
写真:無罪判決直後の李在明氏(中央日報)
大方の予想では、韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領に対する、憲法裁判所の弾劾審判の宣告が、私の出張中にありそうだ、ということでした。しかし、出張から帰った次の週にも、宣告日は公表されませんでした。
そうこうしているうちに、野党ともに民主党の代表、李在明(イ・ジェミョン)氏に対する公職選挙法違反容疑の控訴審の判決が下されました。
一審で有罪が宣告されていて、これが最高裁で確定されれば、李在明氏は被選挙権を10年間停止され、もし尹大統領が罷免されても李在明氏は大統領選挙に立候補できなくなります。
ところが、大方の予想を裏切って、李在明氏に逆転無罪判決が下されたのです。
与党支持の保守系メディアは反発、野党支持の進歩系メディアは歓迎と、評価は分かれました。
朝鮮日報社説
韓国最高裁は共に民主・李在明代表の逆転無罪判決を破棄して自ら判断を
中央日報社説
李在明民主党代表の2審無罪…すべての疑惑の免罪符ではない
ハンギョレ社説
韓国最大野党代表、選挙法違反裁判で無罪、「政治検察」の起訴が有罪だ
李在明代表は、大庄洞開発の実務担当者だった故キム・ムンギ氏と2015年にニュージーランドに出張したのですが、そのときに撮った集合写真について、「キム・ムンギ氏とゴルフはしていない。写真は与党の関係者による捏造だ」と李代表が言ったのが「虚偽の発言」とされていました。
ところが判決では、「(李在明代表とキム・ムンギ元所長が写った)写真の原本は10人が一緒に撮影されているので、ゴルフをした証拠を裏付ける資料とは言えず、原本の一部を切り取ったため捏造と考えられる」とし、李代表は「虚偽の発言をしていない」という判断を下したのです。
ふつう捏造(韓国語では造作조작)といえば、その場のいなかった人物を別の写真からコピペして、あたかもその場にいたかのように装うと思うでしょう。ところが裁判所は、全体写真をトリミングしたものを「捏造」と呼んでいるんですね。
チョジャク(操作・造作)
この写真を最初に公開した野党・改革新党の李基仁(イ・ギイン)最高委員は、「スピード違反のカメラに写ったナンバープレートは全て拡大したものだ。拡大した写真が全て捏造なら、罰金は払わなくてもよいのか」と批判しているそうです。(リンク)
今回の判決は、「李在明氏無罪」という結論を先に決めておき、それに合わせて無理やり論理を組み立てたようです。
野党側は、あたかも無罪が確定したかのようにはしゃいでいますが、この判決は控訴審のもの。検察は直ちに上告しましたから、最終的に大法院(最高裁)の判断を待たなくてはなりません。
ここで思い出されるのは、朴裕河(パク・ユハ)氏の「帝国の慰安婦裁判」。一審で無罪が出た後、控訴審で逆転有罪、大法院で無罪差し戻しになり、そのまま無罪が確定したものです。
朴裕河名誉教授の法廷闘争
今回の控訴審判決は野党支持の裁判官による不自然な判決という印象がぬぐえない。「帝国の慰安婦裁判」のようなまっとうが判決を、大法院に期待します。
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