SENTIMENTAL JAZZ DIARY

感傷的ジャズ日記 ~私のアルバムコレクションから~

triosence 「FIRST ENCHANTMENT」

2007年06月14日 | Group

99年に結成されたというドイツの若いグループだ。
リーダーはピアニストのベルンハルト・シューラー。このアルバムは全曲彼のオリジナルで埋め尽くされている。
聞くところによると、全て女性をモチーフにした曲なのだそうだ。彼の身のまわりで起きた女性との様々な出来事を思い描いて作曲したのだという。
こんな風に表現力のある人はいいなと思う。私なんかはそんな才能がないので、一つの出来事がただの思い出にしかなっていかない。つまり形として残らないわけだ。これは実に残念なことだ。

このアルバムの曲をそんな気になって最初から聴いていくと、シューラーとはどんな人間なのか、どんな出来事が彼の周りに起きていたのかが自分なりのイメージで浮かび上がってくる。そのイメージをいちいち説明すると陳腐化するのであえていわないが、こういったドラマチックな作品はそういう感覚で聴くと実に楽しいものだ。
よくよく聴いてみると、この作品は小説を読んでいくような味わいがある。
これは計11曲の曲を細切れに聴いていく作品ではなく、アルバム全体で1曲なのだと思う。
但しそれを理解するには忍耐力が必要だ。途中でやめたり途中から聴き出したりしては、本来のストーリーが薄れてしまう。ストーリーの薄い小説はすぐ飽きる。だから最初から最後までじっくり聴く必要があるのだ。そうして初めてこの作品の真価が問えるような気がしている。

若い才能は多分に頭でっかちだ。
自分なりの意味づけを考えて、それをわからせようと躍起になる。自分の存在をアピールしたいという気持ちが強いからかもしれない。但しそれが若いということだから、私はそれを否定しない。むしろ最近はそういったことを受け入れ、楽しめるようになってきた。単純に歳をとったということかもしれないが、こうしたアルバムの聴き方がわかってきたようにも感じているのだ。
同じジャズだからといって全て同じ聴き方をしてはいけない。私はそう思っている。