SENTIMENTAL JAZZ DIARY

感傷的ジャズ日記 ~私のアルバムコレクションから~

GREG OSBY 「The Invisible Hand」

2007年06月01日 | Alto Saxophone

内容はジャケットのイメージ通り、ダークでハードボイルドだ。
甘いピアノトリオなどを聴いた後に、これくらいピリッとした寒色系の音を聴くと背筋が伸びる。
しかもこのアルバム、かなり個性的な音に仕上がっている。
それもそのはず、メンバーの顔ぶれがいつもとかなり違う。
ゲイリー・トーマスやジム・ホールはとりあえず置いておく。問題なのはアンドリュー・ヒルの存在だ。
その昔ブルーノートのアルフレッド・ライオンが彼の類い希な才能を見抜き、次々とレコーディングさせたのは有名な話だ。
しかしライオンの惚れ込みに反して商業的には成功しなかった。創造性の高さと商業的な成功とは必ずしも一致しないいい例である。
彼独特の「間」はモンクのようでもある。曲の解釈やリズムの取り方が他の人間と違うのだ。しかも彼は決してスタンダードを弾こうとせず、全ての曲をオリジナルで揃え、かたくなにそれを演奏した。残念ながらこれでは売れるはずがない。一部の熱狂的なファンを作っただけである。

しかし今は良くも悪くも当時と違う。グレッグ・オスビーのような奏者がいるからだ。
一頃の彼はヒップポップ路線を突き進んでいたが、またこうしたストレート・アヘッドなジャズに戻ってきた。
そこで、アンドリュー・ヒルと出会う。二人の複雑な「間」がピタリと合ったのだ。
その証拠がデュエットによる「the watcher」である。実に見事な演奏だ。
お互いに思いはたっぷり入っているがどちらかの感情には流されない、そんな意識が交錯する行き詰まるバラードだ。
こんな緊張感のあるバラードなんてそうそう聴けるものではない。