▲寿福寺の参道にて。ルーペでコケを覗き込む友人。
「なぜそんなに熱心にコケを見るの?」
と時々たずねられることがある。
なぜってコケとの対話が
楽しくて仕方ないのだ。
少なくとも私はそう。
ルーペやカメラのレンズを通して見る
彼らの本当の姿は、なんとも美しく、生気に満ちていて、
つい心の中で「おぉ。きみはおもしろい形をしているなぁ」とか、
「新芽が出てきて、お元気そうですねぇ」とか話しかけてしまう。
そうしてしばらく眺めていると、
コケのほうからも返事が
かえってきそうな気がしてくる。
さて、今回はどんな対話ができるのやら・・・。
先週末は「岡山コケの会」関東支部主催のイベントへ。
※岡山コケの会・・・コケを愛する人たちが集う全国規模の愛好会。
北鎌倉に朝9時集合。
アジサイの時季でもあるため、
この時間でもすでに駅のホームは
人・人・人であふれんばかりの超満員。
「さすが鎌倉」と、着いて早々うなる。
今回の参加者は10数名。
私たちの目的はもちろん100%コケなので、
アジサイで有名な明月院とは反対側の浄智寺方面へ。
地元在住のおひと方の
立派なお庭を訪問し、各自コケを愛でる。
コケ好きというのは、
一度コケを眺めだすと止まらない。
半径10メートル範囲でも、
2時間くらい余裕で居座れる。
そこに、コケがあるのなら (キリッ)。
ましてや今回はコケ好きばかりが
集まっているため、だれも時間は気にしない。
声をかけられなければ
いつまでだってコケを見ている。
案内役の世話人さんも懐の深い方で、
私たちが心ゆくまでコケを観察させてくれて、
早くも訪問第1ポイントで11時過ぎを迎え、
そのままランチタイムに。
喫茶店でごはんを食べつつも、
やはりコケ好きばかりが集まっているので、
ここでもみんなでコケトーク。
自己紹介もそこそこに、
普段どんな風にコケを見ているか、コケ歴何年か、
お気に入りのコケスポットは?・・・などの話で盛り上がる。
午後からはさすがにちょっとスピードアップして、
長寿寺→亀ケ谷切通し→海蔵寺駐車場→寿福寺→東慶寺を巡る。
解散は16時過ぎとなった。
▲長寿寺にて。ウマスギゴケがしきつめられた苔庭を愛でる。
▲切通しにて。壁一面にシダのカーテン。
▲正面の石垣にご注目。「エビゴケ」が群生。今回、私は初めて見たコケだ。
▲もちろんエビに姿が似ているところから「エビゴケ」という名があるわけで。
近づいてみると、ひげのついたちっちゃな小エビがたくさんいるように見えませんか。
▲さらに近づいてみると、茶色い朔(胞子を入れている袋)も見えた。まるでエビの目のよう。
▲寿福寺にて。門の軒にある銅製の雨どいの下を眺めてみると・・・
▲ホンモンジゴケだ!銅を含んだ水が流れる場所に生息するという、
極めて珍しい、コケ界の〝異端児〟だ!
▲キツネのしっぽみたいに垂れ下がって生えるコバノチョウチンゴケ。
今回巡った中でも各所にいちばん多く生えていた。鎌倉が住みやすいのかな。
▲ジャゴケのすきまからキノコが。鬼太郎に出てくる〝傘お化け〟みたい。
私は都内のわりと街中に住んでいるのだが、
今回、鎌倉で見たコケはいつも見ないコケばかりでとても刺激的だった。
やはり鎌倉は社寺仏閣が多いことはもちろん、
海あり山ありで自然も豊か。巨木も多い。
車もうちの周りに比べて少ないので、空気もきれいだろう。
その土地、その土地、好みの場所を選んで、
コケたちは住み分けをしているんだなぁと改めて実感した。
ちなみにアジサイは場所にもよるが、
この日は五部咲きくらいだった。
きっと今週末くらいが見ごろのピークだろう。
▲なんて鮮やかな青。バックにちゃっかりコケも収めました。