▲ケゼニゴケ(4月鎌倉・朝比奈切り通しにて)
鎌倉コケ散歩のつづき。
「ジャゴケ」の春を堪能したあと、
次に見つけたのが「ケゼニゴケ」。
もしかしたらコケにあまり興味の無い人は、
両者の違いがよくわからないかもしれない。
しかし、顔を近づけてよく見てみると、
はっきりとした違いがある。
ジャゴケ(蛇苔)はその名の通り、
全面に蛇のようなうろこ模様があるのが何よりの特徴。
▲こちらはジャゴケ。
対してケゼニゴケはなんと、
からだじゅうから毛が生えているという
コケらしからぬ「お毛々なコケ」なのである!
コケから毛が出ているなんて、
こんなことがありえましょうか・・・。
神様のなさることは時に人間の想像を優に超える。
さてさて、百聞は一見にしかず。
こちらがケゼニゴケだ。
▲去年秋のケゼニゴケ。同じく鎌倉にて。
薄い白っぽい毛があるのがわかるだろうか。
そして葉状体(※)の先についた
白い毛で縁取られたボタンのようなもの、
これがケゼニゴケの生殖器官だ。
※葉状体(ようじょうたい)
ざっくり言えば、緑のベタッとした部分。
コケは基本、茎と葉の区別がはっきりあるものが多いが、
ケゼニゴケのように葉と茎の区別がつかないのものを葉状体という。
さて、春になってこの生殖器官が
どうなったかというと、冒頭の写真の通り。
雌雄あるうちの雌の生殖器官(雌器托)は、
ニョキッと柄が出て、傘のような形になっている。
これからもっと柄が伸びて背が高くなり、
さらに傘のふちに胞子をつけるようになる。
背が高くなるのは、胞子を風に乗せて遠くに飛ばすため。
いつもはベタッと地面に張り付くコケながら、
繁殖期になると、このようにここぞとばかりに背伸びして、
胞子たちを旅立たせることに全力を注ぐ。
うーん、何とけなげなことだろう。
▲よく見ると雌器托の傘も全体的に毛で覆われている。
一方、この時期の雄(雄器托)はというと・・・
▲薄い茶色っぽいのが雄器托。なんとも弱々しい。背後には傘状の雌器托が潜む。
精子を出した後は、こうして衰退するばかりなり。
最後にはポロッと落ちてしまうという。
しかも、雄器托がもっと哀愁ただようのは、
その毛の生え方(上の写真の手前の雄器托はわかりやすい例)。
雌器托は全体が毛で覆われているのに対し、
雄器托は、ご覧の通り、頭の頂点がくぼんでいて、
その部分には毛が生えていない。
いわゆるザビエル禿げなのである(!!)。
ケゼニゴケは全国的に生えるそうなので、
湿った場所を探せば結構、どこでも出会えるコケ
(ただし、ぬれていると毛が目立たないかも)。
見つけたらこの雄器托たちには、
ぜひ温かい声をかけてあげてほしい。
コメントありがとうございます。
コケはもちろんのこと、
この季節の植物たちの生命力たるや、
とにかくすごいですね。
鎌倉は私の住んでいる都内に比べて、
お寺が多かったり、道ばたにもお地蔵様、
住宅街の垣根も石垣がよく使われていたりと、
コケが住みかにしているスポットが満載です。
ぜひぜひいつもよりちょっと目を凝らして、
コケたちを見つけてやってくださいませ。
さらに小町通りあたりで目を凝らしますと、
コケ散策帰りにどこでお茶しようか悩んでいる
私が見つかるかもしれません。笑