい。明るいというか迷いがないという感じ。リズムが明るいと音が乾いて聞こえてくる。だから爽やかなのだ。

スペインというとチック・コリアのような民俗音楽から派生したジャズを連想する人も多いと思う。但しこれはその世界とはちょっと違う。北欧であれ南欧であれ、やっぱり洗練されたヨーロッパジャズには違いない。

タイトルだってそのものずばり。多分にセンチメンタルでいかした演奏だ。このブログタイトルもここからいただいた。
夜でなく昼下がりが似合う最近のお気に入り。