業績が悪化している半導体大手のルネサスエレクトロニクスは、主力の鶴岡工場(山形県鶴岡市)を台湾企業に売却するとともに、従業員の約3割にあたる最大約1万4千人を削減する方針を固めた。
退職金などリストラ費用をまかなうには1千億円超の資本増強が必要で、主要株主のNECや日立製作所などに支援を要請する。世界首位のマイコン事業に経営資源を集中し、再建を図る。
●深まる苦境
半導体業界ではDRAM大手のエルピーダメモリが法的整理に追い込まれ、米マイクロン・テクノロジーによる買収交渉が進んでいる。
ルネサスもシステムLSIの最先端工場を外資に売却することになり、日本の半導体産業の苦境が一段と深まってきた。
ルネサスは、鶴岡工場を台湾積体電路製造(TSMC)に売却する方針で、交渉を進めている。TSMCは半導体メーカーから委託を受けて生産に特化するファウンドリーの世界最大手。鶴岡工場の従業員約1400人は同社が引き継ぐ。
システムLSIで最大の生産拠点である鶴岡工場では、薄型テレビやデジタルカメラなどデジタル機器向けの半導体を生産している。国内テレビ市場の縮小などで稼働率が低下。固定費の負担が重くのしかかり、業績悪化の要因になってきた。
製品や主要顧客ごとに仕様が異なるシステムLSIは、少量多品種で生産効率が悪い。鶴岡工場売却を機に、製品を大幅に絞り採算改善を急ぐ。
富士通、パナソニックと続けてきたシステムLSI事業の統合交渉を加速し、6月末までの合意を目指す。ルネサスは3社の事業を統合してつくる新会社に、スマートフォン用半導体の開発者など、1千入超を移す方針。
●早期退職を募集
鶴岡工場の売却に加え、液晶テレビ用半導体を手がける福井工場(福井県坂井市)など、複数の拠点の閉鎖を検討している。同時に約3千人の早期退職を募集する。
ルネサスの従業員は4万2800人。人員削減の合計は、全体の約3割にあたる1万2千-1万4千人に達する見込み。
ルネサスは、リストラ案を主取引銀行に提示した。人員削減や工場閉鎖にかかる費用として、主要株主などに対し1千億円超の増資引き受け要請を検討している。
議決権ベースで合計9割を握る日立製作所、三菱電機、NECの電機3社のほか、海外のファンドにも出資を打診する。
【記事引用】 「日本経済新聞/2012年5月26日(土)/1面」