犬鍋のヨロマル漫談

ヨロマルとは韓国語で諸言語の意。日本語、韓国語、英語、ロシア語などの言葉と酒・食・歴史にまつわるエッセー。

あらためて「とんかつ」を考える

2024-05-27 22:22:11 | 食べる
写真:とんかつ和幸「ヒレロース盛り合わせ御膳」

 週末、とんかつを食べに行きました。

「とんかつ和幸」玉川上水店

 この店のとなりに「さき亭」という名前の天ぷら屋さんもあります。経営はやはり「和幸」で、駐車場は共用です。

 3か月ほど前に、さき亭に行ったときの記事はこちら。

生卵のてんぷら

 とんかつがとても好きだというわけじゃないんですが、当ブログではとんかつをテーマに書いた記事がけっこう多い。

〈過去記事〉

トンカツは日本料理?



トンカツ・スントゥブ鍋

 今回、あらためて「とんかつ」の表記について考えてみました。

 三省堂国語辞典をひいてみると、見出し語は

とんカツ【豚カツ・トンカツ・とんかつ】

となっています。

 とんかつの「とん」は、漢字の豚。「かつ」はカツレツのカツ。カツレツは英語のcutletですが、もとをたどればフランス語のcôtelettes (コートレット)で、いずれにしても外来語だから、カタカナ書きが正しい。

 見出し語として「とんカツ」を採用している理由です。

 表記としては、 とんカツ以外に、豚カツ、トンカツ、とんかつの3つが挙がっています。しかし、豚かつ、トンかつはない。

 一方、「てんぷら」のほうは…

テンプラ〔ポtemperoからという〕【天麩羅・天婦羅・天ぷら・てんぷら】

 語源がポルトガル語で、外来語なので見出し語はカタカナの「テンプラ」。表記として、テンプラ以外に、天麩羅、天婦羅、天ぷら、てんぷら天プラはありません。

 とんかつの表記について、NHKがウェブ上でアンケートをしたことがあるそうです。

 とんかつ・トンカツ・とんカツ・トンかつ・豚かつ・豚カツという選択肢を示し、「自分で使うことのある書き方」を複数回答可で挙げてもらうと、

とんかつ:80%
トンカツ:78%
豚カツ:33%

(とんカツ・トンかつ・豚かつは不明)

 とんかつがわずかな差でトンカツをおさえ、一番人気。

 国語的に正しい「豚カツ」はあまり人気がない。

 実際、店の名前、看板、メニューでは「とんかつ」を採用しているところが多いと思います。

 テンプラはアンケートがありませんが、「テンプラ」とカタカナ書きする人はあまりいないのではないでしょうか。

 とんかつと天ぷらを比べると、天ぷらは江戸時代からあるのに、とんかつのほうは明治時代で、比較的新しい。

 発祥については諸説あるようですが、1895年(明治28)創業の銀座「煉瓦亭」が1899年に「豚のカツレツ」をメニューに載せたとか、1929年(昭和4)に上野のポンチ軒が、いまの形の「とんかつ」を売り出したとか。

 最初は「洋食」の一つで、切っていない状態で出てきて、自分でナイフとフォークで切る。それにスープ+ライス(皿)がつく。

 こういうスタイルは、「とんかつ」というより「ポーク・カツ」というほうがしっくりきます。

 今の標準的なスタイルは、出てきたときすでに切られていて、箸でいただく。付け合わせは大量の千切りキャベツ。茶碗のごはんに、しじみのお味噌汁に香の物。

 完全に和食スタイルですね。

 和食化が進むにつれ、豚カツ→トンカツ→とんかつと、表記が変遷してきたのかもしれません。

 和食化した外国料理に、ラーメン、餃子があります。

 漢字文化圏発祥なので、餃子は「ギョーザ・ぎょうざ」よりも漢字をそのまま使った餃子が優勢。

 一方、ラーメンは、「拉麺」という漢字もありますが、カタカナ書きが普通。「支那そば」は、「支那」が差別用語認定されたため、使われなくなりました。

 話を「とんかつ和幸」に戻すと、こちらは衣がたっぷりついているスタイルで、とてもボリューミー。

「ヒレロース盛り合わせ御膳」に、カニクリームコロッケとチーズ入りメンチカツの単品を追加し、妻とシェアしたのですが、多すぎた。珍しく、ごはんを残してしまいました。



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