▲京都・慈照寺(銀閣寺)の東求堂(とうぐどう)。国宝。
あけましておめでとうございます。
2011年、早くも2度目の月曜日。祝日・成人の日。
すっかり年が明けてしまいましたが、
今年もコケを入り口として自然に畏敬の念を忘れず、
コケたちと楽しいお付き合いができるよう、そして、
より多くの人がコケの存在に気づいてくださるよう願って、
あれこれ、気ままに綴っていこうと思います。
どうぞよろしくお付き合いくださいマセ。
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なんやかんやと年明けから、
旧年中にやりきれなかったことを、
コツコツとこなす日々が続いている。
いや、「こなす」と言ってはこぬるい、
水脈を求めてひたすら地を掘り続けているとでもいうべきか。
それにつけても時間がない中で、
寄って見て、引いて眺めて、また寄せて見る。
結局この一連の流れを何日もかけて成さないと、
よい着地点を見つけられない自分に辟易しつつ、
とはいえ今までにない未知の経験の積み重ねに
心にはどんどん嬉しい財産がたまっていっているというか。
なんとも複雑きわまる心理状態の年始めなのだが、
ふとベランダを見ると、わが家のコケ鉢たちが
冬のわずかな日光を浴びながら、日に日に緑が蘇っていて
その小さくもしたたかな生命力に、ホッと心が癒される。
そして旅の行く先々で撮ったコケ写真をめくって
出会ったコケたち、人たちに思いを馳せるひと時の幸福感。
相変わらずの性分である。
さて、もう「昨年の出来事」と書くと古めかしく聞こえてしまうが、
12月30日、帰省がてら友人と会うために京都へ。
友人に付き合ってもらい、久々に銀閣寺を訪ねる。
年の瀬にもかかわらず、観光客であふれかえる界隈。
しかし、やはり一歩、境内に入るとパッと空気が変わる。
うまく言葉にできないけど、
歴史深い場所ならではの
神聖な雰囲気とでもいおうか。
▲右奥はかの有名な銀閣(国宝)。手前の縞状の砂が「銀沙難(ぎんしゃだん)」、
カップ状の砂山が「光月台(こうげつだい)」で高さ180cmもある。
▲友人も「人工物より自然に興味あり!」な人なので、
国宝の建造物見物はそこそこに、二人はじっくり苔庭観察。
▲朝露に濡れてフカフカのエゾスナゴケのマット。
近隣からの流れ者らしきオオスギゴケも、負けじと群落を形成中!?
銀閣寺は室町幕府第8代将軍・足利義政が
1482年に造営した山荘が起こりという。
いつごろからかはわからないけれど、
庭のコケたちも寺と共に少なからぬ
歴史を歩んできたはずである。
そしてある時からは「国宝の寺」として
世界各地から観光客が押し寄せるようになると、
コケたちも「ただのコケ」から「見られるコケ」へ。
よりいっそう気を引き締めて、
この幽玄なムードを守り続けてきたに
ちがいあるまい。
そんな妄想を膨らませながら歩いて回ると、
岩にへばりついているコケひとつさえ、
なんとも趣き深く見えてくる。
▲「洗月泉」。この何色にもわたる、コケの緑のコントラストといったら!!
コケたちの「どやさ!?」が聞こえんばかりの美しさ!
▲本寺は東山の山麓に位置するので、斜面を生かした景観作り。
日向と日影とバランスもいいのだろう、コケたちも上手に住み分けて暮らしているご様子。
▲木の根元が好きなのは、ホソバオキナゴケ。
他のコケと住み分けしている姿が、色に顕著に出ていておもしろい。
▲斜面を覆うコケたち。写真じゃ伝わりにくいが、かなり厚みのあるマット。
そんじょそこらの年月じゃ、この厚みとうねりは出せまいて!
▲大きな木の根元は、木を好むコケたちの集合住宅。何種もの緑色が覆う。
▲アップで見てみると、ヒノキゴケの群落が。私の好きなコケのひとつでもある。
また、何人かの通りすがりの人が、
「ここはコケがすごく元気なんだね、なんかいいね」
というようなことを連れ合いに話されているのを小耳に挟み、
なんだかこっちまで嬉しくなってしまった。
これからも、がんばれ!コケさんたちよ!
雨がそぼ降る中、2時間ほど散策しただろうか。
雨脚が強くなってきたので、
出口で傘を買い、団子屋で休憩。
最近、野鳥を撮るために買ったという
友人のカメラを見せてもらいながら、
今度は野鳥談義に花が咲く。
●今回出会ったコケ
・オオスギゴケ
・ナミガタタチゴケ
・コバノチョウチンゴケ
・ヒノキゴケ
・ハイゴケ
・ホソバオキナゴケ
・コツボゴケ
・エゾスナゴケ
・ジャゴケ
・樹幹にも何種か ・・・などなど。
●おたずねもの
木の根元にハイゴケ、ホソバオキナゴケに混じって群落を形成。
ルーペで見るには足場が悪く、また取って帰るわけにもいかず、
帰宅後、写真を図鑑と照らし合わせて見るも不明。
似ている限りでは、ラセンゴケかな?
▲斜面に生えている木の根元のやや日影がちなところに生えていた。
▲アップ。やわらかな葉が内側に巻き込むようになって、全体が長細いシッポのよう。