ウォレス・ルーニーはマイルスの後継者と言われる人だ。
確かにバリバリ吹いていた頃のマイルスによく似ている。これがどこかでかかっていたらほとんどの人がマイルスだと思うだろう。
音の伸び、ための利かせ方、曲のムード、どれもこれもマイルス流の硬派なストレートジャズである。
ここまでそっくりだとそれはそれで「オレはこの道を行くのだ」という信念のようなものを感じる。
バックだってそれに充分呼応している。
サックスを吹くゲイリー・トーマスやケニー・ギャレットはウェイン・ショーターのようだし、ピアノのマルグリュー・ミラーはハービー・ハンコックのようにキレがよく、注目の美人ドラマー、シンディ・ブラックマンにはトニー・ウィリアムスのような躍動感がある。唯一ベーシストには本家本元マイルスグループのメンバーだったロン・カーターを起用しており、全体をビシッときめている。
とにかくこのクインテットは真剣そのものだ。
演奏が前屈みになりグイグイと突っ込んでくる。まるで切れ味のいい鋭い刃物のようだ。
これは全編に渡って大活躍しているシンディ・ブラックマンのドラミングに寄るところも大きい。
そういえばこのシンディ・ブラックマンというアフロヘアーの女性、なかなかの才女である。
このアルバムにも2曲ほど曲を提供しており、これが両方ともいい出来映えだ。
彼女はレニー・クラヴィッツのバンドにも在籍しており、彼女をジャズドラマーだとは知らないファンも多いようだ。あの出で立ちで器用に何でもこなすからそれも頷けることではあるのだが。
話をウォレス・ルーニーに戻そう。
マイルスの音楽を受け継ごうとする彼のような人間がいてもいいとつくづく思う。マイルスだってきっと草葉の陰で喜んでいるに違いない。ルーニーを通じて自分のことも再認識してもらえるからだ。
こうやって先人の精神が次世代に受け継がれていく。これでいいのだ。