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電子部品、携帯電話の多機能化を牽引 3.9Gにらんだ部品開発活発化

2009-07-29 | 電子部品業界



 移動体通信の世代交代が加速している。

 主力の携帯電話は、大型タッチパネルや顔認識が可能な高解像度カメラなどを搭載してマルチメディア機能を高める一方、第3.9世代(3.9G)サービスをにらんだ部品開発が活発化している。

 「小型」、「低背」、「複合」、「省電力」をキーワードに、主要部品の開発動向を追った。


●本格的ネットワーク端末へ

 移動体通信機器は、大型画面や高解像度小型カメラ、ワンセグ機能、GPS、非接触ICカードによるモバイル決済サービス、音楽再生機能などを足がかりに暮らしに密着したマルチメディア端末へと進歩した。

 今後は、2010年末のサービス開始を予定している3.9Gサービスに向けて、本格的ネットワーク端末の色彩を強めていく見通しが強い。

 3.9G端末は下り通信速度が毎秒100Mビット前後と高速な上、事業者に関係なく端末を選択できるようになる見込み。
 
 09年4月には、日本と中国の間でその技術協力について合意したほか、6月には国内事業者4社への周波数割り当てと免許交付予定が発表されるなど、このところ動きが活発化している。

 中国との技術協力が進めば、6億5千万台といわれる世界最大の携帯電話市場への進出に弾みがつく。


●世代交代の先駆け

 こうした世代交代の先駆けとなるのが、大型タッチパネルや無線LANを搭載した多機能端末。

 3.5インチのタッチパネルと無線LAN接続、大容量メモリー、バージョンアップ可能な基本ソフト(OS)を組み合わせた海外製端末は08年、世界で1141万台を出荷した。

 これに追随する国内メーカーの新型端末の1つは、3.4インチタッチパネルと810万画素の顔認識機能付き小型カメラを搭載。無線LAN接続も標準搭載に近づいている。

 3.9G端末はこれらの通信速度を高め、操作性を一段と洗練させたものになる可能性が高い。

 半面、画像や音声を扱うマルチメディア系統の機能と高速通信機能を両立させるには、部品を小型。低背化しながら性能を改善し、同時に消費電力を抑えなくてはならない。


●標準化課題

 高感度で多機能のタッチパネルや、超小型の接続部品、受動部品、高周波部品、複数の高性能MPU(超小型演算処理装置)、高感度センサー、大容量のニ次電池などが不可欠。

 携帯電話に搭載するタッチパネルは、蓄えた電気の容量の変化を検出する静電容量方式が主流。押した力を検地する抵抗感圧方式に比べて操作感覚に優れ、複数点の同時接触も検出しやすいのが特徴。

 国内メーカーが量産する最新機種は、2本指で操作するマルチタッチ入力に対応し、パネル面をなぞる「パン」やパネル面をたたく「タップ」も可能。

 タッチパネルで問題となる透過性は最大93%と良好で、制御用IC(集積回路)もパネルの出力部と一体化して基板上の占有面積を抑えた。

 ガラス製とフィルム製があり、いずれも最大4インチまで量産可能。3.9G端末は事業者と関係なく自由に選択できることから、外部コネクターの標準化も課題となる。


●標準化進む外部コネクター

 欧州市場では09年6月、携帯電話機の充電器を「MicroUSB」に統一することで端末メーカー10社が合意した。

 充電器のコネクターは国内市場でも事業者ごとに標準化されているが、いずれは全端末が同一仕様になるものとみられる。コネクター各社にとっては強い追い風といえる。

 コネクターの複合化も急進展している。端末ごとの識別番号などを格納した「SIMカード」用コネクターは、外部メモリー用コネクターと一体化する傾向。

 両コネクターを個別に実装した場合に比べて、基板占有面積は30%ほど縮小するという。

 内部用コネクターは、小型・低背化に拍車がかかっている。ニ次電池を接続するコネクターは、オンボード(基板上に載せる)タイプでは業界最低背となる高さ2mmの新製品が注目される。

 基板同士を繋ぐフレキシブル・プリント基板コネクターでは、端子間のピッチを0.2mmに狭めた製品が業界最小。


●小型化と性能向上

 一方、コンデンサーや固定抵抗器、インダクターといった受動部品も、小型化と性能向上が同時進行している。

 これらの部品は、0.6×0.3mm(0603サイズ)、0.4×0.2mm(0402サイズ)など大きさによって定型化しており、チップ部品と呼ばれる。

 高周波回路から電源回路まで幅広く使われるチップ積層セラミックコンデンサーは、小型・低背化と大容量化、周波数特性を改善する低ESL(等価直列インダクタンス)化、低ESR(等価直列抵抗)化が著しい。

 MPUなどの電圧を制御する小型製品の1つは、高さを従来比40%削減して0.3mmに抑え、しかも低ESL仕様としている。


●複合化と高集積化

 高周波部品では、ブルートゥースモジュールの複合化、高集積化が目立つ。ブルートゥースはモジュールごとに認証を受ける必要があり、その点数が増えるとコストアップにつながる。

 携帯電話のオーディオ回路用に開発された新製品の1つは、アンテナを内蔵して占有面積と消費電力を低減、コストダウンにも貢献している。

 移動体通信は数年後、多くの高速無線が飛び交うユビキタス社会の中心に躍り出る。それを牽引するのは、先端技術を結晶させた電子部品である。





【記事引用】 「日経産業新聞/2009年7月28日(火)/11面


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