新型コロナウイルスとの付き合いがまだまだ長引きそうな今日この頃。
雨も多く、暑さも増してきましたが、皆さまお元気ですか?
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6月27日、京都で今年初めてのコケ観察会の講師を務めさせていただいた。
いつもなら3月〜5月に依頼を受けてあちこちでコケ観察会・コケ講座させてもらうが、今年はこれが初仕事。
今回は15人までの少人数制、ソーシャルディスタンスを保つため、屋内でのレクチャーはなし。
野外での解説・観察中も皆さんにはマスクをつけていただき、お互いに距離を取りながら行うことに。
さらにフィールドで紹介するのは大きな群落に育っている種類に絞り、
群落には数か所ずつ種名を書いた立て札を立てておいて、
めいめいにコケをつまんで離れて観察するスタイルにした。
開催までには主催の京都科学読み物研究会のメンバーの皆さんと
何度も相談を重ねながら、いまできる限りの工夫を行ったつもりだ。
当日の参加者は、幼稚園の年中さんから70代(くらいとお見受け)までとじつに幅広い年代の老若男女。
ほとんどの皆さんがコケをじっくり観察するという行為が初めてのようだったが、熱心な方ばかりでびっくり。
とくに幼稚園児、小学生の男の子たちは、コケに心釘付け!というふうで、
数メートル進むごとに「これ何ゴケですか?」という質問はもちろんのこと、
「日本だけにいるコケってなんですか?」
「(原糸体を見て)これもコケでしょ?めちゃくちゃ小さいコケだよねぇ?」
「『コケ』って名前がつかないコケもいるの?」
「世界一大きなコケってどれくらい大きいの?」
などなど、私の背中に次々と質問をぶつけてくる。
そして振り返って彼らの顔を見ると、その眼のキラキラに今度は私の心が釘付けに。
また、そんな子供たちから刺激を受けてか、大人からも、
「新種のコケってこれからも見つかりますか?」
「(新芽を見て)これは若いジャゴケですよね?」
「(ジャゴケ雌株の生殖器官を見て)この膨らみは何でしょう?」
「食べられるコケはありますか?」
「ウマスギゴケが茶色く倒れているのは枯れているからですか?」
など、これまたたくさん質問を頂いた。
よしよし、大人のコケ目もなかなかいい感じじゃないか(笑)。
「そうですね~、それは……」と努めて平静に答えつつも、
内心はかなりエキサイティングしていた私。
誰かと一緒にコケを見ること、話をすることってやっぱり面白い。
サビついていた脳細胞が久々に活性化したような思いがした京都での一日だった。
この日の観察会をきっかけに、参加者の皆さんのコケ目がこれからも持続するといいな。
京都科学読み物研究会の皆さん、参加者の皆さん、そして快くコケ観察のために場を提供してくださった法然院さん、
法然院森のセンターさん、あの日は本当にありがとうございました。
ちなみに・・・
当日の質問のなかで、一つだけ答えられなかったものがあった。
これも小学生の男の子からの質問。
日本で帰化した欧州原産のコケ(ミカヅキゼニゴケ)の話をした際のことだ。
「じゃあ、外国にも、日本から渡ってきて帰化したコケってあるんですか?」
え?
本当だ、そんなコケってあるんですかね??
いやー、この変化球にはこちらもすっかりお手上げ。
そして言われてみればとても気になる。
たしかに種子植物には、観賞用として日本から欧米にわたったという
クズやスイカズラが帰化に成功している(成功し過ぎて現地では厄介者扱いされているらしいが)。
たとえば苔庭・盆栽には欠かせないコケたちの中に、
園芸文化とともに欧米に居ついたものはいないだろうか。
想像は広がるばかりだ。
海外で帰化した日本のコケ、もしご存じの方がいらしたらぜひご教示くださいませ。
▲こちらはヨーロッパからきて日本で帰化に成功したミカヅキゼニゴケ
●おまけ
▲当日は観察対象としなかったが、法然院の境内の土上にはウキゴケの仲間も!
許可を頂き少し採取できたので、また顕微鏡で調べたい