かわいいコケ ブログ I'm loving moss!

コケの魅力を広く知ってもらいたくて、情報発信中。
コケ、旅、山が好き。コケとコケにまつわる人やモノの記録です。

屋久島、ぼちぼち。

2013-03-28 09:22:16 | コケをめぐる旅

▲ホソバミズゴケ(屋久島 2013年3月3日)

思えば屋久島から帰ってきて早20日あまり。

新鮮なうちにこの気持ちを早くブログに綴らねば!・・・と思いつつ、
普段のライター仕事がわりと忙しくなってしまったり、
花粉症で鼻と肌がえらいダメージを受けてしまったりと
日々のあれやこれやで、屋久島のことがすっかり
なおざりなことになっている。いかんなー。

それでも、あの5日あまりの出来事を少しでも
みずみずしいまま冷蔵保存するような気持ちで、
頭の隅にある記憶のはしっこを手でバシっと押さえつけて
とどまってくれるようには努めているのだけど。

なんだか気持ちは焦るばかり。

なんかちゃんとしたいと思えば思うほど、動けなくなりますよね。

ということで、とりあえず撮影した大量の画像の中から
印象深いものだけでもアップして、ちょっとでも、
このモヤモヤを解消できればと昨夜から思い始めた次第。

いつもはわりと文字の多いこのブログですが、
しばしパラパラとキャプションのみのアルバムをめくる、
それくらいの気軽さで読んで頂ければ、これ幸いです。

まぁ元来気分屋なので気が乗れば
またいつもの長文レポートになるやもだけども・・・。

なんてつべこべ言っているけど、まぁとにかく。

コケは見ているだけでその美しさに癒されます。
これについてはまちがいない。


Mar. 3, 2013




ここは屋久島の淀川(よどごう)登山口周辺。標高1360m。

標高が高いせいもあり予想以上の寒さに震えつつ、
コケフォーレメンバーでいっせいにコケ観察開始。

いっせいにとはいっても、
各自思い思いの場所へと散らばっていく。
それがコケ観察の常だ。



▲横並び状態で観察中。互いの距離が近いように思えますが、おそらく隣人のことなど見えていない。
 各自それぞれのコケワールドに没頭中なのであります。

登山口は目の前だがみんなそこへは直行せず、
しばし登山道入口近くのコケを丹念に観察。

斜面に、岩に、樹幹にと、視界はすでにコケだらけだ。
私はどこから手をつけたらいいのかと迷う。

しばらくあっちへふらふら、こっちへふらふらしていると、
一角の腐植土の上にホソバミズゴケの群落を見つける。

ひざまずいてしばらくルーペで見たりカメラを構えたり。
ふー、なんて美しい色と形、やわらかでみずみずしい手触り。

ため息をつきながらふと顔を上げると、
となりにはお仲間さんが私と
そっくりの格好でうずくまっていた。




屋久島コケフォーレから帰ってきました&『コケとも』4刷決定など。

2013-03-08 08:40:53 | コケをめぐる旅

▲ウワバミゴケ(屋久島.2013.3月)

前回のブログの最後にちょっと書いたが、
「屋久島コケフォーレ」から無事に帰ってきた。

そのレポートについては、これからおいおいしていきたいと思う。

画像は、もう4、5年前から見てみたいと思い続けてきた「ウワバミゴケ」。
今回ついに念願かなって出会うことができた。

いや~、興奮しました。


-----お知らせ----------------------------------------------------------------------

●屋久島に行く直前に入ってきたホットニュース。

コケ初心者のための入門書『コケはともだち』(藤井久子著 リトルモア刊)が、
おかげさまで第4刷が決定しました。書店に並ぶのは3月末頃~だそうです。


●3月9日(もう明日!)、鈴木収春さんが講師をやっておられる
自由大学「出版道場」第11期の講座に招かれ、ゲスト出演することになりました。
『コケはともだち』を出版する前後の話をさせていただきます。
参加される皆様、明日はどうぞよろしくお願いします。

※11期の募集は定員締切済み、現在12期の募集中です。

■世田谷ものづくり学校内、自由大学「出版道場」

奥入瀬コケ紀行(モス・プロジェクトその7)

2013-02-15 16:32:11 | コケをめぐる旅
奥入瀬に来て3日目。

朝食の前に少し早く起きてホテルの周りを散策した。
それがいつも旅をした時の習慣だ。

ホテルのすぐ裏手には奥入瀬川が流れていて、
建物と川の間に横たわる小さな雑木林の中を歩く。

空気は思ったほど冷たくない。

風と川のせせらぎに自分の足が落ち葉を
踏みしめる音だけが聞こえる。

とっても静かな時間だ。

こう静かだと、なんだか小さなものたちの声も聞こえてきそうな気がしてくる。











そして、なぜだかこの雑木林は地衣類がやたら豊富で、
幹は地図みたいな模様で埋めつくされていた。






















▲これなんかまるで世界史で習った中世ヨーロッパの古地図みたいだ!


山にはまだ紅葉がたくさん残っていて、モミジもきれいだった。





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<お知らせ>



最新号「山と渓谷」に、今回のモス・プロジェクトのことが
見開きページ(P182-183)で紹介されています。

企画タイトルは「コケは招くよ!」。
なんともかわいいタイトルです。

おそらく今日あたりから書店に並んでいるようです。
ご興味のある方はぜひご覧くださいマセ。

奥入瀬コケ紀行(モス・プロジェクトその6)

2013-02-06 15:42:04 | コケをめぐる旅

▲隠花帝国に魅了される人々。ウェアが隠花植物と同化して保護色のようだ

〝奥入瀬隠花帝国〟を堪能した私たちは、いったんお昼ごはんを食べに、
奥入瀬渓流エリアの入口にあるノースビレッジさんの事務所へ戻る。

この景観の雰囲気にぴったりのログハウスで、2階が事務所、
1階はツアー客も利用するカフェレストランになっている。


▲どうです、なんかステキでしょ。



▲ベンチではコケがお出迎え。なんでも芸術家の方の作品だとか。



▲入口前では奥入瀬渓流で見られる代表種を紹介。


さらにど~しても書いておきたかったのが、
ここの石窯で焼かれたピザの味。

これが、なんとも美味しかった!

クラストは薄くて噛みしめるごとに
パリパリとその音まで美味。
さすが石窯焼き、絶妙な火のとおりだ。

さらにトッピングはいろいろと種類があったのだが、
とりわけ地元名産のニンニクと長芋(生産量日本一!)のピザが超絶品だった。




ニンニクならではの香りのきつさを懸念していたのだが、
意外にもそれはまったく気にならず、むしろニンニクの甘みやホクホク感、
長芋のほどよいみずみずしさが残ったシャキシャキ感に、
さらにそこに海苔の香ばしい風味とチーズのコクと塩気が絶妙に効いていて、
どんどん食が進み、ついつい「もう1枚」と手を伸ばしてしまう。

私ごときがピザを語るのもなんなのだが、
私史上〝最も記憶に残るピザ歴代1位〟の座に
堂々君臨したのです、このピザは!

これからノースビレッジに行かれることがあれば、
そして和風ピザに抵抗がなければ、
ぜひあのニンニク長芋ピザを食べてみてほしい。
とにかくオススメです。

ノースビレッジレストラン



▲ピザ以外にも石窯で焼いたホットサラダやチキンなども美味でした


▲レストランの外に設置された石窯。ちょうど奥でピザが焼けています


さて、コケブログがピザブログになったかと思われるほど
熱弁を振るってしまったが(食いしん坊でごめんなさい)、
心地よい充実感で胃袋を満たした私たちは、ふたたびフィールドワークへ。

河井さんと河井さんの部下にあたる
ガイドの丹羽さん(通称:イケメンガイド)がオススメの、
日本一大きいともいわれるブナを見に行く。

樹齢は推定400年、木こりの間で「三本に分かれた木には神が宿る」と信じられたため、
切られずに残ったとのことで、今でも地元の人々から「森の神」と呼ばれている木なのだそうだ。



▲曲がることなくすくっと立ち、空いっぱいに枝を広げる「森の神」。たしかに途中から幹が3本に分かれている



▲看板の右側の支柱が削れているのは、クマが味見したからだそう


しばしこの雄大な「森の神」に見とれるが、
気づけばまたみなこのとおり。


▲ノースビレッジのガイドの皆さん。右が河井さん


何を見ているのかな?と近寄ってみると・・・



▲あ、キノコだ



▲キヌガサタケ系かな?



▲種類はよくわからないけど、その根元に注目。卵形の立派な幼菌が土から顔を出している



▲さらに周りをよく見ると、同じ菌と思われる白い菌糸があちこちに!



▲枝を拾い上げると、やはり白い菌糸の束がからみついている



▲落ち葉もこのとおり


▲キノコまで!


「菌は森の分解者」、「枯れ木や枯れ葉などの有機物を菌が分解してこそ森が生きていける」

とは、本ではよく目にしてきたフレーズだが、
まさにその現場を目の当たりにしたかんじ。

人知れず物音ひとつ立てずに粛々と任務を遂行していく
菌の底知れぬパワーに感服。



●おまけ:森で出会った美味しいキノコ


▲クリタケ


▲ナメコ


▲つるんとした水まんじゅうのようなナメコの傘。
 表面にカメラマンとブナの森が映っています。
 ナメコには世界がこんなふうに映ってるんだねぇ。
 

奥入瀬コケ紀行(モス・プロジェクトその5)

2013-01-30 15:21:01 | コケをめぐる旅
もうあっという間に1月も末に入ってしまった。
は、はやいっ!(ってなんか毎月言っているような気がするけども…)。

1月はやはり1年の始まりの月だからか初旬は何をするにつけ
「今年こそはしっかりやっていこう」と妙な気合が入る。

しかし中旬からは、いちいちその心構えを確認するのも
なんだか手間に思えてきて次第にテンションも下降、
年始に立てたはずの目標のいくつかもすでにうやむやに…。

そしてようやくフワフワしていた気持ちも
どこかに着地したのだなと感じ始めたら、もう月も終わり。

いつもどこか手探りの1月。

それでもいつもよりはなんとなく清々しく
気持ちも華やぐのでそれはそれで好き。

でも次の2月は足元を
しっかりかためていこう。


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さてさて、リクエストをいただきつつも
すっかり連載が途絶えていた「奥入瀬コケ紀行」、
その4まで進んでいました。

 ※その4の記事はこちらに。
 ※その3はこちら
 ※その2はこちら
 ※その1はこちら

年をまたいでしまいましたが、これからしばらくは真面目に連載したいと思います(キリッ!)


時は2012年11月8日(この時点で奥入瀬コケ紀行が始まってまだ二日目w)。
11月10日の講習会に向けて、私たちは奥入瀬渓流の森を下見中である。

ノースビレッジの河井さんのガイドを受けながら、
森をブラブラ歩きで進んでいく(これを「ランブリング」という)。

ランブリングの醍醐味は「自分の五感で森と対話できる」ということにつきるかもしれない。

ウォーキングだと歩くのが主なので、森を横断できたとか、
目的の距離を歩ききったという達成感は得られる。

しかし、そのぶん気持ちはなんとなく常にせわしく、
ガイドさんの解説も聞き流しがちというか、歩くのに集中しているので、
あまり記憶に残らない(というのはあくまで私の経験上だけど)。

またその場の空気や景色は楽しめるが、
目の前の植物との直接の触れ合いは少ない。

ところがランブリングだと解説を聞いてから、
実際にその対象に触ってみたり、匂いをかいでみたり、
耳をそばだててみたりしながら、自分でその感触を確かめることができる。

そのことのほうにむしろ集中する。

とくに奥入瀬渓流の森は大好きな隠花植物が豊富なので、
そういう時間が私にとっては本当に楽しい。

じゅんわりとぬれて大地を潤すコケ、太古の時代を彷彿とさせる迫力のシダ、
「あなたはエイリアン?!」と思わず声をかけたくなる不思議な形の地衣類たち。



▲落ち葉を跳ね返す勢いで、元気に枝葉を伸ばすシダ集団。

そういうものたちを見ていると、自分の遺伝子に備わっている
遠い昔に森に住んでいた頃の祖先の記憶が呼び覚まされるのか、
旅の疲れはどこへやら、知らないうちに自分自身もどんどん元気になってきて、
目もランラン、聴覚・嗅覚もビンビン、あっちにもこっちにも気になるものが見つかり始める。


▲シダの向こうになにやら緑のアヤシイ物体が・・・あれはなんだ!? 緑の海坊主!?



▲海坊主かと思ったら、朽木にコケが生し、その上にキノコが生えている模様。



▲その正体は球形のキノコである「タヌキノチャブクロ」。枯れ木などに生える。
 ちなみに似た形で「キツネノチャブクロ」というのもいるが、そちらは樹上には生えないのだとか。


  
▲指で押すと、ばふー。ホコリのような胞子が飛ぶ。

みんな胞子を遠くに飛ばしたくて、胞子の出る穴がちょっとだけ上を向いていて、方向もいろいろ。
そんな小さなことに気づけるのも、ゆっくりブラブラ歩きのランブリングならではなのかも。

そうそう、隠花植物といえばキノコもそのお仲間だ。

キノコは正確には「菌類」だから植物ではないのだけれど、
歴史をたどると19世紀頃まではキノコも植物の一種と思われていたのだそう。
その時代にはキノコも当然のように隠花植物のくくりだったのだ。

いまも花も種子をつけず胞子で増えるという意味では、
便宜上、隠花植物と呼んでもいいのかなと思っている。

季節柄、森はキノコもちょうど豊富な時期。

まさに河井さんのいったとおり奥入瀬の森は
コケ・シダ・地衣・キノコのスター選手がそろいぶみで
「隠花帝国」の様相を呈していたのだった。

 
▲地衣類。左はおそらくツメゴケの一種かな?!右は不明。それにしてもなんでこんな形をしているんだろう。



▲ホウオウゴケの仲間。あまりのコケ生し具合で写真だけではわかりづらいが、コケは岩の上に生えている。
 晩秋、落ち葉に埋もれないようにと、地面よりあらかじめちょっと高い所を選んで生えるコケの処世術が見事に生きている例だ。
 ちなみに、このコケは噛むと悪甘い味がするのだとか。



●おまけ:カツラの落ち葉




樹木の名前がなかなか覚えられない自分だが、
このカツラだけは一発で記憶!

というのもこの木の落ち葉はすごく甘い香りがするのだ。

砂糖が鍋の中でグツグツと温められた時のような、
そう、まさにカラメルによく似た甘い香り。

ちなみに今回ご一緒した屋久島の小原さんは「カステラ臭」という評価。

なるほど。

たしかに森の中で甘いものが欲しくなった時に
この香りをかいでカステラのことを思い出しておけば、
しばらくはお腹がもちそうだ(や、もっとお腹がすくか!?)。

ちなみに落ちたばかりの黄色いのよりも、
地面で茶色くなったもののほうが香りが強い。

森の湿度で落ち葉がぬれて、よけいに辺りは、
えも言われぬ甘い香りが漂っていた。

2013年の苔はじめは・・・

2013-01-14 14:47:15 | コケをめぐる旅


今年に入って初めてのブログ更新です。
少々遅くなりましたが、本年もどうぞよろしくお願いいたします。


今年はやはり巳年ということで、トップの画像はジャゴケ(蛇苔)。
撮影場所は、もはや私の中では第二の故郷と化してきた
赤目四十八滝だ(年間パスポートも買っちゃったしw)。

年末年始は毎年、実家の神戸に帰っているのだが、ひとたび関西の地に足を踏み入れると
「赤目のコケたちはどうしているだろう…」と気になって仕方なくなり、
寒さは承知で、大阪と名古屋をつなぐ近鉄電車に飛び乗ったのは1月3日のこと。

赤目四十八滝は大阪・鶴橋から1時間強ほどの赤目口駅が最寄りで、
そこからバスまたはタクシーで10分ほどのところにある渓谷である。

滝こそ凍っていなかったとはいえ
この日の気温は氷点下で、やはり寒い。
日陰がちなところはすでに氷が張っている。

 




▲赤目四十八滝の守り神、赤目ちゃん(と勝手に呼んでいる)も健在。
 「モー、お正月だからお賽銭いっぱいいただいちゃったワ!」


この日は、「巳年のシンボル、ジャゴケの様子はどうかなぁ」ということで
毎回行けば必ずチェックしているコケスポット、
「ジャゴケ.vs.ムクムクゴケ」の場所へ直行してみた。





▲生命力が強くはびこり精神旺盛なジャゴケと、かわいいくせにあつかましい性格のムクムクゴケ、
 両者が拮抗しながら共存しているという、私の中では注目のコケスポットのひとつである。


※「ジャゴケ.vs.ムクムクゴケ」の詳細についてはこちらのレポートをご参照あれ→ ●ジャゴケ.vs.ムクムクゴケ



▲この日は、寒さでつららができていたジャゴケも。


ジャゴケは現在ほとんどの図鑑で「ジャゴケ」としか掲載されていないが、
実は細かく見ると特徴の異なる複数種のジャゴケが存在しているという。

それを知ってから、行く場所行く場所で出会うジャゴケは
以前よりも注意して見るようにしているのだが、
そういえば、ここの斜面に生えたジャゴケが何者かはまだチェックしていなかった。

さて、これいかに?!



▲裏返してみると腹面が赤紫色である。
おそらく「ウラベニジャゴケ(裏紅蛇苔)」ってやつではないかしら。


さらにあたりに生えているジャゴケをよく見てみると雌株から、
傘状の雌器托(しきたく)がついているのがわかる(傘の頭だけ見えている)。



▲突起のようなものが見えますよね。それが雌器托、傘の頭部分です。



▲アップで見たところ。


春になると胞子を飛ばすために、
今度はこの傘の下から急速に柄が伸びてくる。

いまは背丈も低く縮こまっているけれど、
きっとこれも寒さを乗り越えるための術なのかもしれない。
もう少々の辛抱ですよ、ジャゴケさん。

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▲ちなみにこちらが春のジャゴケで、柄をのばしたところ(同じ場所で撮影。「苔暦2013」より)。

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また、こちらはムクムクゴケのアップ。


▲乾燥しているので、毛(実は細かい葉なのだが)のモコモコぶりが他の季節に見るよりもきわだっていた!


そんなこんなで、冬にも冬ならではのコケの顔があり。
いつもはのんびり寝正月なのだが、思いきって行ってみてよかった。

赤目四十八滝のコケたちよ、新春から物好きな私の相手をしてくれてありがとう。
寒さを耐えている中、好き放題のぞきこんで申し訳ありませんなぁ。


最後に余談。

ここ最近は普段のライター仕事のかたわら、
苔暦2013」をご注文いただいた方への発送やら、
寒中お見舞いを出したりやらで、机に向かって作業する日々が続いている。

※「苔暦2013」は1月いっぱいまで受付予定です。


そして空いた時間はできるだけ、読書。

去年はなかなか本が読めなかったから、
今年はたくさん本を読む年にしたいなぁ。

すでに部屋のほうぼうには積み重なった本たちが
「早く読んで」と順番を待っている。

ちなみに多くのコケ好きの方がご存じのことと思いますが、
こんな本が昨年の秋に出版されています。



▲「コケの自然史」

ご多分にもれずこの本も「順番」に並び中。
来月には手をつけられると思うのでちょっと待っててね。


帰郷 de コケ探訪

2012-12-31 20:20:47 | コケをめぐる旅

▲京都・祇王寺の苔庭(2012年12月29日 ※スマホで撮影。以下同じく)


2012年もついに大晦日になってしまった。
いまこのブログを実家のある神戸で書いています。


「奥入瀬コケ紀行」シリーズ、
とうとう年内にまとめきれなかったな・・・。

ちなみにこのあとは長野県・北八ヶ岳の
コケレポートを書く予定でいたんだけど
これも間に合わないな・・・。

心残りが山のようにありますが(すべて自分がのんびりしているせいなんだけど!)、
もろもろ2013年に持ち越しとして、今日は大晦日を家族と静かに過ごしたいと思う。


今年はモス・プロジェクトからのお声がけで
奥入瀬(青森県)へ行かせてもらったり、
プライベートでは赤目四十八滝(三重県)で
季節ごとのコケの定点観測ができたりと、
おかげさまで様々な場所でたくさんのコケ、
そしてコケが好きな人との出会いがあった。

またコケTシャツ制作や「ひみつの部屋でコケトリップ展」など、
今までにない角度からコケの魅力を人に伝える取り組みにチャレンジできたことなど、
大変しあわせなコケライフを送らせてもらうことができた。

これもひとえにコケのまわりに集まる
たくさんの皆様と家族のおかげです。
改めて深く感謝いたします。


帰郷の際はいつも、東京より西のコケスポットに
足を運ぶのが何よりの楽しみで。

数日前は、名古屋で途中下車して
とあるコケスポットへ寄り道してきた。



<企画展>なんじゃ?もんじゃ? 木典雄とコケの世界

ちょっと不思議なコケ「ナンジャモンジャゴケ」を発見した
コケ研究者・木典雄氏(故人)の研究熱心であたたかなお人柄が
伝わってくるような手書きのレポートやコケの絵、観察グッズや採集物、
さらにナンジャモンジャゴケそのものについてなど、
こじんまりとした空間ながらコケ好きにはたまらない見ごたえバッチリの展示だった。

来年2月2日まで、入場無料で開催とのこと。
ご興味がある方は、ぜひ。


さらにそれから数日後の12月29日、
2012年をしめくくる今年最後のコケトリップは京都。

京都に住んでいる友人に車を出してもらい、
嵯峨野にある祇王寺へ行ってきた。

ここは今年、TBSの「報道ステーション」の
紅葉特集で取り上げられたお寺で、
関西在住のコケ研究者であるMさんとKさんも
イチオシされていたコケスポットである。

ちなみにお寺としてのゆかりも私にとっては興味深く、
その昔、平清盛の寵愛を受けるも悲恋と散り、
尼となった「祇王」という女性の碑が残る場所であるという。

当然のことながら紅葉はすでに時季を過ぎていたが、
庭は落ち葉や塵ひとつない手入れの行き届きようで、
もうただただ、ため息をつく美しさ。

晩秋は紅葉の赤とコケの緑のコントラストはさぞ美しかったと思うが、
冬のやわらかな陽射しを受けて輝くコケの緑もまた一興である。



この苔庭のメインはオオスギゴケ(Kさんから教えていただきました)。
濃い緑でモコモコと立ち上がって生えているのが、そうだ。



▲オオスギゴケ(俯瞰で見たところ)。


一方、地面をおおいつくす明るい緑も、これまたすべてコケ。

ぺたっと地を這うように生えるシノブゴケ、ツヤゴケの仲間が主な構成要員で、
背の高いオオスギゴケと対照的に、この苔庭の面的な広がりを演出しているように感じた。

そのほかにもクモノスゴケ、ヒノキゴケ、シッポゴケ、ホウオウゴケなど、
様々な種類の、独特の緑色をしたコケがそこかしこにいて、私は静かに大興奮(一応お寺ですしネ)。

紅葉の時季は観光客で大混雑だったようだが、
いまは暮れということもあってか訪れる人もちらほらで、
おかげで私たちはそれはそれはゆっくりと数時間かけて、
庭を3周も4周もしながら、今年最後のコケ見を満足いくまで堪能したのだった。


さてさて。

明日は寒くなるようですが、
地方によっては初日の出も拝める空模様だとか。

では皆様、今年もお世話になりました。
よいお年をお迎え下さい。

また来年、ここでお会いしましょう。



▲年越し蕎麦。お昼にひとあし早く食べちゃいました。



--------コケ好きのためのカレンダー「苔暦2013」-------------------

コケ好きによるコケ好きのためのカレンダーを実験的に作ってみました。
引き続き、ご興味のある方にお分けしています(1部=送料込で1300円。なくなり次第終了)。


☆申し込み方法など、詳しくはこちらへ→ 【お知らせ】コケ好きのためのカレンダー「苔暦2013」

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奥入瀬コケ紀行(モス・プロジェクトその4)

2012-12-18 11:22:36 | コケをめぐる旅

▲東北の隠花帝国・奥入瀬渓流にて。岩に張り付いてコケを眺めるFさん(11月・青森県)


ひきつづき奥入瀬渓流で見たこと・感じたこと・学んだことを綴っていく。


10日の講習会に向けてまずは奥入瀬渓流を下見することになった私たち。

ノースビレッジの河井さんらの案内で渓流の中でも
とくにオススメのスポットを順に巡ることになった。

観光客にも人気の「石ヶ戸」(前回記事参照)の
次に向かったのは、「白銀の流れ」だった。



▲ビューポイントには、看板がある。



▲ゆるキャラ・東北くん(だったかな?!)。改めて調べ直してみたのだが、WEB上ではその素性を追跡できず・・・。
 東北6県の形がそのままキャラクターになっているとか。シンプルでなんかかわいい。


「ここにはステキなテーブルがあるんですよ」と紹介され、向かったところ・・・



▲おぉ!コケで一面覆われたテーブルが!



▲ここまでみっしりだと、もはやテーブルとして使うのははばかられる・・・。





湿度よし、日当たりよし、平面で生えやすいとあれば、コケにとっては優良物件まちがいなし。
ごらんのとおり多種多様なコケたちが押し合いへし合いで陣取り合戦。

テーブルとしては使えないけど、これはこれで生きたコケ標本集のようで楽しい。



▲テーブル側面にもコケ(おそらく「ナガミチョウチンゴケ」とのこと)。
 「表面は混んでっから、おら側面でいぃんダ」(勝手に青森弁風。素人がすみません)。


なるほど、いい場所見つけましたねぇ。

コケならこんな垂直面でもノープロブレム。
こうしてどこかしら隙間を見つけては器用に群落を広げていく。

また、すこし上流の方へ歩くと・・・



▲コケ生す欄干。


なんと見事なコケロード。
まるでコケがエスコートしてくれているよう。

ちなみに、実はこの欄干から見た渓流の眺めが
「白銀の流れ」と称される絶景だったのだが、
コケを見るのに夢中になるあまり、
うっかり絶景の写真を撮り忘れるというシマツ。



▲遊歩道に渡された丸太もコケだらけ。ここで幅を利かせているのはクサゴケだ。



▲クサゴケのアップ。コケとしてはかなり大型、しかもここではやたらと大群落なのでよく目に入った。
茎は這い、枝は不規則に羽状に伸びる。山地の腐木によく生えるという。



▲クサゴケは雌雄同種なのでよく胞子体をつける。胞子体の柄が長く赤褐色なのが特徴の一つ。




▲階段の手すりもコケだらけ。「リスゴケっぽくない?」と小原さんと話していたコケ。



▲そのアップ。図鑑によると生育地域は「本州(東北以南)~九州」とあるので、可能性がないわけでもなさそう・・・かな!? 


このように、森の中に人間があとから作った・置いたあれやこれやを、
コケが見事に覆い尽くしている光景がいたるところで見られた。


ところで、「コケが人工物を覆っている状態」といえば、



▲コケに覆われた石像(神奈川県箱根の熊野神社にて)


↑こういう↑例もわりとよく見かける。

いわゆる「侘び寂び」世界のコケというのだろうか。

さりげなくコケが生している石像は、時の長い経過を感じさせる、静謐な、悠久の象徴であり、
古びたどこか物悲しい、わびしいものの代表格といった向きがある。これはこれで趣深い。

しかし、ここ奥入瀬のように、コケの生育環境として条件がバッチリなところでは、
コケが森づくりの先頭集団となり、人工物でも石でも腐木でも、
旺盛な生命力をいかんなく発揮しすべてを覆い尽くしていく。

そこには侘び寂びの物悲しさというよりも、
陸上植物のなかでもとりわけ原始的なカラダのつくりでありながら、
パイオニア的に地上に進出し、そのふかふかな群落のマットで、
ほかの植物の成長(つまりは森の成長)にさえ一役買うという、
大らかさ、圧倒的な生命力のまばゆさ、まっすぐさみたいなものを感じた。

とくにコケを風景として見るだけではなく目の前まで近づいて、
虫眼鏡やルーペでその一本一本にまで目を配ると、
そして手のひらで優しくなでてみたり、匂いをかいでみたりすると、
小さいながらも各々好き好きに枝葉を伸ばし、
空中の水分をめいっぱい取り込んで青々と輝く、
コケのパワフルな生き様、森を下支えしてきた底力みたいなものが
(感覚的にだけど)よくわかる。

こうなると人間はコケを筆頭とした自然界のほんのごく一部分に過ぎず、
私はいまこの森に、ちょっとだけお邪魔させてもらっっているだけ、
ひいては地球そのものにちょっとの間、いさせてもらっているだけにすぎないんだよなぁと思う。

そういうことを、コケを通してからだ全体で感じることができた有意義な森歩きだった。




奥入瀬コケ紀行(モス・プロジェクトその3)

2012-12-12 20:27:00 | コケをめぐる旅

▲奥入瀬渓流の森にて(11月・青森県)


あっという間に今月も中旬に入ろうとしている。は、早い!

フリーの編集ライターを細々としている私は、
サラリーマンの皆様よりも一足早く年内の主な仕事は一段落。

今日からやっと、じっくりがっつりどっぷりと
机に向かって奥入瀬コケ紀行の続きが書ける。
いやー、ありがたや。ありがたや

だいぶ時間が空いてしまったが、
奥入瀬コケ紀行は始まってまだ二日目なわけで。

かなり時計の針を戻しますヨ。くるくるくる・・・



今回、モス・プロジェクトにお招きいただき、
青森県十和田市・奥入瀬に滞在したのは11月7~11日の5日間であった。

十和田市に着いて翌日の8日、
市街地から20キロほど車で移動し、
いよいよ目的の奥入瀬渓流に入る。

今日は、10日に地元のガイドの皆さんを集めて行う講習会のため、
丸一日、渓流の下見というスケジュール。

ノースビレッジの河井さんを筆頭にモス・プロジェクトメンバーの皆さんに案内されながら、
同じく今回の講習会講師として招かれた屋久島のコケ師匠・小原さん(本業はエコツアーガイドさんです)、
そして、なぜかうちの母(奥入瀬に憧れ、娘の仕事に便乗)と共に沢沿いの森を歩く。


「奥入瀬渓流」とは名前はよく聞くが、いったいどんな場所なのか。
知らない方のために(というのは口実で、まずは自分の復習のために)先に少し説明する。


「奥入瀬渓流」は、青森県と秋田県をまたぐように
位置する十和田湖の北東岸に端を発し、
太平洋に向かって伸びる約70kmの「奥入瀬川」の
上流約14kmのエリアを特定して指す。

14kmエリアの末端、下流側のスタート地点から上流の十和田湖に向かう道のりは、
緩やかな上り坂になっていて、1km進むごとに標高が14mずつ上がる。

つまり十和田湖に着く頃にはスタート地点から
約200mの標高差を上ったことになるわけだ。
しかし上り坂が非常にゆるやかなので、まったくそれを感じさせない。

ぶらぶらと気ままに自然を見て歩くのにはもってこいの場所なのである。


奥入瀬渓流はその名のとおり、谷川である。

渓流の北側には八甲田山という(これまた誰もがその名を知る)火山群がそびえる。
八甲田山がその昔、噴火した際に火砕流がこの地に流れ込み、侵食されたことで渓流は生まれた。

なので、渓流沿いの森の中にはいまも
その当時を思わせる巨岩があちらこちらにゴロゴロと、
シンボリックに鎮座している。



▲下流側から5.5kmほど歩いたところにあるのは、カツラの大木に巨大な一枚岩が寄りかかり屋根を形成している「石ヶ戸(いしげど)」。
現地の方言で「石でできた小屋」という意味を持つ。



▲画像の右側にご注目。国道沿いの石垣の上には巨岩が自然のままに残されている。


さらに渓流は十和田湖の豊富な水に恵まれると共に気候的にも空中湿度が高いため、
地面や巨岩などいたるところにはコケやシダ、そして地衣類が豊富に生えている。
さらにブナを主体とした落葉広葉樹が枝葉を広げて、美しい緑の景観を作り出している。

いままでは紅葉が美しい落葉広葉樹が人々の人気を一手に引き受けていたわけであるが、
ノースビレッジの河井さんは、またそれとは別の視点でこの森を眺めてきた。

それはいかに?と問えば、「ここは東北の隠花帝国なんですよ」と河井さんは笑いながら教えてくれた。

つまり、大きな木々の縁の下の力持ちとなって地面や岩を覆い尽くすコケをはじめ、
シダ、地衣類、キノコなどの隠花植物の豊富であることもまた、
この奥入瀬渓流の大きな特徴の一つなわけである。

そういう今までは取るに足らない、それこそ一般では日陰者扱いで、〝コケ〟にされてきた隠花植物たちが、
ここではいかにイキイキと、豊富に、美しく華麗に森を彩り、森を生かし続けてきたことか。

この森を訪れる人には、ぜひそんな隠花植物たちの魅力にも触れながら森歩きをしてほしいという河井さんの強い思いが
周囲の現地ガイドの皆さんにも伝染し、今回のモス・プロジェクトも発足したわけである。


ちなみに現在、この地は「国の特別名勝および天然記念物」に指定され、
さらに十和田八幡平国立公園の「特別保護地区」となっているため、
コケはもちろん、キノコや他の植物の葉1枚もこの地から採取することはできない。


▲枝についたモコモコの地衣類。このまま腕や首につけてジュエリーにしたいくらいアーティスティックです。


さて、奥入瀬渓流に来てみて私がまず驚いたのは、
渓流にぴったりと沿うように国道が走っていて、
非常にたやすく森へ入れるということだ。

来る前にパンフレットやインターネットで
奥入瀬渓流の写真を見た限りでは、
あれだけ自然豊かな場所なのだから
てっきり渓流に行き着くまでに
ある程度は山歩きをするのだとばかり思っていた。

しかし、実際は(これは大げさではなくて)
国道と渓流は目と鼻の先という距離。

車を止めて一歩車外に出ればもうそこは森なのである。


▲これまた画像の右端にご注目。渓流のすぐそばを国道が走っているのがわかる。


事実、紅葉のシーズンには観光バスが何台も渓流沿いの道路脇に並び、
ラフな格好やヒールを履いた観光客でもすぐに森に入って、記念撮影をしていかれるとのこと。

また、森には遊歩道が渡され、勾配もきつくないので、
体力に自信のない人でも、時間のない人でもここならば
安心して自分のペースで森歩きができる。



▲渓流に沿って遊歩道があるので歩きやすい。さらに道は水面とほぼ同じ高さにあるので、水との距離が近いこと!
 水中に泳ぐ魚もしっかり見ることができた。


こんなに人間に都合の良い立地ながら、
ここまでの豊かな自然が残っているとは!

これぞ、まさに東北の奇跡(ミラクル)!! ←(おおげさw)

いままで屋久島や赤目四十八滝、吉野の山や八ヶ岳など
自分なりにコケを求めて方々を歩き回ってきたが、
ここまで万人の足に優しいコケの森は初めてで、
車を降りて早々、私はすっかりたまげてしまったのだった。 (つづく)




☆奥入瀬の巨岩にお住まいのコケたち☆



▲もうここからでも十分コケに覆われていることはわかりますが、近寄ってみるとさまざまなメンツがお住まいになっていました。




▲エビゴケ。赤茶色の胞子体がまるでエビの目のよう!?



▲ネズミノオゴケ。頭隠して尻隠さずな、ネズミたちのしっぽのようなコケ。胞子体もたくさん出ていた。



▲オオトラノオゴケ(おそらく)。いままで東京都内の山々でも見かけたことがあるが、ほとんど乾燥している姿ばかりで、
 ここまで潤ったトラさんは初めて見た。なんとなく色も若い感じがした。



▲トラさんのお次は〝リュウさん〟のミヤマリュウビゴケ。いったいどのあたりが〝竜の尾〟を表しているのか皆目見当がつかないが、
 光を透かすような優しい黄緑色に、赤褐色の茎、水に濡れた姿はなんとも繊細で美しいこと!
 ちなみにこのコケは、イワダレゴケと同じグループ。不規則な羽状に枝分かれするが、イワダレゴケのように階段状には成長しない。


というわけで、偶然なのだろうけど、不思議と動物の名前がつくコケたちで覆われた巨岩なのでした。

奥入瀬コケ紀行(モス・プロジェクトその2)

2012-11-24 15:29:53 | コケをめぐる旅

▲十和田市現代美術館の目の前の街路樹(青森県十和田市)。


関西で育ち、大学生になってからは横浜・東京で過ごし、
就職は埼玉県、結婚したら夫の実家は山形県と、
振り返れば北上し続けているわが人生。

そして今回ついにやってきたのは本州最北端の青森県である。

私のような瀬戸内で育った西日本出身者にとって、
未踏の地・青森についてまず思うのは
「とにかくかなり遠かろう」ということだ。

さらにそこに「晩秋」というキーワードが加わると
「遠い上に、かなり寒い」という発想にいたる。

そこで今回、裏地にボアのついた冬用コート(新調)、毛糸のジャケット、ダウン、
山用のタイツと靴下、レッグウォーマー、ネックウォーマー、手袋、カイロ等々、
持ちうる防寒具を総動員して、東京駅から新幹線に乗ったわけである。

しかし、昨年開通したばかりの路線を走る新幹線「はやぶさ」は新型、
座席もゆったりしていて年季の入った東海道新幹線よりもよっぽど快適、
乗車時間も3時間強と実家の関西に帰るのに必要な時間とさして変わらず、
そしてなにより、11月初旬の七戸十和田駅に降り立つと、
そこは、わりと穏やかな秋の日を迎えていたのであった。


改札を抜けるとノースビレッジの
河井さん、川村さんのお二人がお迎えに来てくれていた。

暖かさに拍子抜けをしている私に、

「今年は秋が遅くて、今日なんかは日中は暖かいですよ」

「紅葉も例年より遅かったから、まだ見れますよ」

とお二人。


(なんだ、そうなのか!)

と内心驚きつつ、秋の暖かな日差しを受け、さっそくコートを脱ぐ。


青森初日であるこの日は東京→十和田市の移動のみだったので、
日中は街の中心にある十和田市現代美術館を見学した。






▲美術館の外観。

この美術館は2008年に開館したということで、まだ新しい雰囲気がある。
白い角砂糖がコロコロと転がったような形の建物は、
金沢21世紀美術館(石川県)にも携わった西沢立衛氏の設計とのこと。

国内外のアーティスト31点の作品が常設展示となっているが
個々の展示ごとに部屋を設けているので、
一つひとつの作品をゆったりと鑑賞できる。

さらに、作品は建物の外にも飛び出して、
美術館目の前の通りの向こうにまで展示されている。
その一角は街すらもアート、といった感じでなかなか面白かった。








また、青森県出身の奈良美智氏の企画展がちょうどやっていて、
初めて生で作品のいくつかを見れたのも嬉しかった。











そして、そんなアート空間の中にも、
屋外となれば当然コケたちが潜伏。

ほら、いたいた。



▲美術館の目の前の街路樹。






コケに地衣類、この色とり合わせ、地図のような不思議な形、
樹幹をキャンバスに、あっちモコモコ、こっちにモコモコと自由自在だ。

彼らこそ、まさに天然自然の
アーティストといったところだろう。


さらに見上げれば紅葉もたいへん美しかった。







▲通りに埋め込まれていた地元の方の俳句。いくつかあったが、これがなんとなく印象的だった。