電子部品メーカー各社は、今年も海外新工場を相次いで立ち上げる。超円高、電力不足、増税など五重苦、六重苦などといわれる中で一段と加速する日本のセットメーカーの海外生産移管に対応。
中国などの新興国を中心とした現地での電工部品の需要増に応えるのとあわせて、中国やASEAN地域での新工場、新工場棟の着工、稼動を急ぐ。
●海外拠点生産を拡大
パナソニック デバイス社は、ベトナム(ハノイ市タンロン工業団地)に樹脂多層基板「ALIVH(アリブ)」のスマートフォン向け専用工場(延べ床面積2万4千平方mの2階建て)を建設中。
昨年9月に着工し、4月に竣工、8月に稼働させる。アリブの海外工場としては台湾に続く第2生産拠点となる。
坂本和徳回路基板ビジネスユニット長は、「すでに従業員3600人でチューナ、スピーカ、機構部品を生産する当社の部品工場があり、事業インフラが整っていること、良質の労働力があること、スマートフォンメーカーのある中国へのアクセスが良いことなどから建設を決めた。海外で急増しているスマートフォン需要に応えていく」と説明する。
新工場の半分のスペースを使って8月に月産能力350万台(スマートフォン台数換算)で生産を立ち上げる。12層のALIVH-Cから生産。10層のALIVH-Gも生産する予定。
ベトナム新工場棟の稼働により、12年末には月産能力1800万台(スマートフォン台数換算、日本850万台、台湾600万台、ベトナム350万台)にする。
村田製作所は今月、フィリピンの電子部品工場を着工した。汎用チップ積層セラミックコンデンサ(MLCC)をはじめとするボリュームゾーンの汎用電子部品をASEAN市場向けに生産、供給する。
フィリピンへは同社初の工場進出。バタンガス州タナウアン市ファースト フィリピン工業団地の22万7646平万mの敷地に工場1棟を12年9月に竣工。
13年1月からスマートフォン、タブレットPCなどで需要が増大しているMLCCの一員生産を始める。
豊冨で定着率の高いフィリピンの労働力を生かし、ASEANなど新興国市場への汎用電子部品の生産、供給拠点にする。海外生産子会社としては8社目。
MLCC海外工場ではシンガポール、中国・無錫、北京に続いて4拠点目。村田恒夫社長は「海外生産比率を為替にもよるが、3割にもっていく方向で海外拠点の生産を拡大している」と言う。
●第3の一大生産拠点
京セラは、ベトナム・フンイエン省に部品の巨大工場を建設する。タンロンⅡ工業団地に20万平方mの工場用地を取得し、工場建設準備中。
需要が増大している水晶デバイス、イメージセンサー用のSMD用セラミックパッケージなどの電子部品を生産する。日本、中国に続く第3の一大生産拠点にする。
日本と上海の両工場がフル生産のSMD用セラミックパッケージなどの増産分を13年半ばからベトナムで生産。まず月産数億個レベルで立ち上げる。
久弥徹夫社長は「今春までには着エし、13年年明けに完成させ、13年半ばから生産を開始したい。セラミックパッケージから生産を始める。汎用品の生産を検討している。13年には経済が少し回復基調に入るとみており、日本の生産を減らすのではなく、増産分を生産する。市場、需要をみながら臨機応変に設備投資していく」と言う。
モレックスは、今年もグローバルマイクロプロダクツディビジョン(MPD〉の事業強化に向けた体制拡充を推進する。
海外工場では、韓国・安山市新工場の第1フェーズが11年10月までに完了し、移管作業を進めているほか、同工場の第2フェーズに着工し、12年8月頃の完成を予定する。
これにより、旧工場との比較で生産能力は約1。4倍にアップする見込み。このほか「フィリピン工場の活用強化も考えている」(廣川克巳・日本モレックス社長)。
【記事引用】 「日本経済新聞/2011年1月19日(木)/1面」