結局このへんに落ちつくのである。
俗にいうジャズの有名盤を一通り買いあさって、一息ついた頃に出会う作品という意味だ。
この「BASH!」についてとことん語り合える友人がいたらいいなと思ってしまう。
これはそんな気にさせる愛すべき作品なのだ。
まずベン・タッカーによる大迫力のベースに酔ってしまう。
私にとっていいジャズであるかどうかは、ベースの善し悪しで決まる。
別にハイテクニックである必要はない。
思わず身体を揺らしたくなるようなリズムを、適確にしかも強靱に弾き出してくれればいいのである。
その点ここでのベン・タッカーは完璧だ。
全体を見事なまでに引き締めている。
特に「Osmosis」は必聴だ。これを聴いて痺れない人を私は信用しない。
次にフランク・ヘインズのテナーに全く畏れ入る。
彼はビッグネームではないが、ここでの彼を聞く限りどうしてもっと脚光を浴びないのか不思議なくらいだ。
「Grand Street」や「Osmosis」でのアドリヴはこれまた完璧である。
魂のこもった白熱のプレイを演じている。
彼の存在がこのアルバムのハイライトかもしれない。
ケニー・ドーハム、カーティス・フラーとのコンビネーションもいい。
そして名手トミー・フラナガンである。
軽快さにも程がある、といいたいくらいにこの時のトミフラは絶好調だ。
「Like Someone In Love」や「Just Friends」でのピアノプレイは、ベン・タッカーの重いベースとは全く対照的に風のような存在感が何とも心地いい。
この作品に品格を与えているのは他ならぬ彼である。
そしてリーダーのデイヴ・ベイリー。
彼のアルバムはどれも通好みであるが、堅実でそつがない。
ドラマー特有のアクも少ない。
いかに周りのみんなを気持ちよく演じさせるかに気を配っているようだ。
ドラマーのリーダー作とは思えないところに彼の凄さがあるといっていい。