SENTIMENTAL JAZZ DIARY

感傷的ジャズ日記 ~私のアルバムコレクションから~

ROY BROOKS 「BEAT」

2008年11月30日 | Drums/Percussion

ロイ・ブルックスを知らずとも、思わずジャケットで買ってしまう一枚だ。
これこそ正しいジャズアルバムといえるようなダブルトーン処理。
ジャケットだけで買えるのは音楽界広しといえども、ジャズくらいなものではないだろうか。もちろんロックやポピュラーの世界にもいいジャケットはたくさんある。しかしそれだけで買おうというところまではなかなか結びつかない。やっぱりジャケット以上に中身が大事なのだ。
ここがそもそもジャズと違う点だ。ジャズの場合はお目当ての曲があって、それが直接の購買動機に繋がっているということはあまりないように思う。少なくとも私はそうだ。極端に言うならば全体の雰囲気やその時の気分で買っているのだ。
もっともそれはレコードでの話。CDとなるとさすがにそういう感情が薄まってしまう。だから同じアルバムでも、レコードとCDは似て非なるものであるわけだ。

さてジャケットもさることながらレコードとCDの違いは他にもある。
決定的なのが聴く時間の長さである。
レコードの場合は、一枚のアルバムがA面とB面に分かれており、A面が終わると盤をひっくり返す間、自ずと休憩時間が設けられる。
この間に、続けてB面を聴こうか、やめて別なレコードをかけようか、と考える。いずれを選択しようとも、レコードにはまた新しい気分でスタートできるというメリットがある。
これがCDだとなかなかそうはいかない。結局垂れ流し的に最後まで聴いてしまう傾向にある。しかもCDだといらぬ「おまけ」まで付いていることが多く、実際の時間は長くなる。これは大いに問題である。
いくら好きな音楽でも、集中して聴ける時間には限界があるのだ。私はせいぜい20分程度ではないかと思っている。つまりレコードの片面が限界なのだ。それ以上は集中して聴けない。故にCDの場合はBGMとして聴かざるを得ない。何かをしながら聴くというスタイルだ。当然録音の善し悪しなんていうものにも縁遠くなる。自分の感性が鈍る要因だ。
やっぱりジャズは腕を組みながら集中してじっくり聴きたい音楽なのだ。


SUE RANEY 「SONGS FOR A RANEY DAY」

2008年11月28日 | Vocal

このところ天気が悪い。毎日雨続きである。
ということで今日はそんな雨にちなんだレコードを取り出した。スー・レイニーの「ソング・フォー・ア・レイニー・デイ」である。この語呂合わせ以上に内容はすばらしく、これをかけると雨の日も幸せいっぱいの気持ちになる。

話は変わるが、こういうアルバムはやはりレコードに限る。CDではその楽しみの半分も味わえないだろうと思う。
ではCDとレコードの違いは一体どこにあるんだろう。
まず音であるが、これは一概にどちらがいいとはいえない。レコードが断然いい場合と、CDが抜群にいい場合とがあるので、これは引き分け。
次に操作性だが、これはCDの方がいい。ケースをパカっと開け、CDを取り出しターンテーブルに乗せ、再生ボタンを押すだけだ。その点、レコードは針先も含めクリーニングしなければならず(毎回とは限らないが...)、そこに大きな時間のロスが出る。
しかし、その一連の動作をしている時のわくわく感はCDとは比べものにならない。そっと針を置く瞬間、そのわくわく感は最高潮に達する。要するにレコードの方が聴くときの緊張感や集中力が高まり、音楽を聴く喜びが大きくなるということなのだ。
但し、車の中でも聴けるCDの手軽さも捨てがたい。まぁ、こちらも痛み分けといったところかもしれない。
次にジャケットの楽しみ方である。
これは圧倒的にレコードが上回っている。単純に広い面積を有しているというだけのことではあるが、その面積比以上に効果は絶大だ。
このスー・レイニーのジャケットに限らず、古いヴォーカルアルバムは皆、ジャケット半分、中身の音半分といった価値感で成り立っている。
ジャケットを眺めながら、流れる音楽を楽しむ。つまり視覚と聴覚をフルに使って楽しむのである。ついでにカビ臭いジャケットの匂いなども嗅ぎながらだとなおいい。五感で感じてこそ感性が高まるというものだ。
最近はインターネットを通じての音楽配信が主流になりつつあるようだが、このシステムで音楽を購入しても、ダウンロードした音楽が自分のものになったという感覚は、残念ながら微塵も得られない。これはその行為に実体が伴わないためである。音楽も使い捨ての時代だよということなのかもしれないが、私は嫌だ。

この続きはまた明日にでも書いてみようと思う。

RAY CHARLES & MILT JACKSON「Soul Meeting」

2008年11月24日 | Piano/keyboard

最近レコードプレーヤーの針を交換した。
しばらく交換していなかったのでノイズが入るようになってしまい、数百枚はあろうかというレコードも聴けずじまいだったのだ。
私が愛用しているレコードプレーヤーは、YAMAHAのGT-2000である。
発売当時は衝撃的だった。何せ30kg近くもある巨体の持ち主だから、見た目にもすごい迫力があった。一目で欲しくなり、貯金をはたいて購入したのをよく覚えている。あれから既に25年以上も経つと思うが、未だに新品のような輝きを以て棚の上に鎮座している。
針はこれまでDENONのDL-301をつけていたが、今回SHUREのV-15TYPEIIIとaudio-technicaのAT15Ea/Gを手に入れた。どちらも個性的な音を出す針だ。

今日はそのAT15Ea/Gで、100%のブルース魂を聴く。
タイトル通り、レイ・チャールズとミルト・ジャクソンによるブルージーな対話が聞きものの「Soul Meeting」だ。
この二人だけでも充分過ぎるくらいなのに、ここにケニー・バレルが絡んでくるから、ますますこのアルバムは黒くなっていく。
しかしここではやはりレイ・チャールズの存在が際立っている。
ヴォーカルを一切披露せず、終始ピアノを弾くことに徹していながらも、そのピアノがしっかり彼らしい歌を歌っているからすごい。その溢れ出るようなメロディやフレーズに引っ張られ、ミルト・ジャクソンのヴァイヴが縦横無尽に飛び跳ねるのだ。

本物のソウルとは何か、ブルースとは何か、それを知りたい人はこのアルバムを聴くべし。
ついでにレイ・チャールズの本当の実力を知りたい人にもお薦めだ。

Thad Jones & Mel Lewis 「CONSUMMATION」

2008年11月23日 | Group

時代の匂いがプンプンする作品だ。
今さら私が紹介するまでもなく、サド&メル・ジャズオーケストラは、黒人のサド・ジョーンズ(tp)と白人のメル・ルイス(ds)が1965年に結成した全く新しいタイプのビッグバンドである。
彼らは1978年に解散してしまうが、未だに絶大な人気があり、サド&メルこそ最高峰のジャズバンドだといって憚らない人が多いのも事実である。
では彼らのどこにそんな魅力があるのだろう。
まず特筆されるのがソロパートに対する考え方である。
ピアノにしろトランペットにしろトロンボーンにしろ、ソロを奏でる時間が充分に確保されているという点である。この自由な雰囲気が、コンボを聴く楽しみ方に似ているのではないだろうか。つまりビッグバンド特有の堅苦しさが払拭されているのである。
それと言葉ではなかなか言い表せないが、100mを全力で走りきった時のような爽快感があり、このキレの良さがサド&メルのイメージを決定づけているようにも思える。
このアルバムでいえば、7曲目の「Fingers」でそれが最もよく出ているので聴いてほしい。
ただこのアルバムでは5曲目の「Us」や6曲目の「Ahunk Ahunk」の音がその時代の音であり、よく言えば懐かしい、悪くいえば60~70年代の中途半端な古くささが出ているのが印象的だ。

それとこのアルバム、ジャケットが効いている。
以前ご紹介したボビー・ハケットの「Live at the ROOSEVERT GRILL」と同様、LEO MEIERSDORFFがイラストレーターとして起用されている。ちょっとワンパターンなイラストではあるが、この身体のしなり具合、強調された指など、魅力的なジャズがこのジャケットからも聞こえてくる。
このイラストが好きな方は以下のサイトもご覧いただきたい。
http://meiersdorfforiginals.com/


HOD O'BRIEN 「I'm Getting Sentimental Over You」

2008年11月21日 | Piano/keyboard

このブログ、約半年ぶりの再開である。
気が向いた時にだけ書こうと思っているので、またすぐ消えてしまうかもしれないが何卒ご容赦願いたい。

今日は肩肘張らないオーソドックスなジャズを聴きたいと思い、このアルバムを取り出した。
ホッド・オブライエン。いいピアニストだと思う。
ジャケットを見てもわかるように、彼はシカゴやニューヨークの街が似合う。こんなピアノトリオを場末の小さなジャズクラブで聴けたらいいだろうな、と思わせるような演奏だ。
実はこういった楽しみを与えてくれる人が最高のジャズメンなのだとつくづく思う。
アルバムに収録されている曲は全曲いいが、特に「I Don't Know What Time It Was」なんか聴いていると、実にゆったりとした気分にさせられる。どちらかというと突っ込んで弾きがちな「C Jam Blues」も、彼の手にかかれば余裕たっぷりなスイング感を醸し出す。このへんが職人ともいえる彼の真骨頂なのだ。
ケニー・ワシントン(dr)や、レイ・ドラモンド(b)とのコンビネーションも自然で、決して派手さはないがトリオとしての完成度は高い。

このアルバムは日本のSpice of Lifeというレーベルから出ている。
以前ここでご紹介したマティアス・アルゴットソンもここからデビューした人だ。なかなか趣味のいいレーベルだと思う。
今後もがんばって良質な作品を出していただきたいものだ。