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セラミックコンデンサー市場に地殻変動 SEMCO急成長、中国メーカー台頭で価格下落加速

2012-02-15 | 電子部品業界



 デジタル家電や携帯電話などの主要部品である積層セラミックコンデンサー市場に嵐が吹き荒れている。

 コンデンサーが売上高の3割超を占め、その中核をなす積層セラミックコンデンサーでは世界首位の村田製作所。2011年4~12月期の最終損益は、前年同期比約28%の減益となった。3位の太陽誘電や4位のTDKは赤字。

 TDKは昨年11月、積層セラミックコンデンサー事業を軸に、2年間で全従業員の15%弱に当たる1万1000人の削減などリストラを発表したが、1月に秋田の3工場閉鎖を追加。

 太陽誘電も3月、国内正社員の2割に当たる330人の希望退職を募集する。同社にとって30年ぶりの人員削減となる。


●セラコン市場で地殻変動

 業績悪化の主因は、テレビやパソコンなど完成品メーカーの在庫調整によるもの。「今年後半には需給が逼迫する可能性もある」と大和証券キャピタル・マーケッツの佐渡拓実シニアアナリストは分析する。

 一時的な調整とみられるにもかかわらず、なぜTDKや太陽誘電はリストラに踏み切ったのか。積層セラミックコンデンサー市場では目下、地殻変動が起こっている。両社を負け組に追い落としたのが、韓国サムスングループのSEMCOだ。

 積層セラミックコンデンサーはかつて、日本メーカーの金城湯池。

 材料の調合や厚さ数マイクロメートルのシートの積層、焼成(温度調整)などさまざまな分野のすり合わせ技術が欠かせず、参入障壁が高いとされ、SEMCOは10年前はシェア5%程度の弱小メーカーにすぎなかった。

 だが、「3~4年前から客先でSEMCOの名前が挙がり始めた」、「最先端の製品で、日本の大手より先に採用されていた事例もあった」と日本メーカーの営業担当者は話す。飛ぶ鳥を落とす勢いで成長し、1年前にはシェア2位に浮上した。

 今や世界最大の電機メーカーとなったサムスン電子向けに供給が拡大しているという追い風はあるが、技術力の高さも折り紙付き。

 その象徴がスマートフォン向けの積層セラミックコンデンサー。スマートフォン1台に使われる積層セラミックコンデンサーは400~500個。中でも0.4×0.2mmの超小型品は、比較的高単価で営業利益率も2割台後半と高い上、従来型携帯電話の2倍以上の数が搭載される。

 積層セラミックコンデンサー市場(約6500億円)における超小型品は数量ベースで現状2割程度を占めるが、スマートフォンの普及に伴って、今後数年間で年率2割以上の成長が見込まれる。

 デジタル家電向けの汎用品化によって採算が悪化する中、超小型品はメーカーにとって利益の源泉である。

 ただ、積層セラミックコンデンサーは小さくなればなるほど高度な技術が求められる上、スマートフォン向けには安定かつ大量供給する生産技術も求められる。


●技術者の引き抜き

 その市場を現在牛耳っているのが2社。7割以上のシェアを誇り、アップルのiPhoneやサムスン電子のギャラクシーなど主要なスマートフォンのほとんどで採用実績を持つ村田製作所。そして、もう一社がSEMCOなのだ。

 「SEMCOは、村田製作所やTDKから技術者を引き抜いた」と業界関係者は口をそろえる。2年で数千万円とも1億円とも噂される好条件を提示し、日本の大手メーカーが数十年かけて培った技術を短期間で身につけたのである。

 一方で、日本の下位メーカーは今や見る影もない。かつてシェア2位を誇ったTDKは超小型品の開発に手こずったうえ、生産体制の不備による納期遅れが原因で顧客離れが起こったといわれる。

 超小型品の開発には成功したのに大量受注が入らない太陽誘電は、「採算重視の開発で、結果的に流れに乗り遅れた」と反省する。

 首位の村田製作所にも勝ち組の余裕はない。顧客の一つであるサムスン電子はスマートフォンの積層セラミックコンデンサーについて、半数以上をSEMCOから、残りの大半をを村田製作所から調達するとみられる。

 しかし、それ以外の製品で今後、村田製作所を重用する理由は乏しい。

 スマートフォン以外の積層セラミックコンデンサーでは、すでに中国系の部品メーカーが台頭し、価格下落が止まらない。

 赤字すれすれで低価格を提示する中国系メーカーは「体力の限界に近い」といわれるが、出荷台数を拡大する中国系完成品メーカーからの採用率は高く、日本メーカーやSEMCOにとってさえ、頭の痛い競争相手となっている。


●再編まで発展も

 村田製作所の村田恒夫社長は「“ファーストワン”でないと儲からない時代になった。とにかく同業より高付加価値の製品を『先に』出すことだ」と言う。まずは13年春までに海外生産比率を3割(現在2割)に高め、原価低減を図る。

 超小型品はこれまで福井を中心に国内のみで生産してきたが、技術流出に細心の注意を払いながら、近い将来、中国など自社の海外拠点へ移す可能性もありそう。

 技術で並んだ日韓2強。スマートフォンを舞台に激しい戦いが繰り広げられる一方、取り残された下位グループは追加のリストラ、再編まで発展する可能性はありそう。





【記事引用】 「東洋経済Online/2012年2月15日(水)」


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