サムスングループは15日、中核のサムスン電子で完成品部門を統括してきた雀志成(チェ・ジソン)社長(58)が最高経営責任者(CEO)を兼務するグループ社長人事を発表した。
薄型TVや携帯電話に加え、半導体と液晶パネルも統括することで投資の効率と経営判断のスピードを引き上げる。
同時に、季健煕(イ・ゴンヒ)前会長の長男、李在鎔(イ・ジェヨン)専務(41)は副社長に昇格する。年初に完成品と電子デバイスの2部門に分けた体制を改める。
●意思決定のスピードアップ
完成品部門を率いてきた崔氏が、CEOとして部門間のバランスをとりながら、全体の司令塔を務める。李潤雨(イ・ユンウ)副会長兼CEO(63)は電子デバイス部門の担当を外れ取締役会議長に退く。
李在鎔氏は副社長として「最高運営責任者」に就き、事業間の利害関係の調整や顧客ニーズの把握を主に担当する。
崔氏のもとで経営実務を学ぶ体制で、将来トップを世襲するという位置付けを明確に打ち出した。今回の人事は李氏の処遇を内外に示すと同時に、指揮命令系統を一元化して意思決定のスピードを速める狙いがある。
薄型テレビを世界一に導いた崔氏は対外的には柔和な表情を見せるが、社内では厳しい顔を持つことで知られる。不況期にあえてLED搭載液晶テレビといった戦略製品を投入するなど経営姿勢も明確だ。
崔氏のトップ就任で、サムスンは攻撃型の経営を加速すると見る向きが多い。
ただ、市況の変動が激しい液晶パネルでは崔氏も難しいかじ取りを迫られそうだ。中国市場ではLGディスプレーと陣取り競争が激化しているほか、次世代パネルを巡るソニーとの協力関係も不透明。
半導体メモリーも市況好転で世界の大手が投資を再開する局面にあり、両部門での手綱さばきがサムスントップとしての試金石になる。
●グループ世襲既定路線化
一方、李在鎔氏の副社長昇格でグループ世襲は既定路線化、焦点はそのタイミングに移る。
李氏は崔氏と良好な関係にあり、崔氏のもとでグループ経営の経験を穂みながら、世論からの世襲批判を受けにくい時期を探るとみられる.
サムスングループの世襲を巡っては今年5月、事実上の持ち株会社であるサムスンエバーランドの転換社・債型新株予約権付社債の李在鎔氏への譲渡を巡り、大法院(最高裁)が李健煕氏に無罪判決を下した。
李在鎔氏はエバーランド株式の5.1%を保有しており、既に資本上のグループ経営権の移行も終えている。こうした世襲への流れを受けて就任する今回のポストは、全社的な意思決定に表向き責任を持たない立場。
崔氏の補佐役に徹するのが常道だが、経営全般を判断する役回りを少しずつこなすとの見方もある。崔氏との役割分担を測れば、バトンをつなぐ時期はおのずと見えてくる。
【記事引用】 「日経産業新聞/2009年12月16日(水)/3面」