いよいよ夏だ~!
というわけで何とも涼しげなサウンドをご紹介する。
ジョー・ベックの「ブラジリアン・ドリーミン」だ。
1曲目の「Vivo Sonhando(邦題:夢見る人生)」のイントロを聴いただけで、体感温度が2~3度は下がるような気がするから、この季節には重宝するアルバムである。
それにしてもこのボサノヴァのリズムは本当に気持ちがいい。
普通ならこういうボサノヴァはアコースティック・ギターで演奏されることが一般的だが、ここではエレクトリック・ギターで演奏されている。
これが思いのほかしっとりしていて、ウォータージェルのように潤いたっぷりなのである。
この曲を作曲したのは、もちろんアントニオ・カルロス・ジョビン。
彼ならではの名調子である。
このアルバムで驚いたのは、コルトレーンの「ジャイアント・ステップス」を演っていることだ。
あのシーツ・オブ・サウンドで有名な暑苦しいこの曲が、ボサノヴァ・タッチで実に涼しげに演奏されている。
よく聴いていないと原曲を思い出せないくらいの変身ぶりだが、そこにこのジョー・ベックの力量を感じる。
要するに優れたミュージシャンとは、上辺の既成概念を超えて表現できる人たちなのだ。
ジョー・ベックはマイルスが初めて起用したエレクトリック・ギタリストでもある。
どちらかというとフュージョンの世界で活躍した人だが、一連のヴィーナスレーベル作品を聴く限りにおいては、かなり守備範囲の広い人という印象が強くなった。
ただ残念ながら、この人も昨年の夏に肺ガンで亡くなった。
何となくではあるが、これからストレートジャズの分野で一花咲かせそうな勢いを感じていただけに惜しい気がする。
しかし彼の残した作品は、これからもいろいろな人に聴き継がれていくはず。
ご冥福を祈りたい。