犬鍋のヨロマル漫談

ヨロマルとは韓国語で諸言語の意。日本語、韓国語、英語、ロシア語などの言葉と酒・食・歴史にまつわるエッセー。

チャジャンミョンの話③~カンチャジャンの謎

2007-03-16 00:03:40 | 食べる
 普通のチャジャンミョンカンチャジャンの違いは何か。

 ふと疑問になって,人に聞いたり,調べたりしてみました。明らかな違いは,前にも書いたとおり,普通のチャジャンミョンのほうは最初からチャジャン(味噌たれ)が麺の上にかかって出てくるのに,カンチャジャンのほうは,チャジャンと麺が別々に出てくるところ。

 韓国人に聞いても,それ以上の答が返ってくることは少ない。

 ネットで調べてみると,普通のチャジャンミョンが,水に溶いた片栗粉を入れて味噌だれを作りおきしておくのに対し,カンチャジャンのほうは,注文をうけるたびに材料を油で炒める(水+片栗粉を加えない)とのこと。

 その結果,普通のチャジャンミョンよりややこってりしている。出し方だけではなく,製法の違いもあったのですね。

 では,カンチャジャンの「カン」は何者か。

 周囲の韓国人に聞いてもわからないし,ネットでちょっと調べても,見つからなかった。

 そこで,ちょっと推理してみることにしましょう。

 まず,「カン」を漢字語と見るか,固有語と見るかによって,推理の方向が違ってくる。
「チャジャン」が漢字語なので,漢字語のほうが相性がよさそうな気がする。韓国語でカンと発音する漢字は,代表的なもので

 干,刊,肝,姦,看,間,幹,簡

 そのうち,ありそうにないものを除くと,

 干,肝,間,簡

あたりに絞られる。

干チャジャン:干物が入っている? 

肝チャジャン:豚のレバーが入っている? あるいは食べると肝臓にいい?

間チャジャン:間食(カンシク=おやつ)向きのチャジャンミョン? 

簡チャジャン:簡便(=手軽)なチャジャンミョン? 

 どれもちょっと違うみたいです。

 では,「カン」が固有語だとすると,まず考えられるのが,「塩加減」という意味の「カン」。

 カヌル ポダ:塩加減をみる。
 カン マッチュダ:ほどよく味付けをする,塩味をきかせる。

 では,カンチャジャンは,普通のものよりも塩味のきいたチャジャンミョン? そんな感じはしないが…。

 次に「カン」が動詞の変化形(冠形形)だとしてみましょう。この場合もいくつかの可能性がある。

 まず「カダ」の過去冠形形の「カン」。

 カダは,行く,(手間が)かかる,(お金が)かかる,(時間が)経つ,(食べ物が長い時間品質が変わらずに)もつ,(味が)落ちる,死ぬ。

行ったチャジャンミョン(意味不明)

手間のかかったチャジャンミョン(ありうる)

お金がかかったチャジャンミョン(確かに)

時間が経ったチャジャンミョン(×)

長持ちするチャジャンミョン(△)

味の落ちたチャジャンミョン(×)

死んだチャジャンミョン(意味不明)

「カン」はまた,動詞「カルダ」の冠形形でもあります。カルダの意味は,(古いものを新しいものに)取り替える,(刀を)研ぐ,みがく,(臼などで)ひく,(田畑を)耕す。

取り替えたチャジャンミョン(皿を違えたってことなら…)

研いだチャジャンミョン(品質を高めたという意味なら…)

耕したチャジャンミョン(たしかに普通よりもっと耕すように混ぜなければならないが…)

 うーん,決定版がありませんね。

 いちおう,個人的に納得度が高い順に並べると,

①カンを「塩加減」と見て,「ひと味くわえたチャジャンミョン」

②カンを手間がかかるという意味の「カダ」の冠形形とみて,「ひと手間かけたチャジャンミョン」

③カンを「耕す」のカルダの冠形形と見て,「耕した(自分で混ぜた)チャジャンミョン」

あたりでしょうか。


コメント (2)    この記事についてブログを書く
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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
久々に (misuk)
2007-03-16 01:31:49
記事を読んで爆笑しましたー。
ああ、面白かった。

このまま真実がわからないほうがいいような。。。
返信する
真実 (犬鍋)
2007-03-16 06:07:17
実は真実がわかってしまったんです。

それはシリーズ第5回でとりあげる予定。
返信する

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