SENTIMENTAL JAZZ DIARY

感傷的ジャズ日記 ~私のアルバムコレクションから~

FRANK ROSOLINO 「Frank Rosolino Quintet」

2009年11月01日 | Trombone

ジャケットのイラストが何となくクラーク・ゲーブルのようだ。
ただ私が持っているこの人の印象は、そんな二枚目俳優ではなく、人気コメディ役者に近い。
いくつかのジャケットから判断して、彼は西海岸の太陽のように明るく、人なつっこい性格のように見える。
だからというわけでもないのだが、私はこのフランク・ロソリーノのアルバムを結構買い集めた。
ウエストコーストジャズが好きだったということと、何より溌剌としたキレのいい音を出すトロンボーン奏者として気に入っていたからだ。
彼のアルバムを好きな順で並べると、
1「Fond Memories Of...」
2「Frankly Speaking!」
3「The Frank Rosolino Sextet」とこの「Frank Rosolino Quintet」
っていう感じになる。
だったら一番気に入っている「Fond Memories Of...」を紹介しろよ、といわれそうだが、この作品はジャケットがひどいのだ。ジャケットの写真を出した時点で、とてもいい内容には感じてもらえそうもないのでやめた。
「Frankly Speaking!」や「The Frank Rosolino Sextet」のジャケットも風格に欠ける(このゆるいキャラが好きだっていう人も多いようだが)。
ということで今回は「Frank Rosolino Quintet」をご紹介することにしたのである。

このアルバムはビル・ホルマンのアレンジの下、リッチー・カミューカとの掛け合いが聞きものだ。
カミューカの名盤「West Coast Jazz in Hi Fi」もこの組み合わせだったが、これはその約1年前の録音である(1957年)。
眩しいくらいの日差しと暖かさを感じるという点においても共通している。
これはウエストコーストジャズの中でも、群を抜いているコンビのように感じるのは私だけだろうか。
この浮き立つようなリズムと若々しいスイング感に魅せられて、一頃は毎日のように聴いていた。
ひょっとしたら私の中でトロンボーンの魅力を一気に引き上げてくれたのが、このフランク・ロソリーノだったのかもしれない。
類い希なテクニシャンでありながら、それをひけらかすことなく、実に人間味あふれるプレイをした。
一言でいえば、それが彼なのだ。





SLIDING HAMMERS「Sings」

2009年06月21日 | Trombone

歌は決して上手くない。
わざと下手に歌ってるような気さえする。
でもムードは満点。聴かせ方・酔わせ方の勝利だと思う。
とにかく細かいことは言わないで、雰囲気で聴く一枚なのだ。

ミミ・ハマーとカリン・ハマーのこのトロンボーン姉妹は、今巷で大人気である。
いつもはダブル・トロンボーンで聴かせているのだが、今回はちょっと違った。
ミミ・ハマーの手にはトロンボーンではなく、マイクが握られている。つまり今回は全曲ヴォーカルに専念しているというわけだ。
お得意のトロンボーンはカリン・ハマーだけが担当しており、全体にしっとりと仕上がった。
遠くで谺のように響くトロンボーンと、耳元で囁くようなヴォーカルの対比にうっとりしてしまう。

いいのはこの2人だけではなく、ピアノにマティアス・アルゴットソンを起用している点にもある。
このマティアス・アルゴットソンは以前にもこのブログでご紹介したが、やはりただ者ではなかった。
歌の合間に入る短いフレーズが実に品がよく、全体をいい感じにスウィングさせている。

2曲目にビートルズの「Eleanor Rigby」を演っている。
私はビートルズのカヴァー曲は総じて好きではない。
しかしこれは例外的にいい。
ミミ・ハマーはやや押さえた歌い方で曲のムードを盛り上げているし、カリン・ハマーのトロンボーンも実に力強い。

聴いていると幸せになれる、これはそんなアルバムだ。

JULIAN PRIESTER 「Keep Swingin'」

2009年06月06日 | Trombone

隠れた名盤として長年に渡って珍重されてきた作品である。
私は古いジャズも新しいジャズも分け隔てなく聴きあさっているが、どちらかといわれれば古いジャズが好きだ。
新しいジャズは、総じて手に入れた一定期間しか聴かず棚の中に眠ってしまう場合が多い。
しかし古いジャズは幾度となくターンテーブルに乗せられる。
まぁ、何百、何千というレコードの中から生き残ったアルバムだからそれも当然ではあるのだが...。

このアルバムなんかはヘビー・ローテーションの典型例だ。
まず出だしがいい。
サム・ジョーンズのクールなベースソロでスタートする「24-Hour Leave」が、まさに隠れたハードバップの名曲だ。
エルヴィン・ジョーンズの叩き出すリズムに乗って、息のあった演奏が繰り広げられる。
続く「The End」「1239A」「Just Friends」「Bob T's Blues」も文句なしに楽しい。
ジュリアン・プリースターのトロンボーンは夜空に向かって高らかに鳴り響く感じだし、名作には必ず登場するトミー・フラナガン(p)も絶好調だ。
またジミー・ヒースのテナーもトロンボーンとの対比がうまくなされており、気持ちいい音色を響かせている。

それにしてもトロンボーンは不思議な楽器だ。
ワン・ホーンで歌い上げるととても暖かみがありほのぼのとしてくるのだが、ひとたびテナーとハーモニーを奏でると、緊張感が高まってハードボイルドな雰囲気をつくり出す。コルトレーンの「ブルートレイン」なんかをイメージしてくれればわかると思う。
このアルバムではその両方が楽しめる。
それもそのはず、ジミー・ヒースは8曲中5曲でしか参加しておらず、それ以外はジュリアン・プリースターのワン・ホーン作品なのだ。
結果的に厚みのある作品に仕上がった。
通好みの作品である。


VIC DICKENSON 「SHOWCASE」

2009年01月10日 | Trombone

これほど長年にわたって愛着が持てたアルバムも見当たらない。
これは中間派ジャズの最高傑作というばかりではなく、ジャンルを超えて、「これぞジャズ!」といえるような名作である。
このアルバムはもちろんCDでも出されてはいるが、タイトルは「The Essential Vic Dickenson」となっており、2枚組レコードの中からチョイスした曲を1枚に構成し直したものになっている。
ただ私の好きな「When You And I Were Young, Maggie」がCDには入っていない。
2枚組では売れないと判断したのかもしれないが、なぜそんな破廉恥なことをするのかわからない。もっと敬意を払ってオリジナルのまま出してほしかった。それくらいこの作品は重要であり、タイトルは絶対に「ショウケース」でなければいけないのだ。

では久しぶりに油井正一さんの解説を読みながら聴いてみる。
冒頭を飾る「Russian Lullaby」だけ、その雰囲気を表現できる範囲でお伝えしようと思う。
最初に聞こえる短いイントロが終わると、もの悲しいエドモント・ホールのクラリネットがメロディを奏で始める。そしてそのメロディはサー・チャールス・トンプソンによる魅力的なピアノソロへと受け継がれ、いよいよリーダーであるヴィック・ディッケンソンが登場する。
彼のトロンボーンはまるでささやきかけるような響きで歌い出し、だんだんとその声が大きくなっていく。この辺りの組み立ては実に見事である。
その後、エドモント・ホールが再度登場しスインギーなソロを聴かせると、抜けのいいルビー・ブラフのトランペットがその後に続いていく。
そしてラストの短いアンサンブルで一気に感動が沸き上がる。このジャム・セッション的なエンディングにはいつも泣かされる。

このアルバムはもちろんヴィック・ディッケンソンのリーダーアルバムではあるが、一番の聴き所は各プレイヤー一期一会の掛け合いにあり、そこにとてつもない人間臭さを感じるのである。
人間臭さといえば、ヴィック・ディッケンソンのトロンボーンほど肉声に近い音はないと思う。
まるで下町に住むだみ声の親父が、常連客を呼び込んでいるように聞こえる。
そうだ、この作品は「ALWAYS 三丁目の夕日」のようななつかしさと感動をもらえる作品だというと、ある程度わかってもらえるかもしれない。
「え? そんな日本の通俗的なものと一緒にするな?」....はい、すいません。



JIMMY KNEPPER 「A Swinging Introduction」

2008年04月15日 | Trombone

ジャケットに問題があると思う。
どういう意味で問題があるかといえば、中身のほのぼのした優しさや楽しさを全く伝えきれていないからだ。
このジャケットだけ見たら、もっとシリアスでハードボイルドな演奏を連想してしまう。
それもそのはず、ここに写っているジミー・ネッパーという人は見るからに怖い。写真が暗い上にモノクロだから余計にその怖さが強調されてしまう。
せめてタバコなんかくわえてなけりゃいいのにと思う。
これじゃあ、「とにかくいいから聴いてみて」と初めての人には差し出しにくい。残念至極である。

先日私の家でジャズを聴く会を催した。
何のことはない、ジャズが好きな人が集まって持ち寄ったCDなどを聴きながら飲むという単純な会である。
その中の一人が「トロンボーンには興味がないなぁ」と呟いた。
この人はもっぱらサックスかピアノトリオ専門のようだ。彼にいわせると「トロンボーンのモコモコした感じの音が野暮ったい」ということらしい。
何となくわかる気もするが、ここは反論しなければ気が済まない。
しばらく数人ですったもんだの議論が続いたが、よくよく彼の話を聞いてみるとトロンボーンに関してはどうやら食わず嫌いだということがわかった。
とはいっても一度嫌いになったものは理屈で簡単に回復は出来そうにない。彼のイメージを払拭させるためにもここはいいものを聴かせるに限る。
で、考えたあげく取り出したのがこのアルバムである。
1曲目から順に聴いていって4曲目の「HOW HIGH THE MOON」あたりで彼の様子が変わってきた。知っているメロディが出てくるとやはり嬉しいらしい。但しここではアルトのジーン・クイルやピアノのビル・エヴァンスのソロに惹かれていたようだ。
続く5曲目の「GEE BABY AIN’T I GOOD TO YOU」。
優しいトロンボーンの音色が部屋中に充満する。そしてジーン・ローランド(tp)の意表を突くヴォーカルが登場すると「お、いいね~!」ときた。その後の各プレイヤーのソロも見事に決まっていることに全員拍手喝采。
ヴォーカルに反応するとは予想外だったが、結果的にはうまくいったわけだ。

それ以後私も調子に乗ってヴィック・ディッケンソンなどをかけてみたが、こちらは残念ながら空振りだった。
「こういう古くさいのも、たまに聴くにはいいけどねぇ~」だそうだ。
う~む、今度は中間派のよさをわかる人とじっくり飲みたいものだ。


KAI WINDING 「THE INCREDIBLE KAI WINDING TROMBONES」

2008年03月05日 | Trombone

ターンテーブルに乗せる回数の多いアルバムだ。
その要因はいくつかあるが、その一つは1曲目「SPEAK LOW」のボブ・クランショーによるランニングベースである。これがまた快感この上なしなのだ。これがジャズの醍醐味である。このベースとオラトゥンジによる魅惑的なコンガのお陰で、カイ・ウィンディングのトロンボーンも快調に突っ走る。いやいや、なかなかの出来である。
ついでに他の曲も全部ご紹介しよう。
2曲目は打って変わってスローなナンバーになり、全体をアンニュイな雰囲気が包み込む。このギャップがウィンディングらしい。曲は「Lil' Darlin'」。カウント・ベイシーお得意の曲だ。
3曲目では彼のたくましい吹奏が存分に聴ける。曲はブルースフィーリング溢れる「Doodlin'」である。続く4曲目の「Love Walked In」共々、ピアノを弾くロス・トンプキンスの出来がすこぶるいい、これには脱帽だ。
5曲目「Mangos」はマンボのリズムに乗ってダンサブルな演奏が続く。好き嫌いはともかく、ある意味この曲がハイライトかもしれない。
6曲目はハイスピード演奏の「Impulse」。ここでの吹奏はJ.J・ジョンソンを彷彿とさせるが、ウィンディングのそれはどこか人間的だ。ロス・トンプキンスも相変わらず見事なソロをとっている。
7曲目は何と「Black Coffee」。そう、あのペギー・リーで有名になった曲である。ピアノはここからロス・トンプキンスに替わってビル・エヴァンスが登場してくる。エヴァンスはあまり目立たないが一音一音に品格を感じる。ここから先はエヴァンスが参加しているということで話題性も高くなっているようだ。
8曲目はお馴染み「Bye Bye Blackbird」。聞き慣れたメロディにも関わらず味わい深く入り込んでくる。エヴァンスの後でソロをとるのはジミー・ネッパーのようだが、明らかにウィンディングとは音色が違う。トロンボーンという楽器の奥ゆかしさも同時に味わえるのが嬉しい。
ラストはウィンディングが娘のために書いたという「Michie」のスローバーションとファースト・ヴァージョンが続けて吹き込まれている。どちらも甲乙つけがたいナイスな演奏だ。エヴァンスのソロもすばらしい。

全曲聴き終えても尚、最初から聴き直したい欲求に駆られることしばしばだ。
カイ・ウィンディング、彼は白人最高のトロンボーン奏者だ。

BOB BROOKMEYER 「AND FRIENDS」

2008年01月09日 | Trombone

夕焼けに染まる海辺のテラスなんかで聴いたら最高だろうなぁ、といつも思ってしまう。
とにかくメンバー全員が心に染み渡る演奏を行っている。

このアルバムは1965年の作品で、リーダーはボブ・ブルックマイヤー(tb)、そして彼の友人としてスタン・ゲッツ(ts)、ゲイリー・バートン(vib)、ハービー・ハンコック(p)、ロン・カーター(b)、エルヴィン・ジョーンズ(ds)らが迎え入れられている。
それぞれがリラックスムードで演奏しているのに、全員の息がぴったり合っているのはやはり実力者揃いだからだ。
特にスタン・ゲッツのテナーとエルヴィン・ジョーンズのドラムスが飛び抜けていい。
ゲッツのテナーは優しい男らしさに溢れている。
2曲目の「Misty」、5曲目の「Skylark」、7曲目の「I've Grown Accustomed To Her Face」なんかは何度聴いてもたまらない。夕焼けの空がブルックマイヤーのトロンボーンだとすると、潮騒がジョーンズのブラシ、吹き抜ける南風がゲッツのテナーだ。
そこに若々しさを感じるバートンやハンコックが絡んでいく。カーターのベースも強靱ですこぶる気持ちがいい。

ボブ・ブルックマイヤーとスタン・ゲッツは何度も一緒に演奏してきた所謂旧友である。
この二人の良好な関係がこの作品の中でもうまく生かされている。要するにこれは二人のリーダーアルバムといっても何ら差し支えない内容なのだ。
当時のゲッツはボサノヴァで大人気を博していた頃だけに、いかにも脂ののりきった感がある。ブルックマイヤーには申し訳ないがゲッツを聴くためだけに買っても損はしない。
とにもかくにもこの作品は、私にとって一服の清涼剤的なアルバムなのだ。

J.J.JOHNSON 「DIAL J.J.5」

2007年12月01日 | Trombone

全体にバランスのいい作品だといえる。
J.J.ジョンソンは、オレが主役だからといって決して大いばりしない。トロンボーンという楽器のせいかもしれないが、彼はむしろ他のメンバーの良さを引き立て完成度の高い作品に仕上げているのだ。
私が特に好きなのは5曲目「BLUE HAZE」以降の曲の配置である。
「BLUE HAZE」はマイルス・デイヴィスの作品で、いかにもマイルスらしいハードボイルドな仕上がりになっている。
J.Jはマイルスの替わりにトロンボーンを吹く。彼のトロンボーンがトランペットのように聞こえるのは彼の技量の高さもさることながら、トロンボーンをテナーと対等に渡り合えるクールな楽器にしたかったからだと思う。ここでの演奏を聴くとそれは見事に達成されていることがわかる。
しかし私は続く「LOVE IS HERE TO STAY」の音を聴いて安心する。トロンボーンがトロンボーンらしい音色で優しく響いているからだ。彼は挑戦的である反面、こういう歌心を忘れない人なのだ。
続く「SO SORRY PLEASE」はJ.J.抜きのピアノトリオになっている。このトリオを聴くことができるのもこのアルバムのもう一つの楽しみである。メンバーはトミー・フラナガン、ウィルバー・リトル、エルヴィン・ジョーンズだ。そう、この作品を録り終えたすぐ後にトミフラの名作「オーバー・シーズ」が生まれたのである。このトリオがリズム・セクションを形成しているのだからこの「DIAL J.J.5」が悪かろうはずがないのである。
そして続く「IT COULD HAPPEN TO YOU」では、これまたJ.J.抜きでボビー・ジャスパーのフルートが全編に渡ってフューチャーされている。トミフラの軽快なピアノに乗ったこのフルートの美しさはどうだ。思わずため息が出る。
そして「BIRD SONG」とラストの「OLD DEVIL MOON」になだれ込む。
ここでJ.J.が本領を発揮。「OLD DEVIL MOON」なんかは正にJ.J.のために書かれたようなメロディだと思わずにはいられない。彼にしか出せない音が確実にここに収録されている。

ジャズ通にはトロンボーンファンが多い。ニューオーリンズ時代からの花形だからだ。
しかしモダンジャズの時代になって急速にその出番が少なくなっていった。その理由を書いていると長くなるのでやめるが、J.J.はトロンボーンがモダンジャズの世界にもちゃんと通用する楽器であることを証明してくれた。彼の功績はとてつもなく大きい。

NILS LANDGREN , ESBJORN SVENSSON 「LAYERS OF LIGHT」

2007年08月29日 | Trombone

あれ?トロンボーンってこんなに広がりのある音を出す楽器だったっけ?と初めて聴いた時に感じた。
ニルス・ラングレンがエフェクトをかけているわけではない。これがトロンボーン本来の音なのだろう。ただ私がこれまでにトロンボーンのワンホーンアルバムをあまり聴いてこなかったからそう思っただけなのだ。楽器の素の音とはこういうものかと感心しきりである。

このアルバムはスウェーデンの人気者2人が組んだデュオアルバムで、この作品の他にも「SWEDISH FOLK MODERN」というスウェーデン民謡を集めた作品も発表されている。どちらも北欧の美しい風景が目に浮かぶような演奏だ。
但し私が持っているこの「LAYERS OF LIGHT」はドイツ版なので、これが果たして日本で発売されているのかどうかはわからない。「SWEDISH FOLK MODERN」は間違いなく発売されているのだが。

彼らの音楽を聴くとイマジネーションが広がる。
このアルバムは、私にとって風の吹く草原のイメージだ。空は曇り空。遠くに海が見え僅かながら潮騒も聞こえる。時々鳥が低くたれ込めた雲の下を旋回している。
私はそこにぼんやりと立ち尽くしている。何にも考えていないし、私の他に誰もいない。そんな風景が目に浮かぶ。
この風景はやはり北欧なのかもしれない。以前スウェーデンにも行ったことがあるので、その時のイメージが頭の中に残っていても不思議ではない。とにかく置き去りにされたような孤独感がたまらなくいい。

エスビョルン・スヴェンソンのピアノは、ニルス・ラングレンの吹くトロンボーンの合間にあって実に効果的に響いてくる。彼のセンスの良さが滲み出た演奏だ。こんな演奏をするから彼をただ者ではないと思ってしまうのだ。
e.s.t.もいいが、彼のファンならこういったリリカルな側面も知るべきだろう。

SLIDE HAMPTON 「ALL STAR 69」

2007年04月14日 | Trombone

長い間「ファビュラス・スライド・ハンプトン・カルテット」は幻の名盤だった。
このアルバムは、ジャケットこそ原盤と違うが中身はそれと全く同じものである。

トロンボーンという楽器はどことなくのろまな印象がある楽器だ。にもかかわらず、このアルバムを聴けばそんな印象は木っ端微塵に吹き飛んでしまう。全員何かに取り憑かれたようなアグレッシブな演奏なのだ。特にヨアヒム・キューンは完全にキレている。唸り声を通り越してこれはもう狂人のスキャットだ。あまりいい例えではないが、便秘の悪化した人が長時間トイレの中で力んでいるような迫力?を感じる。
ベースのニールス・ペデルセンも、サヒブ・シハブのジャズ・パーティを彷彿とさせるブンブンベースで終始応戦。ドラムスのフィリー・ジョーも「ここは俺に任せておけ!」といわんばかりの叩きっぷり。とてもボリュームを最大にする勇気が出ない。

これが録音されたのは1969年。時代がこうしたアルバムを生んだのだ。
同じ頃にこちらもすごいフィル・ウッズ率いるヨーロピアン・リズムマシーンが大活躍している。ロック界を見てもビートルズが終焉を迎え、替わりにレッド・ツェッペリンやディープパープルなどのハードロックが誕生したのもこの頃だ。それと忘れられないのがウッドストックでジミヘンが「スター・スパングルド・バナー(星条旗よ永遠なれ)」を演奏したシーンであるが、あの映像は確実にこの時代を映し出していた。
一言でいうとみんなが葛藤していた時代なのだ。これは今の時代感覚で聴いてはいけない傑作だ。