「老人タイムス」私説

昭和の一ケタ世代も高齢になりました。この世代が現在の世相をどう見て、考えているかーそのひとり言。

          マニラのニュースが「北京 バンコク」発

2012-05-13 05:52:48 | Weblog
11日付けの読売新聞(首都圏版)が国際面トップで”南シナ海対立先鋭化、きょうにも(マニラ)で反中デモ”と大きく伝えていた。しかし翌12日の同新聞はデモは300人規模で、マニラの中国領事館前で行なわれ”中比抗議合戦”だったと2段見出しの小さな扱いになっていた。二つの記事ともクレジットにはバンコクと北京の読売特派員の名前が記されている。察するに記事は両特派員の情報に基づいて東京で書いたものに違いない。読売に限らず日本の新聞には最近、こういったニュースソースが明確ではない報道がある。

半世紀前、僕が外信部(国際部)の記者だった時代には、外信部の主な仕事は外国通信社からテレックスで流れてくるニュースを重要度に応じて取捨選択して翻訳することであった。翻訳した記事には必ず「マニラ発○日=AFP」とクレジットをつけた。この慣習がいつの間にか日本の新聞から消えてしまった。僕はその後転職して外信部から離れてしまったから何時からと特定できないが、1970年代から80年代ではないだろうか。この結果、日本の新聞の国際面のニュースの中には、ソースの不明なニュースが多くなってきた。これは日本の報道機関だけで欧米の新聞はきちんとソースを明記している。

僕の体験から言ってもバンコクで遠く離れたマニラのニュースを細かく記者の目でカバーするのは至難の技だ。新聞社のメンツの問題なのだろう。自社の特派員網の中では、マニラに最も近い支局はバンコクなので、北京の情報とともに「北京バンコク」発というおかしなクレジットにしてしまったのだろう。マニラのデモにはロイター通信の写真が添えられていた。バンコクの自社の特派員が遠く離れたマニラの記事を書くより、マニラ駐在の外国通信社の記者が書いた記事のほうが読者には自然のように思われるが、どうだろうか。