SENTIMENTAL JAZZ DIARY

感傷的ジャズ日記 ~私のアルバムコレクションから~

PETER IND 「LOOKING OUT」

2010年03月23日 | Bass

昨日、大量にあるレコードの一部を処分した。
とはいっても処分したのはジャズのレコードではない。
以前聞いていたロックやソウルなどのレコードだ。
もう何年も聴いていないので棚の中で半ば骨董品化していて、相当カビ臭くなっていた。
それを端から確かめてみると、出てくる出てくる、懐かしさのオンパレードだ。
古いのはエルヴィスから、ストーンズ、クリーム、ツェッペリンなどなど、数えだしたら切りがないくらいである。
その一枚一枚に想い出が詰まってはいるものの、今となっては無用の長物である。
ここはすぱっと割り切って、仕分け作業を行う。
段ボール箱を脇に置いて、いらないものはこの中にボンボン投げ込んでいく。
トム・ウェイツもクラプトンも、EW&Fも、み~んな段ボールの中に消えていった。
その数200~300枚といったところ。
それでも棚のごく一部に空きができただけだった。
これが何ともむなしいのである。

こういったポピュラー系のレコードは処分してもほとんどが二束三文だ。
買ったときは一枚2000円~2500円程度はしたはずなのだが、売るとなれば一枚約10円が相場である。
何と悲しい運命なのだろう。
ロイ・ブキャナンが演じる「メシアが再び」の切ないメロディが頭をよぎる....。

それに比べジャズのレコードはかなり様子が違う。
オリジナル盤でなくとも、そこそこの値が付くのである。
それだけ需要があるということだ。
そういえば仕分け作業をしている最中に、ピーター・インドの「LOOKING OUT」がポピュラー系のレコードに混じって出てきた。
「おっ!やった~!」と、一人で感激する。
しばらく見ないと思ったら、こんなところにあったのだ。
もともとレア盤だが、いかにもレア盤らしい復活である。
これなんかはかなりの値段が付くアルバムではないかと思う。

早速聴いてみる。
バイオリンとギターとベースの弦がいろいろな風景をつくり出していく。
これを聴くと、ジャンルに囚われない世界が拡がっているのに気づかされるのである。
ジャズって、いったい何だ?
今さらながら、そんなことを考え込んだ。



ERNST GLERUM 「57 VARIATIONS」

2009年12月11日 | Bass

やっぱり買ってしまった。
エルンスト・グレルムのレトロバスシリーズ第3弾である。
ディスクユニオンの店頭で見つけて思わず手に取った。
ただこのジャケットの仕様は最悪。
ライナーノーツもなければ、CDを入れる内袋もついていない。ただCDがストンとジャケットカバーに裸のまま入れられているという、何ともお粗末な体裁。
それでもやっぱり買ってしまう。
レトロバスの魅力とグレルムの新しい音を聴きたいという誘惑に負けたのだ。

今回のレトロバスジャケットは、子供たちによるバス旅行のスナップ写真だ。
ひょっとするとこの中の一人がグレルム本人なのかもしれない。
以前2作目が出たときに、私は次回作には1作目のCDに印刷されていたボンネットバスの写真が使われるのではないかと予想したが、これは見事に外れた。
しかし今回はノスタルジックな雰囲気がますます増幅されていて、あのボンネットバスの写真よりいい。
このへんがグレルムのセンスの良さなのだと思う。

家に帰ってきて、早速CDをターンテーブルに乗せる。
前作はグレルム本人がピアノを弾いていたが、本作はオランダのリューベン・ハインという若手を全面的に起用しており、グレルムは本来のベースに専念するスタイルになっている。
これで音がどのように変化するだろうかという興味もあった。
しかし基本的には前作・前々作の音を踏襲しており、相変わらずのキレの良さを感じた。
グレルムが弾くベースの音もブンブン唸りを上げている。

それはそうと、このアルバムの中には「Omnibus Three」という曲が入っているにもかかわらず、なぜアルバムタイトルが「57 VARIATIONS」なのかがわからない。
何か訳があるのだろうが、解説もないからさっぱりだ。どなたか知っている方は教えて欲しい。
とにかく私はこのアルバムを買って満足している。
ただ中には「もうそろそろマンネリの域に入っている」と感じる人もいるかもしれない。
まぁ確かにそれはシリーズものの宿命ではあるのだが、毎回期待を裏切らない作品づくりには頭の下がる思いだ。
4作目が出ればまた買うだろう。たぶんだけどね。

IKE ISAACS 「AT PIED PIPER」

2009年10月18日 | Bass

こういうライヴを見られた人はラッキーだ。
このくらいドライヴの効いた演奏を目の当たりにしたら、ジャズファンならずともやみつきなるに違いない。

考えてみればこれもピアノトリオなんだよな~、と思ってしまう。
どうもピアノトリオというと、最近のクールで耽美な世界をイメージしがちなのだが、これは明らかにホットで人間臭い。
とにかく1曲目の「Impressions」から、私たちの心をわしづかみにしてしまう。
アドリヴのスピード感といい、力強さといい、ライヴの臨場感といい、魅力がたっぷり詰まっている作品なのだ。
これはジャック・ウィルソン(P)の見直し盤といってもいい。
もちろんアイク・アイザックスのウォーキングベースも迫力満点だし、ジミー・スミスのドラミングも確かだ。
この作品が大変な人気盤であることも頷ける。

ただこのアルバムのイメージは、2曲目の「Mercy,Mercy,Mercy」であり、5曲目の「Walk On By」がつくり出していると思う。
このいかにも60年代というメロディラインが一種独特の雰囲気を醸し出している。
所謂、当時の匂いがプンプンするのである。
おそらく当時はジャズ喫茶などで大人気だっただろうと想像できる。
これを今の人が楽しめるか、古くさいと感じるかで、この作品の評価が変わってくるのかもしれない。

いずれにせよ、この手のライヴは熱ければ熱いほどいい。
思わず手拍子をしたくなるような演奏をして初めて会場が一体化するのだ。
こういう演奏が近頃聴けなくなってきたことが寂しい。

CURTIS COUNCE 「LANDSLIDE」

2009年10月05日 | Bass

こんなアルバムに出会ってジャズがますます好きになった。
いわゆる初級者から一皮剥けて中級者になったような気分なのである。
なんたってメンバーがすごく渋め。
ジャック・シェルドン(tp)、ハロルド・ランド(ts)、カール・パーキンス(p)、フランク・バトラー(ds)、そしてリーダーのカーティス・カウンス(b)だ。
このうちの2人以上のリーダーアルバムを持っていたら、あなたも立派な中級者である(たぶんね)。
ただ「要するに全員B級のジャズメンということか?」と勘違いされては困る。
とんでもない、ハートもテクニックもハイレベルなメンバーばかりなのだ。
とにかくそれぞれの楽器の持ち味が、くっきり浮き立ってくるような音色を奏でているのに驚く。
しかも全体のトーンはあまり変わらない。
つまり色相は違うが、明度や彩度は同じといった色合いに染められているのである。
これが全体のまとまりをよくしている原因だ。

ここに収録されている曲はどの曲もゴキゲンなナンバーばかりなので、どれか推薦曲をといわれても答えにくいが、今日は5曲目に収録されている「Sarah」を簡単にご紹介する。
ブルージーな雰囲気を持つこの曲はジャック・シェルドンの作である。
カール・パーキンスのキレのいいピアノソロから始まり、やがて遠くからハロルド・ランドのテナーがやってくる。
そのテナーソロの途中で、フランク・バトラーが思い切り、タタン!とスネアを叩く。この瞬間が快感である。
続くジャック・シェルドンのトランペットも、バトラーのドラムに煽られ徐々に熱くなっていき、最後にカーディス・カウンスが重心の低いベースを全面に押し出す。
単純なハードバップと呼べないフィーリングがここにある。
目玉と呼べる大スターがいないからこそ、こうした均衡のとれた作品ができたのかもしれない。
ジャズも何よりチームワークが大切だということだ。

SLAM STEWART 「BOWIN' SINGIN' SLAM」

2009年08月13日 | Bass

このノスタルジックなピアノの音。
私にとっては、これがこのアルバムの最大の魅力だ。
一瞬テディ・ウィルソンかと思ってしまうが、弾いているのはジョニー・ガルニエリだ。
ジョニー・ガルニエリといえばレスター・ヤングとの共演を真っ先に思いつく。
ヤングの粋で軽快なムードづくりは、ガルニエリあってこそ成し遂げられた成果だといっても過言ではないと思う。
ここでもそんなガルニエリの知己に富んだ演奏が聴ける。
このアルバムではラストの2曲、彼に替わってエロール・ガーナーが登場しなかなか艶っぽい演奏をするが、私はやっぱり、より軽快なジョニー・ガルニエリのピアノが好きなのである。

私はこのアルバムを聴いて以降、この時期のスイングジャズが好きになった。
これは1944~5年の録音だが、録音状態もそれほど悪くない(特別いいというわけでもないが...)。
1940年代頃のレコードを聴こうとする時にためらう第一の原因は、何といってもチャーリー・パーカーにある。
パーカー全盛期の録音は劣悪なのが多いのだ。
一度聴いてしまうと、「パーカーはもっと聴きたいが、何しろ音がねぇ~」ということになってしまう。
つまり40年代は総じて音が悪いと錯覚してしまい、当時の作品は聴く気になれないわけだ。
私もそんな時期が長いこと続いた。
影響力の強いパーカーならではの弊害である。

それはそうと肝心のスラム・スチュアートはどうした、といわれそうだが、彼独特のハミング演奏(アルコを引きながら、その旋律に合わせてハミングする演奏法)は何度もやられるとちょっとうるさい気がする。
もともとライオネル・ハンプトンの名作「スターダスト」の中で聴かせてくれたハミング演奏が気に入ってこのアルバムを購入したわけだが、その部分だけを切り離してみると、もう少しポイントを絞って聴かせてくれたらいいのに、と思ってしまう。
しかしここから影響を受けたジョージ・ベンソンが、後ほどハミング演奏で大ヒットを生み出すことを考えると、やはり先人の貫禄・独創性は評価されるべきである。

とにもかくにも、40年代のジャズをもっと見直そう。
アルバム全体を通して聴くと夢心地になる。

VIT SVEC TRIO 「KEPORKAK」

2009年07月16日 | Bass

愛称「鯨」といえばこれ。
チェコのベーシスト、ヴィト・スヴェッツによる人気盤だ。
いきなり鯨の鳴き声を模したアルコでスタートする。
これがかなりリアルに聞こえるので、いかにもコンセプトアルバムっぽく感じてしまうが、こういうトリッキーな演奏は1曲目の最初と最後のみ。他はいたってシンプルなピアノトリオである。

ここ数年のピアノトリオ・ブームで、私たちの耳はかなり研ぎ澄まされてしまった。
つまりよほどいい演奏でない限りは、心に響かなくなってしまったのだ。
いよいよピアノトリオ・ブームも終わりかと思いきや、こんな優れた作品と出会うと「やっぱりピアノトリオが最高!」なんて思ってしまう。

3曲目「Dreamer」、4曲目「Smilla」におけるMatej Benko(マチェイ・ベンコ)の透き通るようなピアノ。
5~7曲目の「Information」における重厚なベースワークとシンバルワーク。
そして極めつけが4ビートで臨む8曲目の「Blues for Michael」である。
私はこういった4ビートの曲をもっともっと入れてほしいと思っているのだが、突然はっとさせるようなウォーキングベースの登場にいつも大感激させられる。これも演出の一つだとしたら、彼らの思惑にしてやられたり、である。
9曲目の出だしは、チコ・ハミルトンの「ブルー・サンズ」を連想させる。
その個性的なドラムのリズムが遠のくと、実にリリカルなピアノが全編を駆けめぐる。
やがて太鼓のリズムが帰ってきてエンディングとなる。この構成もなかなか見事だと思う。

とにかく最近のピアノトリオに少々飽きてしまった方に強くお薦めしたい。
ピアノもベースもドラムも高水準を行く作品である。







BRIAN BROMBERG 「WOOD」

2009年04月21日 | Bass

先日ディスクユニオンに行ったらこれがかかっていた。
吊り下げられたスピーカーから、バコンバコンいいながら迫力あるウッドベースが唸りを上げていた。
弾いているのはブライアン・ブロムバーグ。
一聴してすぐにわかった。
私はこれをかけようと思ったお店の人の心境がよくわかる。
とにかく重低音中心のド迫力で、「こんなピアノトリオもあるんだよ」と客に振り向いてもらいたいと考えたのだ。

ベースの革命児といえば、スコット・ラファロやジャコ・パストリアスあたりを最初に思い浮かべてしまうが、彼は明らかにそれに次ぐ人だと思う。
彼はすさまじいまでのハイテクニシャンだ。
このアルバムの中にはそれを証明するかのようなソロが5曲も入っている。これらはジャコ・パストリアスの向こうを張っているし、ラストの「Star Spangled Banner(星条旗よ永遠なれ)」に至っては、間違いなくウッドストックでのジミ・ヘンドリックスを意識している。
ウッドベースでここまでやるか、といった塩梅である。
ソロにおいては、ウッドベースのボディをパーカッシヴに叩く音が見事に捉えられている。
この乾いた響きと太い弦の弾ける湿った音とが重なって、ぶ厚いサウンドが創り出されているのだ。

彼はまたバッキングも上手い。「Speak Low」におけるウォーキングベースなんかは心憎いまでの切れ味だ。
そのせいもあってか、ランディ・ウォルドマンのピアノがとてもきれいに聞こえる。録音状態もすこぶるいいので、それはさらに際立ってくるのだが、このアルバムを聴いていると、ピアノトリオはいかにベースの存在が重要なのかを思い知らされるのである。

これはベース好きにはたまらないアルバムである。
多少のアクやクセがあって当たり前。
思いっきりボリュームを上げて、とてつもない低音の魅力と、対比され浮き彫りになったピアノの美しさを聴こう。
私のオーディオ装置も心なしか喜んでいるように感じる。









NIELS-HENNING O PEDERSEN 「friends forever」

2009年01月16日 | Bass

デンマークつながりで心暖まる作品をもう一枚。
2005年に惜しまれつつ亡くなったNIELS-HENNING ORSTED PEDERSEN(ニールス・ヘニング・ウルステッド・ペデルセン)の豪華2枚組追悼盤である。
このアルバムは日本では発売されていないもののようだが、彼のファンが多い日本でもぜひ発売してもらって、もっともっと多くの人に聴いていただきたい作品である。
私はこれをデンマークの友人を通じて手に入れた
その友人も、彼はデンマーク国民の誇りだった、と話していたが、私もファンの一人として、彼の若すぎる死を本当に残念に思っている。

この作品は1963年の録音から亡くなる前年の録音まで全34曲も入っていて、これを聴けば彼がどういう人間だったのかが手に取るようにわかる。
私自身これまでニールス・ペデルセンといえば、骨太のゴリゴリしたベースを弾くハイ・テクニシャンというイメージを持っていたのだが、このアルバムを聴いて、そのイメージが払拭されてしまった。
とにかく彼は全編に渡って「優しさ」の塊なのである。
もちろん追悼盤だから、あえてそういう曲を選んで構成しているのはわかっているが、それにしてもこの懐の深さはどうだ。
聞き込めば聞き込むほどに、どの曲からも溢れんばかりの感動が押し寄せてくる。
彼の相手を務めているのは、オスカー・ピーターソンであったり、ケニー・ドリューであったり、ミシェル・ペトルチアーニであったりするが、こういう風に並べて聴いてみても、やはり主役はニールス・ペデルセンなのである。
これほどまでに存在感のあるベースを弾ける人はいない。
彼がいたから、アメリカのジャズとヨーロッパのジャズが共存できるようになったといったら言い過ぎであろうか。
とにかく彼がその橋渡し役になったことはいうまでもない事実である。
「偉大な人」というのは、まさにこういう人を差す言葉である。

AVISHAI COHEN 「Gently Disturbed」

2009年01月04日 | Bass

どういったらいいんだろう。
最初のピアノの音からして普通と違う。吸い込まれそうな鳴り方・響き方をしている。
いきなりこんな印象を持てたのは間違いなくe.s.t.以来だ。
そこには全体に音の重心が低い深遠な世界が創られており、私たちはあっという間に引きずり込まれるのだ。
これは単純にリーダーのアヴィシャイ・コーエンがベーシストだからといったことでは済まされない。
音そのものに彼らの魂が入っているような感じがするのだ。

このアルバムだけ聴いて判断するのも乱暴だが、これはバド・パウエル・トリオ~ビル・エヴァンス・トリオ~キース・ジャレット・トリオときた、歴代ピアノトリオの革新的なスタイルの次なる完成形のように思えてくる。
この完成形はe.s.t.がその土台を創り、このアヴィシャイ・コーエン・トリオが最終的な仕上げを行ったと思えてしまうのである。
ではなぜそんな印象を受けるのだろう。
まず楽曲であるが、これはクラシック的な雰囲気が随所に漂っている。特にメロディラインなどはクラシックの名曲を聴いているような優雅さがあって洗練されている。
もちろん音は完全なジャズである。しかもかなりゴリゴリした力強さが前面に出てくるジャズだ。但し複雑な変拍子が続くので、ロック的・ラテン的な要素もあちこちで感じられ、単純な4ビートジャズではない。しかもそれらが見事に融合されていて、アルバム全体の統一感が生まれているのだ。
しかしそう書くとe.s.t.とどこが違うのかという話になってしまうが、e.s.t.ではやはりピアノが主役だったように感じている。それに比べこのアヴィシャイ・コーエン・トリオは誰が主役という感覚はまるでない。メンバー全員がそれぞれの持ち味やテクニックを駆使して結びついているところにその完成度の高さを感じるのである。

これはe.s.t.同様に大音量で聴きたいピアノトリオである。
ベースが、ドラムスがまるでスピーカーを破って飛び出してくるかのような迫力だ。これは実に快感だ。まだという方はぜひとも聴いていただきたい。
余談になるが、アヴィシャイ・コーエンはエスビョルン・スヴェンソンに雰囲気がどことなく似ている。どうやら現代はこの手の顔に革命児の素質を持たせているのかもしれない。

ERNST GLERUM 「OMNIBUS TWO」

2008年12月19日 | Bass

グレルムの話をしたついでに「OMNIBUS TWO」もご紹介したい。
あの大ヒットした「OMNIBUS ONE」から3年の時を経て出された〝OMNIBUS〟シリーズ?第2弾である。
彼らはレトロバスがトレードマークのようになってしまった。
今回のジャケットに使われている2階建てバスは、既にONEのライナーノーツの中に載っているものだ。ここではちゃんとフロントからテール部分までバス全体が写っている。
なぜ今回のジャケットではトリミングしたのだろう。バスをより大きく見せるためか、はたまた背景の青に対する赤の面積を増やしたかったからなのか、わからない。しかし、よく見ると今回はフォトレタッチされている部分がいくつかあり、ONEのライナーノーツの中で紹介されているものと比べると、色彩もかなり強調されている。いわゆるビビッドに調整されているのだ。これが〝総天然色カラー〟的なレトロさを増幅させる結果を生んでおり、おそらくこれが彼の狙いだったのではないかと思っている。

このようにエルンスト・グレルムという人は、そういったイメージ戦略にかなり拘る人のようだ。
以前、「OMNIBUS ONE」をご紹介したときにも書いたが、彼のウェブサイトを見れば彼本人の趣味がよくわかる。ここにもレトロ調の車や電話機なんかがところどころ配置されていて面白い。
ついでにContact/Linksに並ぶ仲間たちのサイトを見て回ったが結構楽しめた。
蛇足ながら、そこから「Trio Bennink/Borstlap/Glerum」へジャンプすると、2008年10月28日のトリオ演奏がYouTubeで観られるが、ここでのハン・ベニングがかっこよかった。ドラムスなんてスネア一つあれば充分なんだな~、と思った次第である。
エルンスト・グレルムはというと、このライヴ演奏では本来のベースに専念している。
「OMNIBUS TWO」ではもっぱらピアノを弾いているのだが、私は彼のベースをもっともっと聴きたい。それくらい彼のベースには魅力があるのだ。

「OMNIBUS TWO」の内容は「OMNIBUS ONE」を超えている。
今回は大型バスに揺られているような、ある種の浮遊感と力強さ、そしてみんなで旅をするという楽しさが味わえるのだ。
時には緊張を強いられる場面もあるし、リラックスできるシーンも出てくる。
とにかく買って損はないアルバムだ。
「OMNIBUS THREE」があるとすれば、今度はどんなジャケットになるのだろう。それも楽しみである。
個人的にはONEのCDに印刷されたボンネットバスが登場するのではないかと思っているだが....。