図版:光合成の化学式
少し前に、朝ドラ「らんまん」の主人公、槙野万太郎のモデル、牧野富太郎の「ムジナモ発見物語」という文章を紹介しました。
少し前に、朝ドラ「らんまん」の主人公、槙野万太郎のモデル、牧野富太郎の「ムジナモ発見物語」という文章を紹介しました。
ムジナモ発見物語
ドラマの中では、東大植物学教室の助教授、学友たちが、万太郎の持ってきた珍しい水草を囲んで会話を交わします。
「根がないなあ」
「光合成だけで栄養を得ているんだろうか」
そこへ田邊教授が通りかかり、それがイシモチソウ科に属するアルドロヴァンダ・ベンクローサであることを示唆します。
この水草は、水中のミジンコなどを捕らえて自らの栄養とする、食虫植物でした。光合成だけでなく、虫からも栄養を得ていたわけです。
ところで、植物の生長にとって、太陽の光が重要であることは、大昔から知られていました。
しかし、なぜ植物の生長に太陽光が必要なのか、植物がどうやって太陽の光を利用して養分を作り出しているか、そのメカニズムが明らかになったのは、比較的最近のことです。
「光合成」の研究史を簡単にまとめると…
まず、18世紀に、植物が「汚れた空気」を浄化するらしいことが発見され、そのためには「光」が必要であることがわかりました。
19世紀に入って、植物は二酸化炭素がないと生きられないことがわかり、さらにその二酸化炭素は根からではなく、葉から吸収されることが発見されました。
1862年、ドイツのユリウス・フォン・ザックスは、植物は日光に当たると二酸化炭素からデンプンを合成し、それで生長していることを発見。
1893年、アメリカのチャールズ・バーネスは、Photosynthesis(光合成)という言葉を作り、論文中でその定義を発表しました。
光合成は、Photosynthesisの訳語です。
生物学者、科学史家の鈴木善次 (大阪教育大学名誉教授)によれば、1931年初版の『生物学大観』(石川光春著)に「光力的合成」という言葉があり、脚注にPhotosynthesisとあることから、これがPhotosynthesisの訳語であることがわかります。(科学の歩みところどころ)※ なお、この資料にはPhotosynthesisという言葉が作られたのが1898年となっており、さきほどにもの(ウィキペディア)と違いがあります。
そして、坂村徹『植物生理学』(1945年、裳華房)には、「炭素同化作用…光合成作用とも称せられる」という記述があり、このころには「光合成」という訳語が定着しつつあったと思われます。
ところで、牧野富太郎がムジナモを発見したのは明治23年(1890年)。日本に「光合成」という訳語はなく、そもそも Photosynthesisという言葉さえなく、その定義もはっきりしていなかったころです。
なので、ドラマの中で槙野万太郎が、「光合成だけで栄養を得ているんだろうか」と発言することもあり得ない。
光合成は、今では小学校の理科で習う内容です。
光合成:植物が、太陽光を受けて、水と二酸化炭素から、デンプンと酸素を作る働き
1890年の「東大植物学教室」では、光合成がどの程度理解されていたのかも気になります。
ドラマの中では、東大植物学教室の助教授、学友たちが、万太郎の持ってきた珍しい水草を囲んで会話を交わします。
「根がないなあ」
「光合成だけで栄養を得ているんだろうか」
そこへ田邊教授が通りかかり、それがイシモチソウ科に属するアルドロヴァンダ・ベンクローサであることを示唆します。
この水草は、水中のミジンコなどを捕らえて自らの栄養とする、食虫植物でした。光合成だけでなく、虫からも栄養を得ていたわけです。
ところで、植物の生長にとって、太陽の光が重要であることは、大昔から知られていました。
しかし、なぜ植物の生長に太陽光が必要なのか、植物がどうやって太陽の光を利用して養分を作り出しているか、そのメカニズムが明らかになったのは、比較的最近のことです。
「光合成」の研究史を簡単にまとめると…
まず、18世紀に、植物が「汚れた空気」を浄化するらしいことが発見され、そのためには「光」が必要であることがわかりました。
19世紀に入って、植物は二酸化炭素がないと生きられないことがわかり、さらにその二酸化炭素は根からではなく、葉から吸収されることが発見されました。
1862年、ドイツのユリウス・フォン・ザックスは、植物は日光に当たると二酸化炭素からデンプンを合成し、それで生長していることを発見。
1893年、アメリカのチャールズ・バーネスは、Photosynthesis(光合成)という言葉を作り、論文中でその定義を発表しました。
光合成は、Photosynthesisの訳語です。
生物学者、科学史家の鈴木善次 (大阪教育大学名誉教授)によれば、1931年初版の『生物学大観』(石川光春著)に「光力的合成」という言葉があり、脚注にPhotosynthesisとあることから、これがPhotosynthesisの訳語であることがわかります。(科学の歩みところどころ)※ なお、この資料にはPhotosynthesisという言葉が作られたのが1898年となっており、さきほどにもの(ウィキペディア)と違いがあります。
そして、坂村徹『植物生理学』(1945年、裳華房)には、「炭素同化作用…光合成作用とも称せられる」という記述があり、このころには「光合成」という訳語が定着しつつあったと思われます。
ところで、牧野富太郎がムジナモを発見したのは明治23年(1890年)。日本に「光合成」という訳語はなく、そもそも Photosynthesisという言葉さえなく、その定義もはっきりしていなかったころです。
なので、ドラマの中で槙野万太郎が、「光合成だけで栄養を得ているんだろうか」と発言することもあり得ない。
光合成は、今では小学校の理科で習う内容です。
光合成:植物が、太陽光を受けて、水と二酸化炭素から、デンプンと酸素を作る働き
1890年の「東大植物学教室」では、光合成がどの程度理解されていたのかも気になります。
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