図版:いろは歌(Wikipedia)
アルファベットというと、英語の「ABC…」が思い浮かびます。
でも、「アルファベット」の語源は、ギリシャ語の「アルファ・ベータ」。
もともとギリシャ文字のことだったのですね。(さらに遡ると「フェニキア文字」だったということですが…)
言語学的には、表音文字のなかの音素文字のこと。
この定義に従えば、ギリシャ文字、英語などのラテン文字、ロシア語のキリル文字、タイ文字、ミャンマー文字なども、全部アルファベットということになります。
日本語のかなは、子音と母音にわけることのできない「音節文字」なので、アルファベットではない。
韓国語は、やはり音節文字ですが、1文字をさらに子音記号と母音記号に分析できるので、一種のアルファベットといえるかもしれません。
ひらがなの一覧としては、五十音図が一般的。でも昔は「いろは…」というのもあった。
若い世代は、「いろは歌」を全部言えない人が多いかもしれません。これはかな47文字を重複せずに並べたもので、しかも全体が七五調の歌となっていて、意味をもっているという優れもの。
いろはにほへと ちりぬるを
わかよたれそ つねならむ
うゐのおくやま けふこえて
あさきゆめみし ゑひもせす
色は匂へど 散りぬるを
我が世誰ぞ 常ならむ
有為の奥山 今日越えて
浅き夢見し 酔ひもせず
現代語訳はネットに何種類か載っていますが、だいたい次のような感じ。
花の色は美しく映えても
花は散ってしまうものだ
私たちの世の誰が
ずっと変わらずにいられるか
いろいろなことの起こる人生の奥深い山を
今日も越えていく
浅い夢など見ない
心を惑わされもしない
歴史的仮名遣いでは、濁音(有声音)・拗音(ゃゅょ)・撥音(ん)・促音(っ)は表記上使われなかったので、上記47字で当時の仮名のすべて網羅していたといえます。
いろは歌は千年ぐらい前に作られたそうで、作者は伝わっていません。
ラテン文字やギリシャ文字の「アルファベット」は、よく知りませんが、いろは歌のように「意味がある」ようには思えません。
いろは歌とは似て非なるもの。いろは歌のほうがずっと優れていると思います。
ほぼ同じ時期に成立したと言われる五十音図は、インド(サンスクリット)の音声学をもとにした機械的な配列。
いろは歌のほうが味がありますが、現代では忘れられつつあるのが残念です。
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