電子部品業界は、2012年を「『日本のモノづくり力』を改めて世界にアピールする年」と置付け、新たな需要創出への技術開発に全力を挙げる。
グローバルでの業界構造変化が進む中、電子部品各社は世界市場で勝ち続けるための体質強化を急ぐとともに、新成長分野に照準を合わせた戦略を一段と加速させる。
東日本大震災をはじめ、多くの苦境に見舞われた11年の電子部品業界。こうした困難を乗り越え、日本の電子部品産業は新たな飛躍に向けた歩みを始める。
●戦略的取り組み推進
電子情報技術産業協会(JEITA)によると、11年の世界電子部品生産額見込みは10年比3%減の17兆3732億円。うち日系企業の生産額(見込み)は、同3%減の6兆8821億円となった。
12年の生産額予測は世界生産が10年見込み比2%増の17兆7676億円で、日系企業の生産額は同2%増の7兆286億円。震災なども影響し、マイナス成長となった11年からは反転し、2年ぷりの成長が見込まれる。
電子部品のグローバル需要はリーマンショック後の急減から立ち直り、09年後半から10年にかけて回復基調が続いた。だが、11年は、東日本大震災に伴う業界のサプライチェーン寸断で3月以降大混乱が続いた。
震災復興は想定以上の速度で進んだが、夏場の電力不足、さらに、円高や原材料高が部品業界に影響を与え、夏場以降は欧米の景気低迷や中の市場の減速も部品需要に影を落とした。1月以降は、タイ洪水も需要回復に水を差した。
12年の電子部品市場は、為替の円の高止まりや欧米景気動向など不透明な面も多いが、電子部品の中長期での成長トレンドに変化はない。
電子部品技術が高度化し多様な産業分野で電子化が進展する中で、日本の部品産業の役割は一層重要性が増す。
携帯端末やノートPCなどの高性能電子機器は、技術進化を遂げつつグローバルでの需要が拡大し、スマートフォンやタブレットPC、IPTVなどの新たな端末需要が付加価値の高い電子部品需要をけん引することが見込まれる。
自動車や製造装置、通信。産業インフラの高度化も電子部品の技術革新を求めている。加えて、新成長市場として環境・エネルギー分野の存在感が増している。
太陽光発電やLED関連、電気自動車、スマートグリッドなどは電子部品需要の中長期底上げ分野として期待が高い。
この他、将来の巨大市場が見込まれるロボット産業や次世代通信インフラ、電子化が進む医療・ヘルスケアなど多様な分野が電子部品の中期成長市場として期待される。
このため、電子部品業界はこれらの新成長分野への先行投資を推進、新たな需要創出への戦略的な取り組みを推進する。
●厳しさ増す技術要求
電子部品への技術要求は、一層厳しさを増している。各社は次世代ニーズへのR&Dを一段と強化し、微細化技術や高周波技術、材料、製造技術など要素技術高度化への取り組みを加速させる。
同時に、成長する新興国市場の需要取り組みへの戦略も重視される。部品各社は成長に向けた長期の技術ロードマップを策定し、素材やプロセス技術など基礎的な研究に取り組んでいる。
イノベーションに向け、産学官連携やアライアンスも活発化している。
震災や超円高、タイ洪水など、多くの苦難が襲った11年の電子部品市場だが、これらの困難を乗り切ることで日本の電子部品産業が一層強さを増し、新たな進化を遂げるきっかけにつながることが期待される。
業界のスピード化やグローバル化、アジア系完成品企業やODM企業の台頭が進む中、業界の構造変化に的確に対応できる体制構築も重要性を増している。
部品各社は、最新の市場トレンドを迅速に捉えつつ一層の技術力強化に努めることによって、持続的成長を目指す。
【記事引用】 「電波新聞(第2部)/2011年1月6日(金)/1面」