ジャズの楽しさを存分に味わえる作品だ。
リラックスした「On The Sunny Side Of The Street」で始まるこのアルバムは、大御所ディジー・ガレスピーが二人のテナーマンを競い合わせ楽しんでいるという感じの仕上がりになっている。これはプロデューサーであるノーマン・グランツの仕掛けによる企画モノだが、ディジー・ガレスピーという圧倒的な存在を中心に据えることで成功した類い希な作品だといえる。
この作品の目玉は、何といっても2曲目の「The Eternal Triangle」である。
延々と続くソニー・ロリンズとソニー・スティットのテナーバトルは、ジャズ史に残る名演奏である。
とにかくアドリヴの凄さにおいては他に類がない。
どうしてそんな流れるようなフレーズが瞬時にして次から次へと思い浮かぶのか、シロウトの私にはとても理解できない。正直言ってこれは神業だ。
ロリンズは言うに及ばずという感じだが、驚くのはスティットの存在である。
ロリンズ全盛期のこの当時も、スティットはロリンズと対等に(或いはそれ以上に)競い合える腕の持ち主であったことを証明している。
ロリンズが絡んだテナーバトルでいえば、まず真っ先にアルバム「Tenor Madness」が思い浮かぶ。
ここではジョン・コルトレーンと一戦を交えるわけだが、この時は結果的に横綱と平幕力士くらいの差があって、コルトレーンはあえなく土俵の外に押し出されてしまった。しかしここでのロリンズとスティットは正に横綱同士の相星決戦だ。互いに土俵際まで追い込むも結局最後まで勝敗がつかない。そんな手に汗握る演奏なのだ。
因みにウェットで包み込むような音色を発しているのがロリンズ、ややささくれ立って渇いた音色を響かせているのがスティットだ。この微妙な違いを聴き取るのも楽しい。
続く「After Hours」ではレイ・ブライアントのブルージーなピアノを楽しめるし、ラストの「 I Know That You Know」においても3人の見事なアドリヴを聴くことができる。ガレスピーお得意のすさまじいハイトーンも聴き応え充分だ。
とにかくスカッ!としたい時にぴったりのアルバムである。ぜひ大音量で聴いてほしい。