SENTIMENTAL JAZZ DIARY

感傷的ジャズ日記 ~私のアルバムコレクションから~

EDWARD SIMON 「THE PROCESS」

2007年06月17日 | Piano/keyboard

力のあるピアニストだということは、そのムードでわかる。
決して甘くない。笑わない。いつも何か遠くを見つめている、そんな感じの弾き方だ。
エドワード・サイモン、彼はベネズエラ出身である。
デビューしたての頃はアフロ・キューバンに傾倒していたが、その後テレンス・ブランチャードのグループに入って頭角を現した。言うなれば180°転換したような変わり身だ。そこにいったい何があったのだろうかといつも気になってしまう。
事実彼の音楽はかなりストイックだ。それ故に純粋な美しさを感じる。
特にここでは彼のオリジナル曲がいい。全9曲中、オリジナルは5曲ある。
中でも重厚なジョン・パティトゥッチのアルコがフューチャーされた「REPROCESS」での深い味わいは賞賛に値する。続く「TONADO DEL CABRESTRERO」は哀愁を帯びたラテンの曲であるが、これほどまでに沈み込むラテンも少ないだろう。こうした曲を演奏するようになったところが、他のピアニストにはない彼の一番の魅力なのかもしれない。
多少マニアックではあるが、こうした音を愛するファンも多い筈だ。いかにも通好みのしそうな音なのである。

私はこういった新感覚派のピアノトリオを探すのが好きだ。
ピアノトリオの魅力は、楽器を意識することなく心の奥深くまで感情が入り込めることである。
優れたピアノトリオの演奏を聴くと、ピアノの一音一音がまるで風のように雨のように感じられることがある。春なら春のように夏なら夏のように自分の周りの空気を換えてくれる、そんな気がするのだ。
しかも一番シンプルな構成にも関わらず飽きがこない。
よくジャズはピアノトリオで始まりピアノトリオで終わるというが、このアルバムを聴いていると確かにそんな気がしてくる。