日系電子部品メーカー各社がベトナムでのものづくりを加速させている。
各社のベトナム工場では、電子部品のグローバル供給拠点として精力的に増産を進めており、今年後半から12年に向けても生産能力増強のための積極的な増産投資を計画する。
同時に、昨今の労働コスト上昇などに対応するため、生産性向上のためのさまざまな施策を推進し、高品質とコスト競争力強化の両立に向けた取り組みに全力を挙げる。
●戦略的製造拠点
日系電子部品メーカーにとって、ベトナムはローコストオペレーションのための戦略的製造拠点として、重要性が増している。
地域別では、北部のハノイ地区および南部のホーチミン地区を中心に、数多くの電子部品工場が集積、中部のダナン地区への進出企業も目立っている。
生産品目のアプリケーション別では、グローバル供給拠点として、デジタルAV機器や白モノ家電、携帯電話・スマートフォン、ノートPCなどの民生機器関係から事務機器、産業機器、車載用など、あらゆるジャンルの電子部品が製造ざれ生産品目の多様化も進んでいる。
一方で、最近のベトナムではインフレ率の上昇などを背景に、法定最低賃金の引き上げが例年の1回に対し、今年は2回(地域によっては3回)実施されるなど、労働コストの上昇も急ピッチで進んでいる。
今年10月に実施される最低賃金見返しでは、第1種地域(ハノイ市内、ホーチミン市内など)の最低貫金が200万ベトナム・ドン(約8千円)に引き上げられる。
このため、各社は生産効率向上への取り組みを一段と重視しており、省力化機械の導入やラインの見直しなどを通じた生産性改善に全力を挙げている。
JETRO(日本貿易振興機構)の発表によると、11年上期の日本のベトナムへの直接投資は、大規模案件の一服により金額ベースでは前年同期比74.4%減と減少したが、中小企業案件の急増で投資件数では86件(10年上期は43件)と倍増している。
ハノイ地区で造成中の「タンロンⅡ工業団地」をはじめ、大型工業団地の造成も相次いでおり、今後も外資系製造業のベトナム進出の加速が予想されている。
●精密組み立てNo.1拠点
パナソニック・エレクトロニックデバイスのベトナム工場「パナソニック・エレクトロニックデバイスベトナム(PEDV)」(ハノイ市)は、06年4月に設立。
AVチューナや通信モジュールなどの高周波部品、レンズアクチュエータなどの機構部品、マイクロスピーカなどの生産を行い、「モノづくりに徹する『精密組み立てNo.1拠点』を目指している」(貞野昌則GD=ゼネラル・ディレクター)。
さらに、同工場敷地内に新工場棟を建設し、スマートフォンなど高機能携帯端末向け樹脂多層基板「ALIVH」のベトナム生産を立ち上げる予定で、12年8月には月産350万台の同基板生産を予定する。
メイコーは、ベトナムで携帯電話用を主力としたプリント配線板の新工場立ち上げを進めている。
「メイコーエレクトロニクスベトナム」(ハノイ市)は06年12月に設立され、08年末から部品実装事業をスタート。さらに、10年からプリント配線板製造の全工程が行える新工場棟(PCB棟)の建設に着手し、12年1月からの試作開始を予定する。
ベトナム工場は、敷地面積約15万平方m(このほか宿舎約2万平方m)の広大な規模を持つ。
「12年の一貫生産スター卜時には、月産2万平方mのプリント配線仮生産を目指している。さらに長期の最終目標としてはこちらで月産35万平方m規模の生産を目標に置く。そのための基礎固めに今は全力で取り組んでいる」(木村利彦GD)。
【記事引用】 「電波新聞/2011年9月16日(金)/1面」