安穏な状態が何十年も続くと、危険なことはもうないものと思うのが常識のようになっていく。
「災害は忘れた頃にやってくる」
これには寺田寅彦の言葉という説と、中谷宇吉郎が書いたという説とがあるという。
名言がことわざにまでなると、出所がはっきりしなくなるらしい。そのくらいになってこそ周知徹底がはかられたと言えそうだが、さて、この名言、予防意識の効果はあまりなく、それ見たことかの言い換えに使われるほうが多そうに思える。
被災された方々や、災害現場で苦闘を強いられている方々にはまことにお気の毒だが、人間は、自分がひどい目に遭わないと、妙な確率論的考察で、困ったことが続いて起きればその後は当分大丈夫と、都合よく安心してしまう。
参照: http://special.nikkeibp.co.jp/ts/article/aa0b/108265/
パソコンに襲いかかるウイルスも、メールに乗ってくるほうには用心しても、ハードメモリーにくっついてくるのには、皆さんあきれるほど大らかなのである。
インフルエンザの空気伝染には気を使ってマスクをし手を消毒しても、持ち物や衣服についたウイルスはあまり気にしないのと似ている。
USBメモリーに自分の作品を記憶させ、皆が集まるところに得意げに持ち込む。
一昨日ホテルのパソコンで最終仕上げをしたイラスト、苦心の作である。
「あなたもよかったら使って」と仲良しさんのパソコンにも読み取らせておいた。
こうして、あちらこちらとUSBメモリーは歩き回る。
行く先々で、ウイルスに感染しないという保証は一切ない。
怖さはうすうす話に聞いて知っていても、私のところにそれはやってこないと、皆思っている。
そしてある日、画面が突然真っ暗になり途方に暮れる。