SENTIMENTAL JAZZ DIARY

感傷的ジャズ日記 ~私のアルバムコレクションから~

EDDIE HIGGINS TRIO「Amor」

2007年06月03日 | Piano/keyboard

今、日本で一番人気のあるピアニストは誰か、と聞かれたらエディ・ヒギンスと答える。
事実、ヴィーナスレコードからは毎年次から次に彼の新作が発表される。どうしてか。売れるからである。
昨今のピアノトリオブームに乗って、日本人リスナーの波長に合ったのだ。否、ひょっとするとこのピアノトリオブームは彼が作ったのではないかとも思えてくる。それくらい彼の活躍はめざましい。

彼は長いキャリアを持った人だ。50年代からプロとして活躍しているが、本当の意味で彼の才能が開花したのは近年になってからという、所謂遅咲きの典型的ジャズメンである。
気持ちよく転がるピアノタッチ、憂いを帯びたメロディとさえたアドリヴ、ヴィーナスのクリアな録音など、どのアルバムも一定水準を超える出来映えでお薦めできる。
その中でこのアルバムを選んだのは、全曲哀愁の極みともいえる「ラテン」の曲で構成されている今まであるようでなかった珍しい作品集だからだ。
ラテンといっても、このアルバムに入っているのはヒートアップするような情熱的なラテン音楽ではなく、甘いボサノヴァやムードたっぷりのタンゴなどがぎっしり詰まっているのである。
普通のピアノトリオのアルバムでこんなラテンの曲が1曲でも入っていればその作品の株は急上昇だ。事実このブログでもご紹介したビル・リスビー「STORIES」の中の「When Photogen Met Nycteris」なんかはそのいい例である。極端に言えばそのたった1曲のために購入したようなものだ。
それがこのアルバムときたら11曲全てがラテンなのだからたまらない。100%受け狙いという企画モノであることを承知の上で楽しもう。
ただ残念なのはアルバムジャケットである。ヴィーナスレコードの趣味の悪さがここにも出ている。アルバム内容からみて、もっといいデザインならばさらに売れただろうに...などと余計なことを考えてしまう。