中国・華東、華北地域の日系電子部品メーカー各社は、中国国内市場に向けて中国工場を増強している。
世界の工場から世界の市場へと変貌する成長市場の中国の日系、欧米系、アジア系に加え、ローカルメーカーの電子部品需要も確実に取り込み、新工場、新棟の建設や設備の増設などで拡大を図る。
労働者の最低賃金が毎年10%台から高いところでは30%強に上昇し、地域によっては必要な労働者が確保できないなど、中国でのモノ作りの環境が大きく変化する中で、ラインの自動化、半自動化などの動きも加速している。
●海外工場拡大
村田製作所は、12年度に海外生産比率30%の実現に向けて既存の海外工場を拡大する。
主力のチップ積層セラミックコンデンサ(MLCC)は、一貫生産工場の無錫工場「無錫村田電子有限公司』に第4棟目の新棟「S棟・D棟』(延べ床面積4万3400平方m)を竣工、4月から本格生産に入る。
中国で需要が急増している同社初の海外生産となる容最2.2μF以上の2012サイズ品などの小型大容量や、0603サイズ超小型品の生産を開始、中華圏向けの供給を強化する。
無錫村田電子有限公司の窪田正明菰事長は「11年6月末に予定しているMLCCのグローバル生産量を10年3月末比で30%増産するうちの20%から30%をS棟・D棟の生産立ち上げで賄う」と言う。
このため、12年3月までに無錫工場だけで従業員を500人増員し、3600人にする予定。無錫工場で生産しているMLCCの6割を中華圏向けに供給する。
PTCサーミスタ、NTCサーミスタ、セラミックフィルター、トリマーポテンショメーター、SAWフィルター、携帯電話用アンテナを含め6割以上を中華圏向けに供給しているが、さらに引き上げていく計画。
4月からは中華圏で使われるサーミスタ、トリマーポテンショメーターなどの用途特定型部品の設計を無錫工場で始める。
●中国を最重点国に
ロームは、中国を最重点国に位置づけ、大連、天津の生産子会社を増強し、増大する中国国内の部品需要に対応する。連結売上高の中で、現在10%前後となっている中華圏比率をさらに引き上げていく。
モジュール製品の中核生産拠点である大連工場「ローム電子大連」では、プリントヘッド、コンタクトイメージセンサーヘッド、パワーモジュール、フォトリンクモジュールなどに加え、09年にLED照明の生産を開始。
サンプル出荷を始めた液晶テレビバックライト用LEDバーの生産にも乗り出している。
ローム電子大連の泰通栄志総経理は「ロームの中国戦略に沿って、適正なコストで必要なものを必要な時に中国のお客さまに提供できるモノ作りに磨きをかけている」と話す。
主力製品のサーマルプリントヘッドでは低品質感熱紙の使用が多い中国をはじめとする新興国市場向けに寿命を5倍に延ばした高耐久保護膜サーマルプリントヘッドを本格量産。
10年には増資し、免税で輸入できる機械設備の枠を拡大し、自動化設備の導入を進め、生産の自動化に取り組んでいる。LED照明もローム製自動機による自動化工程の導入で生産性を倍増。
LED電球はセル化を進め国際競争力を高めている.大量生産のパワーモジュールは、10年からU字ラインをIラインに変更。多機種持ちから多台持ちに、多能工化から単能工化に変え生産性を大幅に向上している。
●中華圏の売り上げ拡大
太陽誘電も中華圏の売上げ拡大を図っている。
携帯電話、ノートパソコン、携帯機器向けチップ積層セラミックコンデンサをけん引役に、10年度は08年度比2割以上伸びた09年度をさらに上回る売上げを中華圏で確保。
11年度も10年度比2ケタ増の売上げを中華圏で見込んでいる。
「春節で落ちた中国での受注が3月から回復している。今の受注状況から4月以降は、好調だった10年度上期並みの受注が見込めそうだが、東日本大地震による影響は慎重に見極める必要がある」。
蘇州工業圃区にある中華圏事業を統括している太陽誘電(中国)投資有限公司の堤精一武事長は、こう話す。
チップ積層セラミックコンデンサ(MLCC)の主力工場「太陽誘電(廣東)有限公司」で中国の需要が増大している0603サイズの生産を開始する。
既存の1005サイズ(~1μF)から2012サイズ(~10μF)のチップ積層セラミックコンデンサの拡販と併せて、0603サイズを一気に中国で販売していく。
【記事引用】 「電波新聞/2011年3月30日(水)/1面」