とても評価の高い作品である。
いろいろなジャズファンが絶賛しているので買ってみた。
「ふぅ~ん、みんなはこんなピアノトリオが好きなんだ」というのが第一印象。
しかし何回か聴くにつれ、徐々に他の作品とは違う何かがあると感じるようになっていった。
このイタリアの若者(ヴィンセンツォ・デニスと読むらしい)の弾くピアノは緊張感たっぷりだ。
どこまでもシリアスで、奥に秘めた情念のような想いを感じるピアノトリオである。
これはじっくりと聞き込まないといけない。
私は仕事をしながらジャズを聴いていることが多い。
いや、聴いているというより、部屋にいつでもジャズが流れているといった方がいいかもしれない。
しかもかかっているのはピアノトリオが圧倒的に多い。
理由は簡単、思考の妨げにならないからだ。
つまり普段は別のことを考えながらジャズを聴いているというわけだ。
しかし、ジャズの聴き方としてこれがいいなどとは決して思っていない。
本当はスピーカーの真正面に陣取って腕組みをしながら目を閉じ、ボリュームを最大限に上げ、全身全霊を傾けて聴きたいと思っている。
スピーカーから発せられる音を身体全体で受け止めたいのである。
そうしないと演奏者の思いを受け止めることができないとも思っている。
しかし現実はそう思い通りにはいかない。
ついついいつもの体勢で聴いてしまう。何とも悲しい習性である。
このアルバムも純粋なピアノトリオだから、いつも通りに聞き流すこともできるのかもしれない。
しかし、何かが違う。
BGM的に聴くには内容が深すぎるのである。
これがかかっているとなぜか気になって仕事にならない。そんな作品なのだ。
ここがこのピアノトリオのすごいところである。
うまく表現できないが、一対一で向き合わないと許してくれないような力が働いている。
まるで美術館に並んだルネッサンスの名画のようだ。