東芝とNECが半導体事業の統合に向けて、交渉に入ったことが29日明らかになった。
東芝が、主力半導体の1つであるシステムLSI(大規模集積回路)事業を分社して、NECの半導体子会社・NECエレクトロニクスと統合する案が浮上している。
●富士通との統合も検討
NECは富士通との事業統合も検討しており、交渉の行方には流動的な面もあるが、世界同時不況の影響で半導体各社の業績が悪化するなか、国内半導体業界の再編が一気に進む可能性が出てきた。
統合が実現すれば、半導体業界では、日立製作所と三菱電機がシステムLSI事業を統合させてルネサステクノロジを設立した2003年4月以来、約6年ぶりの大型再編となる。
NECと東芝は昨秋から非公式協議を開始。昨年末から実務レベルでの協議を本格化した。
●再編・統合に意欲
両社は最先端の回路加工技術を05年から共同開発しており、半導体事業の統合・協業を進めやすい関係にある。東芝は29日に決算と収益改善策を発表、半導体事業の分社化を検討する考えを示した。
デジタル家電の頭脳にあたるシステムLSIと、電力制御などに使う個別半導体の事業を切り離す考え。
西田厚聡社長は、同日の記者会見で「システムLSI事業はメーカー数が多い。勝ち残りのため業界再編を進める」と述べ、国内同業との再編・統合に意欲を示した。
今後の交渉では東芝の半導体分社と、NECエレクトロニクスを統合する案が軸になるとみられる。
●3社統合に発展も
一方、NECは富士通とも統合に向けた協議を進めている。
富士通は主力の情報システム事業に経営資源を集中する方針で、08年にLSI事業を分社して富士通マイクロエレクトロニクスとして発足させた。
NECエレクトロニクスとの統合を模索している模様で、今後は東芝と富士通がそれぞれNECとの交渉を進める見込み。
3社の半導体事業は大幅な赤字に陥っており、統合により規模を拡大して生産性を高め、収益改善を急ぐ狙いがある。統合の前提として、各社が固定費削減などリストラをどれだけ進めるかが交渉の成否を握りそうだ。
交渉の行方次第では3社統合に発展する可能性もある。
●再び動き出す再編
日本の半導体業界は1980年代後半には、世界上位10社のうち5社を占めた。
その後、台湾や韓国メーカーが伸長し、日本勢は再編を余儀なくされ、NECと日立製作所は1999年にメモリー事業を統合してエルピーダメモリを発足させた。
日本の半導体業界は東芝、ルネサス、NEC、富士通、エルピーダメモリの大手5社にほぼ集約されていたが、世界同時不況の影響で各社の業績は一気に悪化し、再編が再び動き出している。
【記事引用】 「日本経済新聞/2009年1月30日(金)/1面」