犬鍋のヨロマル漫談

ヨロマルとは韓国語で諸言語の意。日本語、韓国語、英語、ロシア語などの言葉と酒・食・歴史にまつわるエッセー。

脱北民の受難 1

2019-10-04 11:31:29 | 韓国雑学
 今年の7月、北朝鮮を脱出した韓国に住んでいた母子が、経済的に困窮して餓死したという事件がありました。それが、文在寅政権による「人災」であることを告発する記事です。

スカイデイリー2019年9月30日(リンク

人権の死角地帯に追いやられた脱北民たち(上-女性)
強制結婚・性奴隷の被害にあった脱北女性たち、韓国でもつらい思い

脱北ブローカー、人身売買を経てたどりついた自由の国、韓国の無関心に「またもや挫折」

 脱北民母子の死で、韓国民が、韓国に定着した脱北民の現実に関心を持ち始めた。脱北民のほとんどは、豊かで自由な社会への夢と希望を抱いて、命がけの脱出を試みた人々だ。それを考えると、今回のハン・ソンオクさん母子の事件は、脱北民にとっても、韓国民にとっても、大きな衝撃だ。脱北民定着のための制度が整えられ、福祉政策が行われている韓国社会のどの部分に穴があったのだろうか。脱北女性たちは、ブローカーによる人身売買、強制結婚、売春などの罠をかいくぐって韓国社会にたどりついたが、定着の過程で困難に見舞われていることがわかった。特に文在寅政権発足後、脱北民に対する支援がだんだん手薄になってきており、就職の難しい脱北女性や青年は、生活苦にあえいでいる。スカイデイリー紙は、脱北民母子餓死事件をきっかけに社会問題として浮かびあがった脱北民の劣悪な実態を「今週のテーマ」に選び、三回にわたって取り上げる。

【特別取材チーム=パク・ソンオク部長、キム・ジンガン、ペ・テヨン、イム・ポリョン記者】

 今年の7月31日、脱北民の母子が、家の中で食べ物が尽きた状態で亡くなっているのが発見されてから、国会議員や脱北民関連団体は脱北民の実態に注目するようになった。痛ましい事件の原因の分析と、再発防止策のための議論が行われた。

 9月4日、国会議員会館で開かれた第2回北朝鮮人権法の授賞式には、国会人権フォーラム、韓半島人権と統一のための弁護士の会(韓弁)、脱北母子市民葬儀委員会の共同主催で、脱北民定着支援政策に関し、熱のこもった討論を行った。

 脱北民母子餓死事件は、脱北民、特に女性の脱北民が、北朝鮮脱出から韓国社会に定着するまでのそれそれの段階で起こりうる悲劇的な状況が重なった結果だ、と結論づけられた。故ハン・ソンオクさんは、ほとんどの脱北女性がたどったような経路で、脱北ブローカーにより中国で人身売買され、中国の男性と強制結婚させられた後、苦労して韓国に渡ってきて、韓国社会への定着を試みたが、結局、残念な死を迎えた。

 今年の6月現在、韓国に入国した脱北者の数は計3万3022人。その72%にあたる2万3786人が女性だ。女性の数が圧倒的に多いのは、北朝鮮の女性が経済的・社会的弱者として、人間として享受すべき基本的な生存権が剥奪されてきたからだ。

 スカイデイリー紙は、自由を求めて長い道のりを辿って韓国に定着した脱北女性とのインタビューを通じ、彼らが北朝鮮脱出と韓国定着の過程で直面しなければならなかった共通の問題を探った。インタビューに応じた脱北女性たちは、一様に、実名と顔が公開されることを拒んだ。身分が明らかになると、北朝鮮に残っている家族の身に危険が及ぶからだという。

脱北女性たちの険しい旅程、

脱北ブローカー → 中国人身売買業者 → 強制結婚、風俗店

 北朝鮮から脱出するためには、ふつう、脱北ブローカーの手を借りる。8年前、ブローカーを介して脱北したキム・キョンファさん(仮名、28歳女性)は、当時、ブローカーに払う費用は5000元だったと述べた。だが、ブローカーが両親の知り合いだったため、4000元だけ払って川を渡ったそうだ。中国に入ると、ブローカーは女性を中国人に引き渡し、金を受け取る。彼女たちを買い取った中国人は、結婚を望む中国人男性や風俗店に転売する。

 金さんは、「私は運がよかった」、「ほかの場所に送られずに、その中国人の家に数か月間とどまった」と語る。さらに「いっしょに脱北したほかの女性たちは風俗店に売られたようだ」、「その後もときどき北朝鮮から女性が来たが、中国人の家にしばらくいてから、どこかに送られていった」と振り返った。

 なぜ金さんが運がよかったかというと、中国人夫婦が美人の彼女を気に入り、自分の息子と結婚させたがったからだ。彼女は「あるとき中国人夫婦が自分たちの息子の話をし始めたので、私を息子と結婚させようとしているのだと気づいた。私は死ぬよりも嫌だった」と語った。

 彼女は、望んでいない結婚を免れるために時間稼ぎをする一方、以前、脱北して中国に定住していた遠い親戚を探し、連絡先を調べた。金さんは、「親戚が来て、私を買い取って連れ帰ってくれたが、人身売買団の夫婦は、自分たちがブローカーに払った金額の3倍を要求した」と述べた。彼女は、自分がそこにそのままいたとしたら、中国人男性とむりやり結婚させられるか、他の風俗店に性奴隷として売られただろうと語った。

脱北女性の60%が性奴隷に転落、精神的な傷を一生涯抱えて生きることに

 性奴隷として売られた脱北女性たちの人権蹂躙の実態については、英国の民間団体「コリア未来計画(Korea Future Initiative)」が英国下院に提出した『性奴隷たち:中国内北朝鮮女性と少女たちの売春、サイバーセックス、強制結婚(SEX SLAVES; The Prostitution、Cybersex & Forced Marriage of North Korean Women & Girls in China)』という報告書で明らかにされ、国際社会に衝撃を与えた。

 レポートによれば、北朝鮮の女性の約60%が中国で人身売買団によって性奴隷として売られている。中国人男性と強制結婚させられるケースは、むしろ恵まれているといえるかもしれない。しかし、中国人男性と結婚しても、奴隷のような生活をすることに変わりはない。

 脱北女性と子どもの人権保護などを目指す民間団体「飛び石」の金ヒョンス共同代表によると、中国で人身売買された脱北女性たちは、ふつう、中国人男性との望まない結婚と出産によって「奴隷と変わらない人生」を強要される。ある脱北民は、売られていく脱北民女性たちが中国で「豚」と呼ばれていると明かした。亡くなったハン・ソンオクさんも、中国人男性と強制結婚させられて子供を産み、夫の暴力や虐待に苦しめられ、逃げるように韓国にやって来たケースだ。

 今月21日、ハンさん母子の市民葬が行われる前、光化門に設けられた焼香所には、脱北女性たちが同病相憐むように、痛みをなぐさめあっていた。スカイデイリー紙が会った金ヨンヒさん(仮名、48歳女性)は、「脱北女性のほとんどが中国に人身売買されていく」、「中国や他の海外へ人身売買され、短くても5年、長ければ10年以上、隠れて生きているため、心理状態が非常に不安定だ。いつも隠れて、生命の危機にさらされているからだ。このため、韓国に渡ってきたあともトラウマに悩まされている」と述べた。

 さらに「豆満江や鴨緑江を越えたとき、約80%以上の女性が人身売買される。公安に捕まったら北に送還される。ひとたび中国に行くと、中国語がわからないので、生き延びるためにはブローカーの言うことをきくほかない」、「脱北女性は、ブローカーから中国人の人身売買団に引き渡されるしかない状況だ」と訴えた。

 彼女は、「人身売買されて、望んでいない結婚をして子どもを産めば、たいていは暮らしが苦しくなる。しかし、夫のことを好きであれ嫌いであれ、子どもをもつ母として、捕われの身であっても、ただちに命が脅かされたり危険を感じたりするわけじゃなく、食べるものも住むところもあるなら、我慢する。私たちのように韓国に来ることができるなら、子どももいっしょ連れて来たいが、中国人の夫は「俺はお前をいくらの金を出して買ったと思ってるんだ」と言って、子を連れて行くなら、自分たちもいっしょに連れて行けと脅迫する」と説明した。

 もう一人の脱北女性、パク・ヒョンジャさん(仮名、47歳女性)は、「一面識もないハンさん母子の悲劇的な死のニュースを聞いて、その場で泣き崩れてしまった」と目を赤くした。「ここ(焼香所)を訪ねてくる脱北女性は、みな同じように号泣していた」と、彼女たちだけが感じられる同病相憐む痛みを示唆した。

政府の机上の行政に挫折する脱北民女性たち、「故ハン・ソンオクさん母子の死は、社会が生んだ悲劇」

 ほとんどの脱北女性は、困難の末にやってきた韓国の地に定着する過程で、さらに大きな困難にぶつからなければならないと口をそろえる。特に子供がいたり、体が丈夫でなかったりする女性にとって、基本的な生活を維持する仕事を見つけるのは難しいという。故ハンさんの場合も、病気の幼い息子を預けるところがなく、まともな仕事を見つけられなかったことが分かった。

 パク・ヒョンジャさんは、「故ハン・ソンオクさんは、2年間、携帯電話も持てなかった。北朝鮮で餓死しそうになり、命がけで自由を求めて大韓民国に来たが、誰も助けてくれなかった」と残念がった。

 「ソンオクさんは区役所に助けを求めましたが、書類の不備で支援を断られました。支援を拒否されたときの挫折感はいかばかりだったでしょう。さんざん苦労してここまできたのに、誰にすがることもできないのか、という気持ちになったことでしょう。病気の子どもを連れて生きなければならないのに、これさえも居住して10年が過ぎ、医療保護1種の恩恵も終わってしまいました。月10万ウォンで生活するハンさんが、一般の保険で子供の面倒をみることができたでしょうか」と怒りを爆発させた。

 隣にいたイ・ジョンボクさん(仮名、47歳男性)も同調した。彼は「私の知っているある脱北女性は、特別養護老人ホームで働いていたが、甲状腺癌になり、仕事を辞めることになった。1年ほどしか仕事をしていないので、基礎生活受給費を申請したが、仕事のできる若さ(45歳)だと、拒否された」と説明した。

 さらに「手術費を準備するためにアルバイトなどを転々してお金をため、手術しようとしたが、体がとても弱っていたため、手術を受けも生きられないというのだ。もっと栄養をとってから来なさい、と言われて、4回も手術が延期された。栄養をとるために、それまでに貯めたお金を使い果たし、手術費がなくなったので、また手術も延期され、結局今年の3月20日に手術を受け、再び基礎生活受給費を申請したが、また拒否された」と付け加えた。

 イさんは、「放射線抗癌治療を受けなければならないが、お金がないので、一般的な物理治療を受けた。私が担当刑事に聞くと区役所に緊急救済申請をしろというので、そのように助言したが、その後彼がどうなったか分からない」、「政府の机上行政による無関心のせいで、脱北民が福祉の死角地帯に追いやられている」と述べた。

 先にインタビューに応じた金ギョンファさんは、「これまで区役所からも、どこからも、一度も連絡が来たことはなかったが、ハン・ソンオクさんの事件が起きて、やっと区役所の担当者が電話をしてきて、何事もなく元気に暮らしているかを聞いてきたことがある」、「もっと前に関心を持って管理をしていたら、こうした悲劇を未然に防ぐことができたのではないか」と批判した。

 実際、脱北民の約80%が健康上の問題を抱えているため、就職率も38.9%と、低くならざるをえない。実に40.3%が貧困層に属し、子どもがいる場合、育児や教育でも困難を経験することが分かった。ソン・グァンス、第3代南北統一財団理事長は、「今後、福祉の死角地帯で不幸な死を迎えた故ハン・ソンオクさん母子のような、痛ましい死の再発防止のために、国会での脱北民定着支援体制の総合的な見直しが必要だ」と強調した。
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2 コメント

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Unknown (スンドゥブ)
2019-10-13 21:07:05
人権に鈍感な国は金があっても開発途上国😓
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南北が統一すると (犬鍋)
2019-10-14 16:14:25
脱北民が何百万人も南に押し寄せるはずだけど…。

心配です。
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