犬鍋のヨロマル漫談

ヨロマルとは韓国語で諸言語の意。日本語、韓国語、英語、ロシア語などの言葉と酒・食・歴史にまつわるエッセー。

花いちもんめは慰安婦強制動員の歌?

2021-07-03 23:01:28 | 慰安婦問題
 韓国の文在寅大統領の支持率が低迷しています。力を入れてきた南北関係改善は一向に進まず、国内では不動産価格の鎮静化に失敗、強硬な反日路線も必ずしも支持を得られていない。日本製品不買運動は失速し、日本のビールや車は販売が回復しつつあります。

 文大統領のレームダック化が進む中、国民の関心は次期大統領選に向かっています。文大統領の仇敵、前検事総長の尹錫悦(ユン・ソギョル)氏が名乗りを上げ、与党からは反日として知られる李在明(イ・ジェミョン)京畿道知事が出馬宣言をしました。

 李在明は、今年の三一節の演説で、「親日派をあぶり出して日帝残滓を清算する」、「今年を京畿道の『親日清算元年』とし、歴史を正しく立て直す」ことを主張しました。

 7月2日の朝鮮日報に、こんな記事が載りました(リンク)。

教室内の太極旗も「親日残滓」、撤去対象に=京畿教育庁
「親日残滓清算プロジェクト」施行
20の事業を税金7億5000万ウォンで支援


 京畿道と京畿教育庁は2019年から「親日残滓清算プロジェクト」を進めている。光復会の金元雄(キム・ウォンウン)会長の「ソ連は解放軍、米国は占領軍」発言の動画も、このプロジェクトの一環だった。李在明京畿道知事は今年の三・一節記念演説で「親日の行状が確認された作曲家の作った『京畿道の歌』を廃止したように、今年を京畿道親日清算元年にしたい」と発言した。

 これにより、教育現場の各種用語・文化・制度などが変わっている。京畿道の第一線の学校で小学生の保護者などに配る「家庭通信文」を見ると、教室の正面に掲げられた太極旗の額も「日帝への忠誠心を強要したことに由来する」として、撤去の対象に挙げられた。応援スローガンの「ファイティング」は、第2次大戦当時の日本軍の出陣スローガンだったという理由から、韓国語の「うまくやろう」「がんばれ」に言い換えないといけない。東西南北などの方角や「第1」などの順序が入った校名も、日帝残滓であって変えるべきだと京畿道教育庁は表明した。家庭通信文には、このほかにも「修学旅行」「遠足」「修練会」も日帝残滓だから「文化探訪」「現場体験学習」「リーダーシップキャンプ」などに変えるべきで、『うちになぜ来たの』『尻尾取り』『碑石打ち』遊びも慰安婦の強制動員を合理化しようとする遊びだったので教科書から削除すべき――といった内容が含まれていた。
(以下略)


 「ファイティングが、第2次大戦当時の日本軍の出陣スローガンだった」とは知りませんでした! 英語が敵性言語として排斥されていた時代に、「ファイティング」という外来語が、よりによって出陣式に使われていたとは!

 「慰安婦の強制動員を合理化しようとする遊び」といういのも初耳です。(※合理化とは、正当化を意味する韓国式表現です)

 調べてみたところ、「うちになぜ来たの」という韓国の遊びのことを言っているようです。

 これについて解説しているSBSのニュース番組(2019年5月21日)がYouTubeにアップされていました(リンク)。

「花が慰安婦?」…「うちになぜ来たの?」という遊びの由来調査に着手
SBS/チュ・ヨンジンのニュースブリーフィング

字幕:なつかしい遊び、「うちになぜ来たの?」

字幕:ところが…、この遊びが慰安婦強制動員と関係があるって?


イム・ヨンス郷土博物館長:日本の遊びの学者たちと交流があるが、彼らも「これは慰安婦の遊びだ」と…


イ・サンホ伝統遊戯研究家:長い間受け継がれてきたものなのに、急に「慰安婦の遊び」だなんて。根拠ないでしょう、まったく。

字幕:はないちもんめ 花が慰安婦? 連れて行こうと探しに来た?

字幕:
わが国の伝統的な遊びが、ほんとうに慰安婦と関係があるのか?

キャスター:私も子どものころ、近所の友だちといっしょに歌ったことがあります。ですが、この遊びが慰安婦強制募集を描いた遊びだという問題提起があったそうです。これが事実だとしたらほんとうにショッキングなことですが、今日は、これを検証したいと思います。

記者:最近、何人かの民俗学者たちが、「うちになぜ来たの?」という遊びが慰安婦強制動員を描いたものだという主張をしきりにしています。そして、教育部に民願(住民が行政機関に行う要望)を提起したんです。「この歌が教科書に載っているけれども、不適切な内容なので、削除すべきではないか」と。

キャスター:具体的にはどんな主張なのですか?

記者:私が取材した時、この方は800ページにも及ぶ関連資料を見せながら説明してくれましたが、根拠は次のようなものです。「うちになぜ来たの?」という遊びは日帝強占期(日本帝国主義強制占領期:植民地時代の韓国における呼称)に始まったこと、歌詞の一部が慰安婦強制動員を描いており、またこの歌が、わが国だけでなく、中国やベトナムでも歌われているのですが、これらの地域はちょうど日本軍がかつて駐屯した地域と一致する、こうした類似性を見ると、この歌が慰安婦強制動員を描いているのではないか、と主張しているのです。また、日本の学者たちも一部そのような主張をしています。

キャスター:日本の学者たちも? では、まずイム・ヨンス館長の話を聞いてみましょう。

Q「うちになぜ来たの」がなぜ日本軍強制動員慰安婦と関係があると思うのですか?


イム日本の遊びには三つのパターンがあるのですが、一つは慰安婦ごっこ、もう一つは戦争ごっこ、もう一つは死刑ごっこといって、子どもを立たせておいて石ころで殺すという遊びもあるんです。日本が1568年に作った制度によって、日本で大昔から歌われていた歌です。これは慰安婦ごっこだと、日本人たちも言っています。

キャスター:ということは、日本にも同じような歌があるんですか?

字幕:日本の伝統的な遊び、「花いちもんめ」が元祖?

記者:はい、あります。「花いちもんめ」という歌で、これは遊び方がよく似ています。子どもが2列になって、歌いながら行ったり来たりして、相手から一人ずつ連れてくるんです。この歌を、韓国に持ってきたのではないか、という分析があります。


キャスター:ここで、二つの歌を比べてみましょう。

字幕:二つのグループに分かれ、子どもたちが肩を組んで前に進んだり、後ろに下がったり

まず、「うちになぜ来たの」を聞いてみましょう。

うちになぜ来たの、なぜ来たの、なぜ来たの
花がほしくて来たんだよ、来たんだよ、来たんだよ
どんな花がほしくて来たんだい、来たんだい
きれいな花がほしくて来たんだよ、来たんだよ


次は「花いちもんめ」です。

勝ってうれしい花いちもんめ、
負けて悔しい花いちもんめ、
向かいの誰かさんちょっと来ておくれ、
鬼が怖くて行かれない、
お釜かぶってちょっと来ておくれ、
あの子が欲しい、あの子じゃわからん、
相談しよう、そうしよう


キャスター:では、日本の専門家の意見を聞いてみましょう。

世宗大学教授、保坂祐二:「はな」というのは花のことで、「いちもんめ」は代金という意味です。「売りたい」という人と「買いたい」という人の間でかわされた話が、歌になって子どもの遊びになりました。(花は)若い女性を意味していて、人身売買に関する内容が裏に隠されている、ということだけが知られています。ふつうの日本人は知りません。これを専門的に研究している人や、こういうことに関心がある人たちは、その由来について知っています。慰安婦問題と関係がありうると充分にいえると思います。
しかし、これは日本でとても伝統的な、昔からある歌で、慰安婦問題は戦争の時期、それも1930年代以後に発生した問題なので、それ以前から日本にあったことから、慰安婦問題が歌の起源だというのは少し難しいと思います。

字幕:「慰安婦ではなく、日本の江戸時代の女性売買と関係がある」という意見も

キャスター:
教授の話を聞くと、関係がある可能性はあるが、絶対そうだとか、日本の花いちもんめと関係があると見るのは難しい、だからこれはもっと調べる必要があるということだと思いますが、教育部は調査するんですか?

字幕:「伝統的な遊びの正確な由来を把握するために公式の調査が必要…伝統文化と密接な関りがあるため、文化体育部と話し合う計画」

記者:
はい、教育部はさまざまな専門家を呼んで、「はたして本当に慰安婦と関係があるのか、あるいはほかの由来があるのか、そうしたことを聞いていますが、専門家で協議体を作る計画です。

字幕:教育部、「うちになぜ来たの」の由来の調査を開始

キャスター:慰安婦と関連があるという認識に反対する意見も聞く必要がありそうです。

Q:慰安婦と関係がある歌という主張について、どう思いますか?


イ・サンホ伝統遊戯研究家:特定の遊びが特定の国のものだと断定できる根拠は何もありません。投壺(ビンに向かって矢を投げる遊び)にしろ、七巧(大小の三角形を組み合わせていろいろな形を作る遊び)にしろ、囲碁にしろ、みな中国から来たものでしょう。だからわれわれが中国化したといえますか。その地域に合えば残るし、合わなければなくなるというのは、自然な現象でしょう。

キャスター:「なぜうちに来たの」が慰安婦と関係があるとしたらショッキングだという話をしてきましたが、教育部が専門家を集めてしっかりと検討し、この歌が本当に慰安婦と関係があるのか、国民にはっきりと示してくれることを望みます。

 この番組が放映された2019年、李在明氏が知事を務める京畿道では、「親日残滓清算プロジェクト」を推進し、20の事業に税金7億5000万ウォンをつぎ込んで、道内の親日残滓調査に乗り出したのです。

 そこで上がってきたのが、「うちのなぜ来たの」という韓国に昔からある歌遊び。これは、日本の花いちもんめの韓国版で、「親日残滓」である。しかも、慰安婦強制動員を正当化するために、日本によって広められたものだ。そんな歌が教科書に載っているのはけしからん、という声が上がったんですね。日本人の専門家もそう言っている、と。

 番組に出てくる保坂祐二さんというのは、韓国に帰化した元日本人で、竹島問題について、韓国の主張を擁護している人です。私が韓国に駐在していたとき、保坂さんのお子さんが日本人学校にいて、娘と同級生なので、悪口を書くのは申し訳ないんですけど、「花いちもんめ」に関しては専門家でもなんでないということは確かです。韓国人の突拍子もない思いつきを一笑に付してくれればよかったのに、「慰安婦問題と関係がありうると充分にいえる」なんて言っちゃってます。逆にキャスターのほうはその話を聞いても半信半疑で、「確かなことはわからないので、調べるべきだ」というふうにまとめてますね。

 最後に反対意見を述べたイ・サンホ伝統遊戯研究家の受け答えもちぐはぐ。
きっと、「慰安婦と関係がある歌という主張について、どう思いますか」という質問ではなくて、「日本起源の歌が韓国の教科書に載っていることをどう思いますか」と聞かれたのだと思います。

 で、調査の結果は、2020年5月13日に聯合ニュースが報じています(リンク、韓国語)。

「なぜうちに来たの」日本由来の疑惑、晴れる…慰安婦と関係なし
問題提起から1年、教育部政策研究で結論…「メロディーも歌詞も異なる」


 …5月13日、教育界によると、社団法人韓国民俗学会は、昨年教育部が文部省が集めた「初等教科書掲載の伝統的はな遊びの教育的適切性分析政策研究」の結果を最近教育部に提出した。

 キル文化研究所長チャン・チャンシク氏の研究チームは、「うちになぜ来たの」が慰安婦の人身売買を描いた日本の歌に由来する、という疑惑は事実ではないという結論を下した。

 昨年5月、学界の一部から「うちになぜ来たの」が、日本の遊び歌「花いちもんめ」に似ており、「花を探しに来たんだよ」という歌詞の「花」が慰安婦を指しているという主張が提起された。

 日帝が慰安婦募集を正当化するために、当時の植民地朝鮮の子どもたちに意図的に歌を流布させたものなのに、わが国が歴史的由来を知らないままこの歌を教科書に載せているという主張だった。

 しかし、研究の結果、「うちになぜ来たの」と「花いちもんめ」は、遊び方は似ているところがあるが、メロディーと歌詞がまったく異なることがわかった。

 どちらもじゃんけんをして相手のグループから一人連れてくるところは同じだが、「花いちもんめ」は、名指された子どもに特別な歩き方をさせたり、だれを出すかを相談したりするところはかなり異なる遊びであることがわかった。

 また、「うちになぜ来たの」は、忠州地域の「南大門遊び」や光州地域の「蜂売り遊び」など、日帝強占期(植民地時代)より前から各地域に伝承されてきた遊びと似ているが、「花いちもんめ」は、日本の文献によれば、1930年代後半以後に広まった歌であることが確認された。

 研究チームは、「「花いちもんめ」を慰安婦や人身売買と結びつけて解釈するのは論理的飛躍」であり、「中国やイギリスでも似た遊びが見られることから、世界的に普遍性のある子どもの遊びの類型」だと結論づけた。
(以下略)

 まあ、調べなくても結果はわかきっていたようなものですが、「疑惑」が晴れてよかったです。

「ためにする反日」にこんなお金とエネルギーを注いできた李在明候補が、次期大統領に当選しないことを願うばかりです。

 それにしても、「花いちもんめが若い女性の人身売買の歌であることは、知る人ぞ知る事実」なんて頓珍漢なコメントをした元日本人大学教授は、コメント内容がデタラメであることがわかって、学者としての評価が下がったりしないのでしょうか?
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