SENTIMENTAL JAZZ DIARY

感傷的ジャズ日記 ~私のアルバムコレクションから~

JEROME RICHARDSON 「Roamin' With Richardson」

2011年08月13日 | Baritone & Soprano Saxophone

今年の夏は長い。
梅雨明けがやたらと早かったので、いつもの年の倍くらいの長さに感じる。
もともと夏は大好きな季節なのだが、このくらい暑い毎日が続くとさすがに参ってしまう。
でも元来天の邪鬼な性格なので、エアコンも夜はつけずほとんど扇風機で凌いでいる。
飲んでいるのも熱いお茶だ。ずずずっと啜りながら「ほ~」というため息をつく。こういうひととき、決して悪くない。
ついでに暑苦しいジャズを聴いてやろうという気になって取り出したのが、ジェローム・リチャードソンのローミンだ。
バリトンサックスの音はいかにも暑苦しいし、ジャケットも熱帯夜を絵にしたような暖色のダブルトーンだ。
今夜はこれでいく。

まず最初に飛び出すのがベースだ。
私はこれくらい自己主張の激しいゴリゴリしたベースを弾く人が好きだ。その名はジョージ・タッカー。
ホレス・パーランとの共演で通を唸らせた名ベーシストである。
このタッカーのことをデリカシーが足りないなどと散々なことをいう人がいるらしいが、このベースの楽しさを知らなけりゃ、ジャズを半分も楽しめないのではないかと思う。
とにかくジャズはベースが命と覚えておこう。
フニャフニャしたベースの下では、どんな名演も二級品化すること間違いなしだ。

ジェローム・リチャードソンという人はテナーも吹けばフルートも上手く吹く。
その点、彼はサヒブ・シハブにも通じるところがあるマルチリード奏者であるが、やっぱり本命はバリトンだ。
常に濁音を発するこの楽器を操るのは本当に難しいことなのではないかと思う。
しかしアップテンポの「Up At Teddy'S Hill」から一転して、「Warm Valley」のバラッドプレイに移行するあたりの流れは絶妙だ。
バリトン・サックスはこういう風に吹くんだ、とばかり自信に溢れている。
リチャード・ワイアンズが弾くピアノも控え目ながらいい味を出していることにも注目したい。

ただこのアルバムの中で一番好きな曲はと聞かれれば、ラストの「Candied Sweets」だと答えるかもしれない。
この曲でジェローム・リチャードソンはテナーを吹いているが、彼よりも気になる存在がドラムのチャーリー・パーシップである。
彼がスネアをスコーン!と叩くリムショットが実に快感だ。
要するにこのアルバム、全員がそれぞれの持ち味を存分に出し切っている類い希な作品なのである。

さて、お茶がなくなった。
継ぎ足しにいくので今夜はこれでおしまい。

BOB GORDON 「MEET MR.GORDON」

2010年01月01日 | Baritone & Soprano Saxophone

元旦早々、軽快なバリトンで楽しんでいる。
重低音が命のバリトンサックスから真っ青な空と海を感じることも少ないとは思うのだが、ボブ・ゴードンは別だ。
この明るさはジェリー・マリガンにも通じていて、ウエストコーストジャズの一番おいしい部分を匂わせる。
但しボブ・ゴードンのリーダーアルバムはこれ一枚しかない。
これは、天からわずか2年という短い活動時間しか与えられず、交通事故で27歳の生涯を閉じた若者の貴重な記録でもあるのだ。

1950年代のアメリカ西海岸といえば、リーゼントにレイバンのサングラスをかけて、派手なコンバーチブルを乗り回す若者が集まるイメージだ。
いわば日本人が一番憧れたアメリカの姿である。
かかっている音楽といえば、ロカビリーか極々初期のサーフミュージック、そしてウエストコーストジャズだったろう。
当時のウエストコーストジャズを演っていた面々も、みんなイケメンだった。
チェット・ベイカーやアート・ペッパー、ラス・フリーマンなどなど、みんな才能にも溢れた人たちで、ジェリー・マリガンに至っては何種類ものホーンを自在に操り、ピアノも上手かった。
おそらくボブ・ゴードンも、そんな仲間に囲まれて青春を謳歌していた一人ではないかと思う(見た目はちょっと野暮ったいが....)。
このアルバムからはそんな彼の意気揚々とした青春の喜びが十二分に伝わってくる。
音そのものに若さが感じられるといった方がいいかもしれない。

その若さを感じる源は何といっても曲のテンポにある。
何も考えずに自然と身体が反応するリズムだ。
これを単調だという人もいるだろうが、実はここがウエストコーストジャズの生命線なのである。
こんな風に一見単調で平凡そうな作品を愛してこそ、本物のジャズファンといいたいところだ。

ま、とにかく今年もこんな調子でがんばります。



GIL MELLE 「Patterns in jazz」

2008年03月25日 | Baritone & Soprano Saxophone

このジャケットデザインは見事だ。数あるジャズアルバムの中でもトップクラスの出来だと思っている。
これはアルバムタイトルの「Patterns in jazz」を視覚的に表現したものだろう。筆で大きな点を整然と書き記している印象的な抽象画だといえる。どちらかというとワンパターンなジャケットデザインが並ぶブルーノート1500番台にあって、ひときわ異彩を放つ知的なアルバムだ。
ジャケットデザインはもちろんリード・マイルスだが、このグレーのパターンを描いたのがギル・メレ本人だ。
彼は作曲家でありバリトンサックス奏者であるが、それ以上にアーチストとして活躍した人だった。
ジャケットデザインもいくつか手がけている。
例えば「小川のマイルス」で有名なマイルス・デイビス・クインテットや、タッド・ダメロンのフォンテーヌブロー、ウッディ・ショウのベムシャ・スウィングなどがそうだ。
個人的にはどれもあまり好きなジャケットではないが、この「Patterns in jazz」だけは飛び抜けていい。これはリード・マイルスのデザイン力によるものだろうが、ギル・メレの描いた点の集合体もこの時代にしては実に大胆な表現だ。おそらくこのジャケットに影響されたデザイナーも多いのではないだろうか。

ジャズのジャケットデザインにもいくつかのパターンがある。
典型的なのはジャズメンのスナップ写真をダブルトーンで表現したものや、タイポグラフィを大胆に処理したもの、アルバムのイメージをイラストで表現したものなどがある。どのタイプにも傑作があるが、この「Patterns in jazz」のように純粋なアートを感じる作品は少ない。このアルバムが知的な作品に感じられるのはそんなところから来ているのだと思う。

肝心の演奏はどうかというと、タイトルほどに特別難しく考えることはない。終始軽快なサウンドが全編を包んでいる。
バリトンサックスだからといって決して重くない。
バリトンとトロンボーン、そしてギターの組み合わせが意外と新鮮だ。
一言でいえばこざっぱりした作品だという印象がある。これもジャズのパターンなのだろうか。



GERRY MULLIGAN 「NIGHT LIGHTS」

2007年04月22日 | Baritone & Soprano Saxophone

おしゃれだといえば、忘れられないこんなアルバムもある。
ジェリー・マリガンの代表作「NIGHT LIGHTS」だ。

彼は何といってもルックスがいい。あんな顔に生まれたかった。精悍で爽やかな西海岸の若大将といった印象だ。
但し男前だっただけではない。優れたバリトンサックス奏者という以外にも、作曲家としてもアレンジャーとしてもすごい才能の持ち主だった。
マイルスの「Birth Of The Cool」ではギル・エヴァンスばかりクローズアップされることが多いが、このアルバムで最も評価すべきはジェリー・マリガンのアレンジである。彼がいたからマイルスを初め、多くのジャズメンが〈クール〉に決められたのだ。

さて「NIGHT LIGHTS」に話を戻そう。
このアルバムのどこがそんなにいいか。それは色んな要素が混じり合った作品なのに、何の違和感もなくロマンチックな都会の夜を見事に表現しているからである。
色んな要素とはクラシック(ショパンを題材にしたPrelude in E minor)、当時大ブームになったボサノヴァ(Morning of the Carnival )などで、こうした楽曲がウェストコーストのクールジャズとうまくマッチングされ、アメリカ社会における都市の様々な人間模様を描き出しているように感じられるのである。
こうしたことをさりげなく表現できる背景には、ジェリー・マリガンの作曲能力とアレンジ能力、バリトンサックスの他、クラリネットやピアノまでこなす演奏技術が人並み外れたものだったということだ。
う~む、やっぱりこんな人に生まれたかった。



SAHIB SHIHAB 「The Danish Radio Jazz Group」

2007年04月01日 | Baritone & Soprano Saxophone

ついに真打ち登場!
これがわからぬ人はジャズを語るなかれ、と声を大にしていいたい。
私はこのアルバムを長いジャズの歴史の中でも5指に入る傑作だと信じて疑わない。こんなアルバムがなぜ今まで埋もれていたのだろうか。
サヒブ・シハブの残したアルバムはどれもこれもコレクター垂涎の的だ。中でも「JAZZ SHIHAB」や「JAZZ PARTY(Conversationsも内容は同じアルバム)」などはなかなか手に入らないレアなアルバムとして有名だ。
JAZZ PARTYでは17才だったペデルセンが、正に神がかり的なランニングベースを弾いて我々を驚かせる。しかしここにもシハブの計算があった。彼は人を引き込む技術を心得ていたのだ。
但し内容的にはスタジオ録音とライヴ録音の違いはあるものの、「JAZZ PARTY」よりもこの「The Danish Radio Jazz Group」の方が完成度が高い。特に1曲目「DI-DA」のインパクトはすさまじいものがある。シハブの計算したアンサンブルと各ソロパートのバランスは筆舌に尽くしがたい。それもこれもシハブの吹くバリトンサックスのおどろおどろしい音が、全体の緊張感と調和を保っているからに他ならない。

え~い、とやかく言うのもまどろっこしい。ボリュームを最大限に上げて聴いてほしい。これがジャズという音楽だ。

SERGE CHALOFF 「BLUE SERGE」

2007年02月23日 | Baritone & Soprano Saxophone

バリトンサックスの名手といえば、ペッパー・アダムスやジェリー・マリガン、サヒブ・シハブらと並んでこのサージ・チャロフを忘れるわけにはいかない。このアルバムは正に彼の代表作だ。

バリトンサックスはうまく吹かないとデリカシーがなくなる。とにかく普通に吹くだけでバフゥー、ブゥワ~~とくるのだからたまらない。まるで風圧でこちらまで飛ばされそうな勢いだ。ただこれが彼らの武器で、テナーやアルトではこうはならない。唯一ソニー・ロリンズやデクスター・ゴードンの元気な頃は、テナーでもそれに近い音が出せていた。ただそれはかなり例外的な話である。
サージ・チャロフはそんなバリトンでテナーの良さも出せた男である。

このアルバムがなぜ彼の代表作になったかというと、バックを固めるソニー・クラーク(P)、ルロイ・ヴィネガー(b)、フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds)の好演にも助けられて、何の気負いもなく自然体で演奏できているからである。
リラックスした雰囲気の中で迫力満点の重低音を聴きたいなら、このアルバムは決してあなたの期待を裏切らないと断言できる。