海鳴りの島から

沖縄・ヤンバルより…目取真俊

県民投票/三択にすれば問題は解決するのか?より混乱するのではないか。

2019-01-22 12:03:56 | 米軍・自衛隊・基地問題

 県民投票をめぐって、3択案が議論になっている。県民投票条例の制定を直接要求した「辺野古」県民投票の会が3択への修正を決めた。そのことについて1月22日付付琉球新報は〈県議会の新里米吉議長が呼び掛けた全会一致の条例改正に向けた与野党調整は、県政与党会派が3択に反対していることで暗礁に乗り上げたが、県民投票の会の決定は与党会派の態度に影響を与える可能性がある〉と報じている。

 これまで2択で運動を進めてきた者たちが、ここにきて3択に方向転換した。「全県実施」のためにということだが、県の条例に反して市民の投票権を奪っている5市の首長の揺さぶりに動揺し、自分たちの運動を支持してきた県民のことを忘れてはいないか。2択だからということで署名した人もいるはずだ。2択の意義を説いてきた者たちが、自己の主張と運動を転換するうえで、一片の声明で責任を果たしているのか。

 新里議長が提案している3択案は「賛成・反対・どちらでもない」というものだ。どちらでもないのなら白票を投じればいいし、棄権することもできる。自らに有利な選択肢にしようとしている自民党や保守系首長が、これで受け入れる保証はない。県議会で再度議論しても、選択肢の内容をめぐって紛糾する可能性がある。

 また、2択で承認し事務作業を進めてきた36の市町村が、3択でやり直しさせられることに、すんなりと了解するのか。2択に意義を見出している首長や議員もいるはずだ。すでに投票用紙を印刷に回すなど事務作業を進めており、やりなおしに反発する市町村も出るだろう。県の条例に違反している5市のために、県の条例に従って正当な手続きを進めてきた市町村が、どうしてやり直しを迫られるのか、と反発や疑問を覚えるのは当然なことだ。

 36市町村の中から、この期に及んで3択にするのは納得できない、3択なら参加しない、という自治体が出てきたらどうするのか。もともと条例に従っていた自治体が、新たな条例に従わないから不当であると、だれが批判できるのか。そうなれば混乱はいよいよ深まり、もはや打開のしようがない。

 そうなることはない、3択なら全県実施でまとまる、という者がいるなら、そういう希望的観測で物事を進めてきたから、今のような混乱が生じているのだ、と指摘しておく。政治はそんな甘いものではない。辺野古新基地建設を強行したい者たちは、次の選挙で玉城知事を落とすために全力を注ぐ。軟弱地盤の問題を打開するには、政府の言いなりになる知事を誕生させねばならないからだ。今回の県民投票は、玉城知事を叩くための格好の材料になりつつある。

 1月12日に玉城知事は県庁で記者会見し、〈県民投票は予定通り実施する。条例の改正については、様々な課題があり難しい〉と述べて、不参加の自治体があっても2月24日に実施することを表明している。

https://ryukyushimpo.jp/news/entry-860389.html

 テレビではすでに2択での県民投票呼びかけのCMが流れている。ここまでことを進めてきて、3択に方向転換するなら、玉城知事は判断ミスを犯したと野党から激しい攻撃を受けるだろう。それこそが5市の首長や自民党、公明党、日本政府が狙っていることだ。すでに次の県知事選挙に向けての動きが始まっているのだ。3択だったら「全県実施」でまとまるという考えは甘すぎる。

 県内紙の記事や論調を見ていると、県民投票の運動を進めている純粋な若者たちと、選挙がらみの政治的思惑で動いている政治家たち、という構図を描く傾向があるように感じる。そんな没論理的で情緒的な構図は百害あって一利なしだ。県民投票を呼び掛けて署名を集めること自体が、立派な政治的行為であり、そこには参加者の様々な政治的意図があったはずだ。若者だから政治性を免れているということはあり得ない。

 これから先、3択案を受け入れない県政与党や、2択で進めたいという市町村、2択で投票したいという県民が、県民投票の「全県実施」を阻む者たち、という構図にはめられるなら、とんでもない話だ。そうなれば県の条例に違反した5市の首長は免罪され、逆に条例通りにことを進めてきた者たちが批判の対象にされる。それこそ理不尽なことだ。

 3択案への条例改正に賛成するか否かが、踏み絵となるような状況を作り出してはならない。それは沖縄県民を分断し、日本政府を高笑いさせるものでしかない。若者たちが頑張っているから、と情緒に流され、県民投票を逆手にとって自民党、公明党、日本政府が何を狙っているか、を見極めないまま、場当たり的に対応していると大きな過ちを犯す。昨年夏、翁長元知事が死去して以降に作られた県内の政治的潮流が一気にひっくり返され、辺野古新基地建設反対運動は大きな打撃を受けるだろう。

 県の条例に従わずに市民の投票権を奪っているのはだれか。その背後には自民党、公明党、日本政府のどのような思惑、動きがあるのか。それを明確にして、県民投票を意図的に混乱させ、失敗させようとしている者たちを浮き彫りにすることが大事だ。仮に全県実施ができなければ、その責任はその者たちにある。そのことをはっきりさせていくべきだ。

 


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